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花を見る桜、葉をいただく桜 〜 伊豆のオオシマザクラと、桜餅を支える知恵 〜

ずっとずっと昔、伊豆を旅した時のことです。

広い畑に、人の背丈よりも低く、きれいに剪定された桜の木が、ずらりと並んでいました。

桜といえば、公園や川沿いにあって、
春になると花を咲かせる木。 

そんなイメージしか持っていなかった私には、その風景がとても不思議に見えました。

「なぜ、こんなところに桜の木が?」

しかも、どの木も大きく育てられておらず、まるで果樹園のように整えられています。

その時に知ったのが、
それが桜餅を包む葉を収穫するための桜、
「オオシマザクラ」だったということでした。
 
塩漬け用の桜葉を購入し、
実際に桜餅を作ってみたことがあります。

葉を開いた瞬間に立ち上がる、
あの独特の香り。

塩気の奥からふわっと広がる、
春を思わせるやさしい香り。

桜餅の葉は、ただ飾りとして添えられているのではなく、 香りを移し、乾燥を防ぎ、保存性を高めるという役割も持っていました。

何気なく見ていた一枚の葉の向こうに、
植物としての桜の違い、
土地の風土、
そして人の知恵があったのです。

私たちはつい、
桜を「花を見るもの」と思いがちです。

けれど日本には、
花を愛でるだけではなく、

葉をいただくために
育てられてきた桜がありました。

今回は、伊豆のオオシマザクラを入口に、 桜餅を支えてきた植物と食文化の背景をたどってみたいと思います。

桜餅に使われる葉の多くは、オオシマザクラという桜の葉です。

オオシマザクラは、主に 伊豆半島 や 伊豆諸島 周辺に自生してきた野生種で、バラ科サクラ属に分類されます。

私たちが春によく目にする ソメイヨシノ と同じ桜の仲間ですが、植物としての特徴はかなり異なります。

ソメイヨシノは、花を美しく見せるために選ばれ、広く植えられてきた桜です。

葉が出る前に花が一斉に咲き、
満開の時期には木全体が淡い桜色に包まれます。

一方、オオシマザクラは、
花と葉がほぼ同時に開きます。

花は白に近く、華やかさよりも、
どこか素朴で野性的な印象があります。

けれど、葉に注目すると、
その違いはさらによくわかります。

オオシマザクラの葉は大きく、
やわらかく、香りがよい。

塩漬けにすることで、
あの桜餅特有の香りが引き出されます。

つまり、オオシマザクラは「花を見る桜」というより、「葉を活かす桜」でもあったのです。

桜は、花を見るもの。
ずっと、そう思っていました。

けれど伊豆で見たのは、少し違う桜でした。

人の背丈ほどに低く整えられ、
丸く剪定され、青々と葉を茂らせる桜。

花を愛でるためではなく、
葉をいただくために育てられてきた桜でした。

花を見る桜。

葉をいただく桜。

日本人は同じ桜に、
二つの豊かさを見ていたのかもしれません。

花の美しさだけではない。

香りや恵みまで受け取る感性。

そんな自然との付き合い方が、桜餅を包む一枚の葉の中に、今も静かに息づいています。

読んでいただきありがとうございます☘️

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