バンドマンのための遠回り理論
まずはじめに、バンドマンがマーケティング理論を叩きつけられヘコむ必要は一切ありません。
バンドは「売れないと辞めなきゃいけない」と法で定められている団体ではないので、さまざまなバランスをとって、それぞれの価値観で存在していいのです。緻密に成長戦略を立てたり、マーケティングで周りと差をつけたり、それはやりたい人がやればよくて、やらない人が必ずしも劣っている、もちろんバカなわけでもありません。
社会にはバンドマンという曖昧な存在も必要
考えてもみてください。娘の結婚したい相手が「音楽だけで飯を食えていないバンドマン」だったとき、世間のお父さん達は「なんだかわからんが…けしからん可能性大!」となるかもしれません。おそらく僕はなります。それほど「バンドマン」に対する"けしからん可能性大"のイメージは、世間の中で何年もかけて醸成されてきたのです。
しかし、無条件にちょっと悪く思えてしまうような、そんな存在として「バンドマン」のイメージが社会に根付いているのであれば、それはそれで貴重な存在だとも言えます。「バンドマン」はそんな社会の辺境から、心にある矛盾や喜びを叫ぶことのできる特異な存在であって、実利ばかり優先するイメージはあまり相応しくないとも感じてしまいます。ただ、そのような活動をしてる人達のことも否定しません。自由だからです。
僕の思うカッコいいバンドは、社会からこぼれ落ちた、1人ではどうしようもできない感情をゆらしてくれる、特別なものです。ただ、吹けば飛ぶような曖昧な存在でもあります。そこが愛おしいのではないでしょうか。僕はそう思います。
あと普通にそんないっぺんにいろいろがんばれないから、正論ばかり言うの勘弁してほしい。
どんな会社でもマルチタスクをこなせる人は重宝されるかと思います。そして、さまざまな角度から物事を捉えることができ、自分や組織に足りない部分を的確に修正できるような能力をもって、正しくPDCAをサイクルさせることが、この社会を生き抜くためには必要な力なのでしょう。先日"バンドマンのためにマーケティングを説いた記事"を拝見して、僕も身につまされる思いでした。
ただそれ、無理です。無理なのです。むしろ「いつからそんなにがんばらないといけない世界になったんですか?」と問いたい。バンドの「がんばりかた」さえガタガタ言われ、戸締まりせず悩めもしない状況に疑問を感じます。ついにバンドシーンにも聞こえ始めた成長成長成長…これ以上がんばらせんじゃないよ人間を!死んじゃうよ!
バンドはどうしようもない奴も適当に始められるものであってほしいので、無駄骨を折ってるやつらは絶対ダメみたいにしないでほしい。
どんな信念をもってやってるか、何を目標にしているのか、楽しさをどこに感じてるのか、バンドによってそれはさまざまです。ライブでドサ回りしてるバンド、マーケティングやブランディングにリソースを割いてるバンド、宅録でカヴァー曲をやってるバンド、飲み会ついでにやってるバンド、みんなそれぞれの思いで存在しています。
僕の場合、自分が自分のことを好きでいれる範囲で、自分のバンドを広めるための努力をしています。ただ、日常的にテレビで観るようなバンドに自分達がなれるかと聞かれると、今すぐ社会がおかしくなってくれないと難しいので「このイベントでこの人数動員する」みたいな目標が目の前に点々とあり、そのために必要なことを日々行っています。そしてその行動ひとつひとつが、未来に繋がると信じてやっています。もちろん無駄骨もあり、それも人生だと苦笑いしてるわけです。
その代わり税金は払います。
僕は犯罪者が作った音楽でも聴くことができます。作り手のバックグラウンドがカスでも、それを超えるくらい素晴らしい作品だった場合好きになることもできます。ただ「税金を払ってない」人の作品だけは聴けません。なぜなら自分は毎年税金を払って非常に腹が立っているからです。
結局生活していくためにも、バンド活動を続けるためにも、お金が必要です。もちろん音楽だけで食えることが理想ですが、そう簡単にはいきません。音楽だけで生計が立てられなければ、他の仕事で収入を分散させて息長くバンドを続けていくべきです。そして、税金は払いましょう。なぜなら、僕は払っているからです。
自分がカッコいいと思うものが盤上をひっくり返すと信じて生きる人生、結構よくないですか?
おわりに、僕は自分のバンドがカッコいいと信じています。今年35歳で飯が食えていないのは、もしかしたら才能がないのかもしれませんし、遠回りしているのかもしれません。それでも毎年自分が成長している実感があり、まだまだ届けたいものがあり、応援してくれる人がいて、自分の人生とリンクしたコミュニティーが音楽を通して生まれたことで、今でも続けられています。
僕は今の人生に幸せを感じています。ときに"けしからん可能性大"なトラブルもありますが、周りにもなるべく幸せになってほしいと思って生きています。自分より優れた人を見ると、どうしても羨ましく感じることはありますが、例え遠回りでも、自分らしくあり続けることが大切なのです。
最後に僕が日本で1番好きなバンド
wash?の歌詞を引用して終わります。
どこにも属さずいよう
笑っていられるよう
