腎臓は壊したが、生活は壊さず生きている【242】
久しぶりの人に会うと、昔の自分まで戻ってくる
久しぶりに昔の知り合いに会うと、不思議なことが起きる。
話し方が少し変わる。
昔よく使っていた言葉が出てくる。
当時のくだらない話で笑う。
そして帰り道になってから、
「あの頃の自分って、こんな感じだったな」
と思い出す。
懐かしいのは、その人だけじゃない。
その人と一緒にいた頃の自分まで、なぜか戻ってくる。
今なら気にもしないことを気にしていた自分。
何でも大きな問題にしていた自分。
今よりずっと不器用だった自分。
忘れていたはずなのに、話しているうちに次々と思い出す。
面白いのは、昔の自分を思い出しても、必ずしも戻りたいとは思わないことだ。
むしろ、
「よくあんなことで悩んでいたな」
と思うことのほうが多い。
でも、少しだけ愛おしくもなる。
当時は当時で、それなりに必死だったのだと思う。
今の自分から見れば、たいしたことではない悩みも、その頃の自分にとっては大きなことだった。
だから、昔の知り合いに会うというのは、過去の誰かに会うことだけではないのかもしれない。
今の自分が忘れてしまった、自分自身に会うことでもある。
帰宅して、いつもの部屋に戻る。
さっきまで昔の自分がそこにいたような気がするのに、もういない。
今の自分に戻っている。
少し不思議で、少し寂しい。
それでも、昔の自分を思い出せた日は悪くない。
今まで歩いてきた道の途中に、置いてきた自分がいることを思い出せるから。
昔に戻る必要はない。
ただ、ときどき振り返って、
「あの頃の自分も、ちゃんと生きていたな」
と思えれば、それで十分なのだと思う。
