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黑牢汁

交流させて頂いている方々(千世さんやぐこ姫)が既に御覧になっている映画を今頃、観賞。映画や登場人物等について妄想しながら、黑い汁を作ってみた記録。


材料

茄子    2本
舞茸    半パック
油揚げ   1枚
黑擂り胡麻 好きなだけ
昆布    5センチ位
味噌    お玉1杯


戰國時代、荒木村重は急に織田信長に反旗を翻して有岡城に籠る。
村重に翻意を促すべくやって來た黑田官兵衛は捕えられて地下牢に閉じ込められる。
城の外は織田軍に包囲されている密室というべき城内で奇怪な事件が相次いで発生。正に内憂外患。
士気にも關わるとして、村重は幽閉した官兵衛に度々、會いに行き、知恵を貸すように頼む。
知恵者として名高い官兵衛の助言により、村重は城内の事件の解決に挑む。というのが大まかなストーリー。


昆布を一晩、漬けて出汁とり。

ホラーやサイコスリラーに定評がある黒沢清監督、今回が初の時代劇。
時代劇にミステリーの要素をミックスしたのは面白い趣向。
米澤穂信の原作小説は第166回直木賞受賞。
茶人としても名を残した村重を本木雅弘が演じる。
茶の湯の場面もかなり指導を受けて練習したのだろうと思われ、堂に入っている。
もう一人の主役と言うべき黑田官兵衛役を菅田将暉。
ネットの感想などで「半兵衛が官兵衛」と書いてあるのを散見。何のことかと思ったら、大河ドラマで竹中半兵衛を演じていたんですか。私はテレビジョンを所有していないので知りませんでした。
本作のヒロインである村重の妻、千代保を演じたのは吉高由里子。
悲惨な過去を背負っている女性で、そのトラウマから奇妙な行動。それが城内の事件にちょっと關係?
他にもオダギリジョー、青木崇高、柄本佑等の豪華キャスト。


油揚げを短冊切り、茄子を半月切り。


劇中で起こる殺人を初めとする四つの事件はフィクションのようですが、巧みに組み込まれていて、本当にこんなことが籠城中に起こっていたかもと思わされる。
城の地下牢に幽閉されている官兵衛、所謂、安楽椅子探偵と言うべき役回り。
つまり閉じ込められていて現場に行けないので、事件の顛末を記した紙や村重の話から推理。
ただ、全ての推理を話してやる程のお人よしでもない。幽閉されているのだから、そこまで親切なことはしないという一抹の意地?
歌にしたり、ちょっとした仄めかしを述べるだけで、それを聞いた村重が主体的に解決という筋立て。


茄子、油揚げ、千切った舞茸を昆布出汁で煮る。

そもそも荒木村重が謀叛に踏み切った理由自体がミステリー。
それまで信長に忠実に仕えていたのに籠城。
更に言えば、謀叛の結末もミステリー。
ネタバレになるかもしれませんが、荒木村重の謀叛は史実であり、その顛末も調べればわかることですが村重は唯一人、生き残ることになる。
その結果を以て、自分が助かるために一族郎党を見殺しにしたという評価をする人もいる。
村重自身は心情を語り残していないので、眞相は不明としか言いようがない。


汁が黑い。

この映画では人を殺し過ぎる信長への反感が村重謀叛の原因として描かれている。
映画のホームページにも書かれていますが、不殺が村重の行動原理。
そもそも官兵衛を殺さずに幽閉したことも不殺の現れ。
最初の事件も村重のそんな姿勢が招いたこととも言える。
私は原作を讀んでいないのですが、この村重像は原作通りなのか黒沢監督の解釈なのか?
勿論、戰の世ですから誰も殺さずというのは不可能。
必要となれば、村重自ら弓を引いて敵を射るし、信長に命じられて罪人とされた者の首を切る回想場面もある。
前者は戰だから殺さねば自分が殺されるし、後者は信長の機嫌を損ねると自身が危うくなるという事情。
仕方ない犠牲であり、可能な限り人殺しを避けたいということ。


煮立ったら火を止めて味噌を溶く。

我々が楽しんでいる歴史というのはファンタジーでしかない。
古い記録や遺物から誰かが推測したこと。
それをなぞっているか、自分で妄想しているかの違い。
本当の所は当事者にしかわからない。
ましてや人間は多面体なので一面だけを見て決めつけることも出来ない。
記録というのは最終的に勝った者、生き残った者によって都合よく歪曲されるのが当たり前。
荒木村重の謀叛の理由や、その行動原理も推測するしかない。そこからこうした映画も生まれるということか。


黑擦り胡麻投入。

戰國三英傑、信長、秀吉、家康の性格を示しているという川柳。
鳴かぬなら、殺してしまえホトトギス、信長
鳴かぬなら、鳴してみしょうホトトギス、秀吉
鳴かぬなら、鳴くまで待とうホトトギス、家康

こと、戰に關しては当てはまらない。
信長は村重が籠る有岡城を一年も包囲。
正に鳴くまで待とう?
この一年の籠城中が映画で描かれていて、春夏秋冬という季節に應じて四つの事件。
一年どころか、石山本願寺との合戰は十年という氣の長さ。
家康の方が短氣で、まどろっこしい城攻めを好まず、野戰でさっさと雌雄を決することを好んだ。關ヶ原がいい例。


黑牢汁

茄子から出る灰汁(あく)と呼ばれる物はナスニンという抗酸化物質。
料理が黑くならないようにと塩水などで灰汁抜きしますが、敢えてそれをせずに抗酸化物質を取り込んだアンチエイジング汁。
舞茸からも黑い汁、黑擦り胡麻からもゴマグリナンという抗酸化物質。
油揚げからタンパク質も頂ける。
時間が経つと、汁はどんどんと黑く染まっていく。
正に疑惑が時間と共に廣がる有岡城のよう?

参考までに。以前、荒木村重について書いています。↓

上映時間が140分から150分位ある長い映画ですが、退屈することなくスクリーンに目が釘付け。
画面が重く暗い風があり、黒沢清監督作品ですが、何となく黒澤明監督っぽさも感じてしまう。
歴史とミステリーの融合という新たなエンタメの可能性を見せてくれた『黒牢城』について妄想しながら黑牢汁をご馳走様でした。


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