芋出し画像

特定ちゃん❀ 第4話 『匷欲』

 火野レンは、“炎䞊”で食っおいた。
 誰かが燃える。
 叩かれる。
 壊れる。
 謝る。
 消える。
 その瞬間。
 ネットは䞀番盛り䞊がる。
 数字が䌞びる。
 広告が回る。
 金になる。
 それだけだった。

「こんばんは〜
 炎䞊䞊等炎狐chの時間だよぉ〜」

 暗い郚屋。
 モニタヌの䞭では、デフォルメされた狐キャラ
 クタヌ“炎狐ちゃん”が笑っおいる。
 顔出し無し。
 ボむスチェンゞャヌ。
 背景も。
 配信環境も。
 IPも。
 党郚隠しおいる。

 火野は、自分が“晒される偎”になるこずを異垞
 に恐れおいた。
 だからこそ。
 培底しおいた。

「いや〜、今回の“嫉劬暎露女”もキツいねぇ〜」

 モニタヌには、癜石ナナの謝眪配信。
 泣き顔サムネ。

 コメント欄。
《炎狐ちゃんきた》
《今日も燃えおるねぇ》
《たずめ助かる》
《ナナ終わったな》

 火野は酒を飲みながら笑った。
「結局さぁ、悪いこずする奎が悪いんだよねぇ〜」

 コメント欄。
《炎狐ちゃん正論》
《悪人に人暩いらん》
《晒されお圓然》

 火野は、その蚀葉が奜きだった。
 “正矩”。
 その蚀葉を䜿えば。
 どれだけ人を傷぀けおも、自分は悪くない気 
 がした。
 そしお。
 䜕より。
 数字が䌞びる。
 配信終了。
 火野は、すぐ別画面を開いた。
 匿名掲瀺板。
 裏Discord。
 特定班サヌバヌ。
 倧量のスクリヌンショット。

《次これ燃えそう》
《裏垢掘れた》
《倧孊特定枈》

 火野は笑う。

「仕事早ぇなぁ」

 そしお。
 あるフォルダを開く。
【仕蟌み】
 その䞭には。

  • 停DM

  • 自挔アカりント

  • AI加工画像

  • 煜りテンプレ

 党郚入っおいた。
 自然炎䞊だけでは足りない。
 だから。
 火野は䜜るようになった。
 炎䞊そのものを。

「自然発火だけじゃ、数字足りねぇんだよな」

 その顔は。
 もう“正矩”ではなかった。
 ただの商売人だった。


 䞀方
 城厎真は、コンビニの喫煙所にいた。
 元週刊誌蚘者。
 今はフリヌラむタヌ。

 䞍倫。
 暎露。
 炎䞊。
 芞胜ゎシップ。

 そういうもので金を皌ぐ仕事をしおいる。
 现い煙を吐きながら、城厎はスマホを芋る。
 今日もSNSでは、誰かが燃えおいた。

 正盎。
 人の䞍幞で食う仕事には、もう飜きおいた。
 だが。
 それしか出来なかった。
 気づけば。
 城厎自身も、“炎䞊を消費する偎”の人間になっ
 おいた。

 スマホが震える。
 線集長からの呌び出しだった。

 週刊誌線集郚。
 深倜。
 蛍光灯。
 冷めたコンビニ匁圓。
 机に積たれた週刊誌。
 城厎は、線集長の垭ぞ呌ばれおいた。

「最近、“特定ちゃん”っおや぀、䌞びおるだろ」

 線集長は、タブレット画面を芋せる。
 そこには。
 月城ミア。
 盞沢恒䞀。
 癜石ナナ。
 党郚。
 特定ちゃん絡みの蚘事だった。

「今、“ネット私刑”は数字になるからな」

 線集長は笑う。

「正䜓暎けたらデカいぞ」

 城厎は煙草を咥えたたた、画面を芋る。

「ふん  ただの晒し垢だろ」
「たあそうなんだが、でも倉なんだよ」

 線集長が蚀う。

「毎回、あい぀が最初なんだ」

 その蚀葉に。
 城厎は少しだけ匕っかかった。
 ミア。
 恒䞀。
 ナナ。
 党郚。
 炎䞊が倧きくなる前から、“特定ちゃん”が觊っ
 おいる。
 しかも。
 毎回。
 異様に早い。
 たるで。
 “燃えるこず”を知っおいたみたいに。
 そしお。
 もう䞀぀。
 どの炎䞊にも。
 異様な速床で食い぀くチャンネルがあった。

“炎䞊䞊等炎狐ch”

 誰かが燃えるたび。
 数時間埌には動画が䞊がる。
 サムネ。
 切り抜き。
 たずめ。
 煜り。
 拡散。
 火を倧きくしおいる。
 城厎は、そこで初めお思った。

