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元町の音色

雨は、思っていたより長く降っていた。

軒先に入ったところでパンプスの先はもう濡れていて
歩くたびに小さな音がついてくる。

元町の通りには、こんな時間でも灯りが残っていて
閉まりきらないシャッターの隙間や
奥の方だけ点いたままの店内の光が
濡れた路面に伸びていた。


見慣れているはずの道が、今は少しだけ遠く見える。

元町商店街の入口にあるフェニックスアーチをくぐると
雨音がほんの少しだけ変わった気がした。
肩に当たる雨粒の感触が揃っていて
歩幅までそれに合わせられてしまう。


少し前まで、隣に人がいたのに。

同じ速度で歩いて
同じところで立ち止まっていたはずなのに
何を話していたのかは思い出せないまま
歩幅だけがまだ残っている。


ショーウィンドウに映る自分を横目で見たとき
そこに並ぶはずのもう一つの影がないことに
改めて気づいてしまう。


どこからか音が流れてくる。

店の中なのか、通り過ぎる車なのかはわからないけど
リズムだけが雨に混ざって届いてきた。
足を止めた拍子に、濡れた路面に揺れる光と自分の影が重なる。

一歩だけ踏み出してみると、何かがうまく合っていない気がして、もう一歩重ねてもそのズレは埋まらなかった。


誰も見ていないのに
少しだけ可笑しくなる。

雨は、まだ降り続いている。

そのまま歩き出すと
さっきまで混ざっていた音だけが遠くなっていった。


終わり



プププランド「ラスト・タンゴ・イン・元町」
のオマージュです
ぜひ聴いてみてください


不倫・浮気、独身偽装
についての真面目なコラム


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