【書評】『日本政治史入門』大正デモクラシーまで
門松秀樹・久保田哲・後藤新・福沢真一・半田英俊・丹羽文生・吉田龍太郎『日本政治史入門』(一藝社、2022年)
この本は、近代から現代にいたるまでの日本政治史を、政府や政党の動向を中心に実証的に解説した入門書です。今回の書評では、内閣制度・憲法・議会がつくられ、近代日本が立憲君主国として歩み始めた時期を記述する第4章から、普通選挙法が成立し、政党内閣が「憲政の常道」として慣行となる「大正デモクラシー」の時代を記述する9章に注目していきたいと思います。(1章から3章は省略してしまいましたが、とても面白く重要な章なので、興味があればぜひ読んでみてください。)
まず第4章では、明治政府が伊藤博文を中心に、内閣制度の設立、大日本帝国憲法の制定、帝国議会の開設といった改革を断行し、立憲君主制を目指す過程が記述されています。この章では伊藤への言及量が山県有朋や松方正義ら他の人物を圧倒していて、立憲政体樹立のための政治改革に伊藤が果たした役割の重要性がよく分かります。また、大日本帝国憲法が議会に実質的な立法権や予算審議権を認めていた点を強調し、大日本帝国憲法を中心とする国家体制は「外見的立憲制」に過ぎないという評価に否定的であることも注目されます。
続く第5章と第6章では、藩閥政府と政党が当初は激しく対立しながらも、日清戦争や日露戦争などの影響もあり、時には提携する必要性にも迫られ、その関係性を徐々に変えていく過程が記述されています。
第7章は、それ以外の章とは異なり、条約交渉史に焦点が絞られています。日本政治史を理解する際、日本国内だけで完結させずに、英国・米国・ロシア・清国などの外国の動向やそれらの国と日本との関係性にも注目する必要があることに気付かされます。
第8章と第9章では、国際的には国際協調の機運が高まり、国内では普通選挙法の成立や「憲政の常道」が開始された大正時代の政治史について記述されています。普通選挙法や「憲政の常道」は基本的には肯定的に評価されていますが、鉄道整備を例に利益誘導などの問題点も指摘されている点が印象的です。
第4章から第9章を読んで印象深かったのは、「政治史」の入門書であるだけあって、高校の日本史教科書と比較して経済史、文化史、社会史などの記述が最小限に留められていたことです。その代わりに政治史についてはかなり詳しく説明されており、伊藤と山県の微妙な関係性や自由党と立憲改進党の政策の違い、山県と原が個人的な感情は別として提携関係を築いていたことなど、高校時代には曖昧だった政治家や政党の立ち位置を詳しく理解することができました。
この本は、実証主義の立場から中立的・客観的に書かれているため、物語のような分かりやすさはありませんが、(イデオロギーや視点等の)偏りが少なく、この時代を詳しく知りたい人におすすめな本です。読むには集中力と時間が要るため、歴史小説や、よく本屋で見かけるような著者のイデオロギー全開の歴史本や、「教養としての歴史」系の本よりも即効的な面白さはないかもしれませんが、読み終わった頃には歴史の複雑さと奥深さに触れることで、知的好奇心を刺激される本です。
※10章から15章の書評も書く予定です。