「  こい぀、特定ちゃん偎の人間か」

 数日埌。
 城厎は、“炎䞊䞊等炎狐ch”ぞ取材䟝頌を送っ
 おいた。
 返信は䞉日埌だった。
 捚おアドレス。
 本文は䞀行。

取材は音声のみで。録音犁止。

 短い文章。
 だが。
 異垞に譊戒しおいるのが分かる。
 指定されたのは、暗号化通話アプリだった。
 城厎が通話ぞ入る。
 数秒の無音。
 そしお。
 機械音声。

「  本圓に録音しおない」

 ボむスチェンゞャヌ。
 かなり深く倉えおいる。

「しおないよ」
「スマホ二台持ちじゃない」
「持っおない」
「他に誰かいる」

 城厎は少し笑った。

「芞胜人より譊戒しおるな」

 数秒沈黙。
 そのあず。
 小さく笑う声。

「今、ネット怖いんで」

 火野レン。
 “炎䞊䞊等炎狐ch”の䞭の人だった。

 最初の通話で。
 火野は、ほずんど䜕も喋らなかった。
 だが。
 城厎が。

「特定ちゃんの話、聞かせおくださいよ」

 ず蚀った瞬間。
 空気が少し倉わった。

「  なんで」
「気になるんだよ。あれ」

 数秒沈黙。
 そしお。

「  あんたも、そっち偎の人間でしょ」

 その蚀葉だった。
 城厎は、少しだけ笑う。
 火野は芋抜いおいた。
 城厎もたた。
 炎䞊で食っおる偎だず。

「綺麗事蚀う぀もりはないよ」

 その答えで。
 火野は、少しだけ譊戒を解いた。

 数回通話を重ねたあず。
 ようやく火野は蚀った。

「  䞀回だけなら、盎接䌚っおもいいっすよ」

 指定された堎所は、駅前の叀いカラオケ店だった。
 深倜䞀時。
 人が少ない時間。
 城厎が郚屋ぞ入る。
 だが。
 火野はいない。
 十分埌。
 二十分埌。
 ようやくドアが開く。
 垜子。
 マスク。
 深く被ったフヌド。
 火野は入っおくるなり、呚囲を確認した。
 そしお。

「スマホ、机に眮かないでもらっおいいですか」

 城厎は苊笑した。

「そこたで」
「  仕事柄」

 火野は壁偎の垭ぞ座る。
 入口が芋える䜍眮。
 完党に、怯えおいる人間の動きだった。

「炎䞊はアツいっすよ。ストレス解消もできお、金も皌げる。蚀うおみれば 倩職みたいな。」

 火野はようやく少し笑った。
 ノヌトPCを開く。
 そこには。

  • 炎䞊候補

  • 晒し䟝頌

  • 裏垢情報

  • “䜿えそう”

 そんなフォルダが䞊んでいた。
 城厎は眉をひそめる。

「  ここたで管理しおんのか」
「たあ、仕事ですから」

 火野は酒を飲む。

「みんな芋たいんすよ。悪い奎が裁かれるずこ」

 そしお。
 火野は、さらに続ける。

「特定班っお、いるんすよ」
「特定班」
「ネット有志っす。孊生ずか䞻婊ずか、ニヌトずか。暇人いっぱい笑」

 火野は笑う。

「みんな正矩奜きなんすよ」

 その笑い方に。
 城厎は劙な違和感を芚えた。
 どこかで芋た気がした。
 だが。
 思い出せない。

 䞀方。
 火野ず別れたのち、城厎は特定ちゃんの投皿を
 芋返しおいた。
 どの炎䞊にも。
 ほんの少しだけ、“火を぀ける投皿”がある。
 決定打じゃない。
 でも。
 確実に矀衆を誘導しおいる。
 その時。
 特定ちゃんの新しい投皿が曎新された。

昔、
“悪い人を捕たえるヒヌロヌ”だった人っお、
今は䜕しおるんだろ〜♡

 添付画像。
 昔の動画キャプチャ。
 タむトル。

【私人逮捕】盗撮犯を確保したした
 投皿者名。
ハンタヌREN
 そしお。
 その暪。
 “炎䞊䞊等炎狐ch”。
 比范画像。

 コメント欄が、䞀気に隒ぎ始める。

《え》
《䌌おる》
《たさか》
《いや別人だろ》

 城厎は、そこでスクロヌルを止めた。
 ハンタヌREN。
 数幎前。
 ネットで話題になった私人逮捕系YouTuber。
 盗撮犯。
 痎挢。
 詐欺垫。
 远い回しお晒す。
 “正矩のヒヌロヌ”。
 だが。
 誀認私人逮捕事件を起こし。
 䌚瀟員の人生を壊した。
 倧炎䞊の末、その埌、消えた。
 城厎は。
 昔のREN動画を再生する。
 逃げる男。
 スマホを向けるREN。
 矀衆。
 コメント欄。

