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セックスワーク・現代性産業と歴史学者の距離

「朝日新聞」がたびたび上野千鶴子氏を起用し、上野氏の専門性やしっかりしたエヴィデンスに基づくとはいいがたい、反セックスワークの主張を語らせています。それをみるにつけ、メディアにおける研究者や専門家の役割を考えざるをえません。

今後、買春処罰を推進したり、セックスワークを「搾取であり、撲滅すべきもの」と位置づけようとする議論のなかで、公娼制度や慰安婦など、戦前・戦中の「性売買」を専門とする研究者が、メディアなどに登場することがある気がしています。

その際、「現代の性産業も構造的には戦前の性売買と同じである」「現代の性産業も本質的には人身売買である」といった趣旨の発言がなされるかもしれません。

そうした「専門家の見解」に触れたときには、ぜひ一度立ち止まって、慎重に検討してみてほしいと思います。
「性売買」史研究そのものには、実証的に積み重ねられてきた重要な知見がたくさんあります。ただし、近代公娼制の専門家であることと、現代の性産業についても専門的な知見を持っていることは、当然ながら別の話です。
戦前・戦中と現代では、法制度も、事業形態も、労働環境も、市場の構造も大きく異なります。
私は一応、戦後の性風俗規制史については専門家だと思っていますが、私の知る限りでも、戦後の性産業は戦前のそれとはかなり違ったかたちで展開してきました。

もちろん、歴史から現在を考えることには大きな意味があります。過去の制度や構造との比較から、現在の問題を考えることもできるでしょう。 ただ、その比較が説得力を持つためには、比較する双方について、十分な知識と検証が必要です。
現代についてどのようなデータや実態調査を踏まえているのか、戦前・戦中との類似点だけでなく相違点も検討されているのかに、ぜひ注意を向けてほしいです。

(本記事は 2026年8月12日Xポストを加筆修正したものです。)

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