iPhone動画をPremiere Proで書き出したら白飛びした話-ChatGPTと原因を切り分けて解決するまで
Instagramに投稿したリール動画を、YouTube Shortsにも移植する作業を進めています。
Instagramへ投稿していた動画は、大きく分けて次の2種類です。
iPhoneで撮影した動画に、Instagramアプリ上でテロップとBGMを追加したもの
Meta社の動画編集アプリ「Edits」を使い、静止画をスライドショー形式にして、テロップとBGMを追加したもの
YouTubeへ投稿する際には、Instagramで選んだ既存曲をそのまま使うのではなく、自分のオリジナル曲をBGMとして使用することにしました。
そのため、1の撮影動画を編集したものについては、Adobe Premiere Proでテロップを入れ直し、音楽も差し替えて、ほぼ一から作り直しています。
ところが、Premiere Proから動画を書き出したところ、困った問題が発生しました。
書き出した動画が、異様に明るい
Premiere Proの編集画面では、元の映像はそれほど不自然には見えません。
しかし、H.264形式で書き出した動画を確認すると、全体がかなり明るくなり、白い部分やもともと光が当たっている「明るい」部分が、真っ白に抜けてしまう、いわゆる「白飛び」をおこしていました。
しかも、書き出した動画を確認した環境は、
QuickTime Player
Finderのプレビュー
YouTubeへアップロードした後の再生画面
のすべてで同じでした。
QuickTimeだけで明るく見える、いわゆるMac特有のガンマシフト問題も疑いましたが、YouTube上でも同じように白飛びしているため、単なる再生環境側の表示差ではなさそうです。
さらに、Premiere Proで編集中にも少し奇妙なことが起きていました。
テロップに指定した「#FFFFFF」の白が、画面上ではわずかにグレーがかって見えるのです。
元の動画をiPhoneや別の環境で再生すると、白飛びは発生していません。
つまり、問題は撮影時の映像そのものではなく、Premiere Proでの読み込み、編集、または書き出しのどこかにあると考えられました。
使用環境
今回の環境は次のとおりです。
MacBook Air M4
macOS Sequoia 15.7.7
Adobe Premiere Pro 26.3.0(ビルド93)
iPhone 14 Plusで撮影
書き出し形式はH.264
iPhoneの設定 > カメラ > ビデオ撮影 >「HDRビデオ」はオン
最後の「HDRビデオがオン」という点が、今回の原因を探る重要な手がかりになりました。
ChatGPTに状況を伝えてみた
そこでChatGPTに、Premiere Proのバージョン、macOSのバージョン、撮影時のHDR設定、書き出し形式、白飛びが発生する再生環境をまとめて伝えました。
ChatGPTから提示された見立ては、次のようなものでした。
iPhoneで撮影されたHDR映像を、Premiere ProからSDRのH.264動画として書き出す際に、色空間の解釈やHDRからSDRへの変換がうまくいっていない可能性が高い。
HDRは、SDRよりも広い明るさの範囲を記録できます。
ところが、HDR素材をSDR動画として書き出す際には、HDRの広い明るさをSDRの範囲に収める「トーンマッピング」が必要になります。
この処理や素材の色空間の認識が合っていないと、ハイライト部分がSDRの上限に張りつき、白飛びとして現れることがあります。
解決した設定
ChatGPTから提案された設定のうち、実際に効果があったのは、Premiere Pro上で素材の色空間をRec.709として解釈させる方法でした。
操作手順は次のとおりです。
Premiere Proのプロジェクトパネルで、書き出し時に白飛びする動画クリップを選択する
クリップを右クリック(まはは2本指タップ/Ctrl + クリック)する
「変更」> 「カラー」を選択する
「クリップを変更」というウィンドウの「カラー」タブが開く
「カラー設定」のなかに「メディアカラースペースを使用:Rec. 2100HLG」と「カラースペースを上書き」という項目があるので、「カラースペースを上書き」ラジオボタンを選ぶ
「カラースペースを上書き」の右、ドロップダウンメニューから「Rec. 709」選択
この変更を行ったうえで、同じH.264設定でもう一度書き出してみました。
白飛びが明確に改善した
再書き出しした動画を確認すると、白飛びは明らかに改善されていました。
明るい場所の階調が戻り、元の映像に近い見え方になりました。
さらに興味深かったのは、書き出した動画だけでなく、Premiere Proの編集画面にも変化があったことです。
それまで少しグレーがかって見えていた「#FFFFFF」の白が、正常な白として表示されるようになりました。
つまり今回の問題は、書き出し設定の問題ではありませんでした。
Premiere ProがHDR素材を扱う際の色空間と、編集中のシーケンスやテロップなどのSDR要素との間で、明るさの基準が揃っていなかったと考えられます。
HDRの世界では、SDRの白よりもさらに明るい領域を扱えます。