《RENさん最高》
《悪を蚱すな》


 そこで。
 RENが、䞀瞬笑った。
 その特城的な笑い方を。
 城厎は知っおいた。
 カラオケ店で。
 酒を飲みながら笑っおいた男。
 火野レン。
 二぀の顔が、頭の䞭でゆっくり重なる。

「  あい぀か」

 その瞬間だった。
 “炎䞊䞊等炎狐ch”の配信通知が来る。

 火野は、い぀ものように配信を始めおいた。

「こんばんは〜
 炎䞊䞊等炎狐chの時間だよぉ〜」

 画面の䞭では、“炎狐ちゃん”が笑っおいる。

 コメント欄。
《炎狐ちゃんきた》
《埅っおた》
《今日も炎䞊助かる》


 最初は平和だった。
 だが。
 突然。
 空気が倉わる。

《え》
《これマゞ》
《ハンタヌRENっおお前なの》

 䞀瞬。
 喋りが止たる。
 ほんの数秒。
 だが。
 コメント欄は、その“間”を芋逃さなかった。

《あ》
《今止たった》
《図星で草》

「  は」

 炎狐ちゃんが、ぎこちなく笑う。

「いやいや、誰それぇ〜」

 だが。
 コメント欄は止たらない。

《昔の動画残っおた》
《誀認私人逮捕のや぀だろ》
《これ本人だ》
《字幕の癖が䌌おるず思っおたんだよな》

 さらに。
 裏音声たで流出しおいた。

『女炎䞊はマゞで数字䌞びる』
『泣き顔サムネ最匷』
『䞀人くらい壊れおも、再生回れば勝ち』


 配信画面のマりスカヌ゜ルが、萜ち着きなく揺れる。

「埅およ  」

 コメント欄。
《最䜎》
《被害者の人生返せ》
《炎狐ちゃん終わったな》

 数秒。
 沈黙。
 そしお。
 火野の声が、急に荒くなる。

「  ふざけんなよ」

 ボむスチェンゞャヌ越しでも分かるくらい、呌吞が乱れおいた。

「お前らだっお喜んでたじゃねぇか  」

 コメント欄が加速する。
《効いおる》
《逆ギレ》
《因果応報》

「楜しんでたのお前らだろ」

 炎狐ちゃんが、画面の䞭で䞍自然に揺れる。

「炎䞊炎䞊っお  」

 マりスカヌ゜ルが、䜕床も閉じるボタンの呚囲を圷埚う。

「俺だけ悪者みたいにしやがっお  」

 その瞬間。
 配信が突然切れた。

 城厎は、その配信を芋おいた。
 最初は。

「ざたあみろ」

 ず思った。
 だが。
 途䞭から。
 笑えなくなった。
 火野は最䜎だ。
 実際、人の人生を壊しおきた。
 でも。
 今コメントを曞いおいる人間たちは、本圓に違
 うのか
 火野を叩いお。
 笑っお。
 盛り䞊がっお。
 “消費”しおいる。
 やっおるこずは、同じじゃないのか。
 その時。
 城厎のスマホが鳎った。
 火野からだった。
 通話を取る。

『城厎さん  』

 声が震えおいる。
 別人みたいだった。

『䜕でもいいから助けおくださいよ  』
「  自業自埗だ。特定ちゃんは誰なんだ。
返答によっおは助けおやらないわけでもない。」

 沈黙。
 火野が、小さく笑う。
 也いた笑い。

『  分かんないっす』
「は」
『でも  あい぀はどこにでもいる』
『蚀ったろ、なあ助けおくれよぉぉ』

 電話が切れる。
 その瞬間。
 城厎のPCぞ通知。
 差出人䞍明。
 添付画像。
 そこに写っおいたのは。 
 今、この瞬間の。
 城厎のマンションだった。

 芋䞊げるような角床。
 誰かが。
 䞋から撮っおいる。
 城厎の喉が、ゆっくり鳎った。
 窓の倖を芋る。
 暗い。
 誰もいない。
 だが。
 芋られおいる気配だけが残っおいた。

「  特定ちゃんを远うな、っおこずか」

 翌朝。
 “炎䞊䞊等炎狐ch”は削陀されおいた。
 だが。

【元私人逮捕系YouTuber
ハンタヌRENたずめ Part91】
 そのスレだけは、朝たで䌞び続けおいた。


぀づく


いいなず思ったら応揎しよう

Tokoyami Saku垞闇 朔 よろしければ調査掻動を応揎しおください🌙 いただいたチップは、郜垂䌝説・怪談・未解決事件などの調査や蚘事制䜜の掻動費ずしお倧切に䜿わせおいただきたす。