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アニマル④

綾とアマンダとハーリーとマードックは家の中で飲みながら話す。
アマンダと綾はアイスコーヒーを飲み、ハーリーとマードックはビールを飲みながら話した。
アマンダから詳細な目撃情報を聞くと、ハーリーは腕組みしながら無言になる。
俯いたまま目を閉じるハーリーを見て、マードックが言った。
「オレはアマンダを信じるぜ」
「ありがとう」
ハーリーが目を開けた。
「面白い冒険ファンタジーになりそうだ。アマンダが手掛ける映画なら、ノーギャラで出てもいいぜ」
「嬉しい。ありがとう」アマンダが言うと、綾も「ありがとうございます」と笑顔でお礼を言った。
綾とアマンダが承諾を得て安堵していると、マードックが笑顔で言う。
「それにしてもアヤ。とびきりに可愛いな」
「そんなこと・・・」
赤面する綾を見て、アマンダがからかう。
「どこへ行ってもモテるね綾は」
「何言ってるんですか」
「いくつだ?」マードックが怪しい笑顔で迫る。
「25歳です」
「恋人はいるのか?」
その質問は完全にセクハラだが、そういう指摘は通用しそうもない。
「いません」
「ほう」マードックの目が危ない。「何歳まで年上が許容範囲だ?」
「あ、あの、マードックさんは独身なんですか?」
「オレのことじゃねえ。一般論として聞いただけだ」
なるほど、交わし方がうまいと綾は感心した。
(確かマードックは39歳)
「35歳くらいまで、ですかね」
「たった10歳差か? 日本では歳の差婚が流行ってるだろ?」
「流行ってません」即答。

ハーリーの家を出て車に乗ると、アマンダが言った。
「一気に4人にOKをもらった。順調、順調」
「えーと、アニマルさん、ホークさん、ハーリーさん、マードックさん」
「さすが女優。名前を覚えるのは得意ね」
「それほどでも」
アマンダは車を走らせる。
「次はスタンよ」
「スタン」
「中学の先生」
中学教師と聞いて綾は笑顔になる。
「先生ですか。何を教えているんですか?」
「地理よ」
「ティーチャーなら常識豊かなジェントルマンですね?」
「スタンは明るく陽気なテキサン。194センチ、140キロ」
「140キロ?」綾は驚く。
「年齢は36歳。7人の中ではおそらく一番短気だけどね」
綾は笑顔を消した。
「短気は損気ですよ。ダメじゃないですか、ティーチャーが短気じゃ」
「スタンはキレるとブレーキを失ったダンプカーのように暴走する。でも女の子には優しいから大丈夫」
全然大丈夫ではない。綾は身構えた。

スタンの家に到着。
アマンダと綾は車を下りると、家の前まで行った。
綾は深呼吸する。
「緊張してる?」
「少し」
チャイムを鳴らした。
ドアが開き、金髪の巨漢が出て来た。
「アマンダじゃないか。どうした?」
「実はスタンに頼みたいことがあって」
「頼みたいこと?」
スタンは綾を見た。
「彼女は?」
「日本の女優の綾よ」
「綾です、初めまして」
綾は笑顔だが恐る恐る右手を出した。粗相があってはいけない。
「スタンだ。よろしく」
「よろしくお願いします」
礼儀正しく接していれば大丈夫なはずだと、綾は自分に言い聞かせた。
生意気で馴れ馴れしい態度を取る人間に怒るならわかるが、礼儀正しくしている人間にキレたら、もはやおかしい。

綾とアマンダは家に上がると、オランウータンの話をした。
「驚いたな。テキサスにオランウータンがいるわけがない。動物園から逃げ出したらニュースになっているはずだ」
スタンは真剣に考える。
「誰かの悪戯か、新手の犯罪か、あるいは、本当にオランウータンか」
「それを調査するために現地へ行きたいんだけど、女子だけだと危ないから、スタンに護衛を頼みたい」
「護衛か」
「もちろん護衛だけじゃなく、キャストも」
スタンは明るい笑顔で話す。
「もしもカメラを回している時にオランウータンが現れたら、アマンダは一躍映画界で有名人になるな」
「綾もね」
「あたしが?」
「みんなで金を掘り起こすか。ゴールドラッシュだ。金がなければ何もできない世の中だからな」
スタンが気さくな性格なので綾は安心した。
「みんなで山分けだ。金庫破りのノリで行こうぜ」
「アハハハ」
アマンダは笑ったが、綾は焦った。
(金庫破り?)
「ところで、オレ以外に誰を誘った?」
「アニマルとホークとハーリーとマードック」
「なるほど。ほかには?」
「これからブルーザーも誘う」
「ブルーザーか」スタンが嬉しそうな顔をする。「ブルーザーがいれば、一人でオランウータンを倒せるな、ハハハ」
アマンダは釘を刺す。
「まだオランウータンと闘うと決まったわけじゃないから」
「映画的に、オランウータン対人間のバトルは、エキサイティングなアクションシーンになるぜ」
「そうだけど、悪いアニマルとは限らないから」
スタンは上機嫌だ。
「じゃあ、全部で6人か」
「あとダスティも誘う」
アマンダがダスティの名前を出すと、スタンの顔色が曇った。
「ダスティだと? 呼ばなくていい」
「ダスティはぜひ呼びたい。映画出演の経験もあるし」
「ダスティが来るならオレは下りる」
「そんなこと言わないでよ」
アマンダは困った。
「ダスティ?」綾が聞く。
「プロのダンサーよ。映画やドラマにも出たことがあるし、ショーで司会もこなすエンターティナーだから」
「何がエンタだ。あんなふざけた性格のヤツを呼んだら団体行動なんか取れないぞ」
フレンドリーだったスタンがいきなり怒るから、綾は緊張した。
ダスティとスタンは犬猿の仲なのか。
アマンダが泣き顔で頼み込む。
「スタンがいないとブルーザーも呼べないじゃない。大人げないこと言わないで」
「その通りだ」スタンが怖い顔で言う。「ブルーザーがキレてヤツを止められるのはオレだけだぞ」
なぜキレる前提で話が進むのか、綾には理解できなかった。
(命が無事なうちに、あたしも下りたい)

つづく







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