そのため、HDRを基準にした表示の中では、SDRの白である#FFFFFFが、相対的に少し暗い白、つまりグレーに近いものとして見えていたのでしょう。
素材をRec.709として扱うように変更したことで、映像、テロップ、書き出しの明るさの基準が揃ったわけです。
「書き出し設定だけ」で直せなかった理由
最初は、書き出し画面の設定を変更すれば解決するのではないかと思っていました。
しかし今回のケースでは、Premiere Proが素材をどの色空間として認識しているかという、読み込み段階の設定が問題でした。
素材がHDRとして解釈されたままでは、最後にH.264/Rec.709で書き出そうとしても、途中の色変換で意図しない結果になることがあります。
そのため、書き出し設定だけでなく、元クリップの「入力色空間」「シーケンスの作業色空間」そして「出力時の色空間」を一致させることが重要だったのです。
今回の場合は、元クリップの色空間をRec.709として上書きすることで、目的のSDR動画として安定して扱えるようになりました。
今後はiPhoneのHDR撮影をオフにする
今回の件を受けて、今後YouTube ShortsやInstagram リール動画向けに撮影する動画は、iPhoneのHDRビデオをオフにすることにしました。
iPhoneでは、次の場所から設定できます。
`設定 > カメラ > ビデオ撮影 > HDRビデオ`
これをオフにして、最初からSDRで撮影します。
HDRには、明暗差の大きな場面を豊かに記録できるという利点があります。
一方で、現状では Instagram、YouTube、動画編集ソフト、Macやスマートフォンの表示環境をまたいで使用すると、色や明るさの管理が複雑になります。
今回の私のフローである
iPhoneで Instagram用に編集
YouTube Shortsへ移植
Premiere Proでテロップを追加
自作曲へBGMを差し替え
H.264で書き出して複数のサービスへ投稿
という運用では、HDRの利点よりも、色の不一致や白飛びの危険のほうが大きいと判断しました。
これからは、次のような流れに統一する予定です。
iPhone撮影:HDRオフ
Premiere Pro:Rec.709
書き出し:H.264/Rec.709
投稿先:YouTube Shorts、Instagram Reelsなど
すでに撮影済みのHDR素材はどうするか
過去にiPhoneでHDR撮影した素材をPremiere Proで使う場合は、今回の方法が役立ちます。
改めて、操作手順をまとめます。
`クリップを右クリック`
↓
`変更`
↓
`カラー`
↓
`カラースペースを上書き`
↓
`Rec.709`
ただし、この方法はすべてのHDR映像で必ず最適な結果になるとは限りません。
本格的にHDRの明暗を生かしたままSDRへ変換したい場合には、Premiere Proのトーンマッピング機能やLumetriカラーによる調整が必要になる場合もあります。
今回の目的は、HDR作品を制作することではなく、SNSへ安定して投稿できるSDRのショート動画を作ることでした。
その用途では、Rec.709として素材を扱う方法が、最もシンプルで効果的でした。
ChatGPTが役立ったのは、答えよりも「切り分け」だった
今回、ChatGPTに相談して助かったのは、単に「この設定を変えれば直る」と教えてもらったことだけではありません。
元の動画は正常
Premiere Proの編集画面では白がグレーに見える
H.264で書き出すと白飛びする
QuickTimeだけでなくYouTubeでも白飛びする
iPhoneのHDR撮影がオン
素材の色空間をRec.709に変更すると改善する
という情報を順番に整理し、表示アプリの問題なのか、書き出し設定の問題なのか、HDRからSDRへの変換の問題なのかを切り分けられたことが大きかったと思います。
映像制作ソフトのトラブルでは、同じ「明るすぎる」という症状でも、原因は一つとは限りません。
QuickTimeのガンマ表示、ディスプレイのカラー設定、HDR素材、シーケンス設定、書き出し設定など、複数の要因が考えられます。
今回のように、使用環境と症状を具体的に伝えることで、ChatGPTは技術的なトラブルシューティングの相手として、かなり実用的に機能しました。
まとめ
iPhoneで撮影した動画をPremiere Proから書き出した際、映像が明るくなり、白飛びしてしまう場合は、HDR素材とSDR出力の色空間が一致していない可能性があります。
今回の環境では、
`Override Media Color Space → Rec.709`
を設定することで、白飛びと編集画面上の白の表示が改善しました。
また、今後SNS用のショート動画を中心に制作するのであれば、iPhoneのHDR撮影をオフにして、最初からRec.709/SDRで統一するのが、最もトラブルの少ない方法だと思います。
同じように、
iPhone動画をPremiere Proで編集したら明るくなった
書き出した映像だけ白飛びする
文字色 `#FFFFFF` のテロップがグレーに見える
YouTubeへアップしても色がおかしい
という症状に悩んでいる方の参考になれば幸いです。
