芋出し画像

ファットボヌむ・スリムずネリヌ・フヌパヌ──90幎代UK音楜をハックした共犯者たち






亀わらないはずの2本の線


ブラむトンの海蟺で、陜気なポップ職人が育っおいた。ノヌマン・クック。元ザ・ハりスマヌティンズのベヌシストで、埌にファットボヌむ・スリムを名乗る男である。

同じ頃、ブリストルの霧の䞭で、暗黒のダブ職人が育っおいた。ネリヌ・フヌパヌ。ワむルド・バンチずいうサりンドシステムのDJで、埌にビョヌクずマドンナを操るこずになる男である。

䞀方は陜光ず享楜の䜿埒、䞀方は重䜎音ず陰圱の䜿埒。音楜誌の幎衚に䞊べれば、この2人は察極に配眮されるべき存圚だろう。ポップずアングラ。メゞャヌずむンディヌ。倪陜ず圱。



この蚘事で立おたい仮説はひず぀である。この2人は同じ時代を、別々の入り口からハックしおいた共犯者だったのではないか、ずいうこずだ。圌らが手にしおいた歊噚は同じだった。ダブずいう技術、サンプリングずいう発想、そしお「遅くお重いビヌト」ずいう新しい身䜓感芚。入り口が違っただけで、目指しおいた堎所は驚くほど近い。

この笊合を远っおいくず、もう䞀本、意倖な線が浮かび䞊がっおくる。東京である。屋敷豪倪ずいう日本人ドラマヌが、この2぀の線の結節点に、ほずんど偶然のように立っおいたように思える。

もちろん、ノヌマン・クックずネリヌ・フヌパヌだけが、この地䞋氎脈を䜜ったわけではない。

その少し䞊流には、ダブをレゲ゚の枠から解き攟ち、ロックや実隓音楜ぞず接続した゚むドリアン・シャヌりッドのような存圚がいた。圌が切り拓いた「ゞャンルを混ぜる」ずいう発想は、ブリストルにもブラむトンにも静かに流れ蟌み、90幎代UKサりンドの土壌を豊かにしおいった。

時代は、䞀人の倩才が動かすものではない。名もなき無数のアむデアが地䞋氎脈ずなっお流れ、ある堎所で亀わり、やがお倧きな川になる。その川の流れを蟿るこずこそ、研究の醍醐味。




第1章ザ・クラッシュが撒いた「ダブずパンク」の皮


すべおの原点は、1979幎、ザ・クラッシュの䞀曲に遡る。『ガンズ・オブ・ブリクストン』。




パンクバンドがレゲ゚のベヌスラむンを堂々ず鳎らす。この曲がやったこずの意味は、圓時のロックキッズにずっおは倧事件だったず思う。パンクは゜リッドでか぀、怒りず速床の音楜であり、レゲ゚ダブは脱力ず間の音楜である。本来なら氎ず油のはずの2぀が、この曲の䞭では違和感なく同居しおいたのだから。


これが䜕を可胜にしたか。ロックを聎いお育った癜人の若者たちが、ダンスビヌトぞ接近するための、絶察的な免眪笊になったのだ。「クラッシュがやっおいたこずだから」ずいう䞀蚀が、あらゆる越境を正圓化する呪文になっただろうし、その刺激の倧きさは蚈り知れない。


ノヌマン・クックにずっおも、ネリヌ・フヌパヌにずっおも、この曲は共通の教科曞ずいえる。
パンクの反骚粟神を保持したたた、ダブの重心の䜎さを取り蟌む。この態床こそが、80幎代末から90幎代にかけおむギリスのダンスミュヌゞックを䜜り倉えおいく者たちの、最初の共通蚀語になる。そう融合の倧事件の序章だ。

皮は、どう発芜するかは、10幎埌にならないず分からない。


第2章グラりンド・ビヌトずいう革呜1989-1990


1989幎、ロンドンで゜りル・II・゜りルが『バック・トゥ・ラむフ』を攟぀。


この曲は、それたでのダンスミュヌゞックの垞識からすれば異物ずしか蚀いようのないビヌトだった。重くお、遅い。螊るための音楜は速くあるべきだずいう前提そのものを芆す、粘着質のグルヌノ。この感芚は、埌に「グラりンド・ビヌト」ず呌ばれるこずになる。

軜やかに螊らせるのではなく、身䜓を溶けさせる。沈み蟌たせる。この発明が、90幎代のR&Bからトリップホップに至るたでの、隠れた基瀎工事の仕事。このグラりンド ビヌトなくしおその埌のヒップホップ゜りルだっおあり埗なかっただろう。

そしおヌノヌマン・クックの反応は、驚くほど速く、そしお鮮やかだった。1990幎1月、圌が率いるビヌツ・むンタヌナショナルは『ダブ・ビヌ・グッド・トゥ・ミヌ』を発衚する。玠材の組み合わせ方が象城的だ。ベヌスラむンはザ・クラッシュ『ガンズ・オブ・ブリクストン』から、メロディず歌詞の骚栌はSOSバンド『ゞャスト・ビヌ・グッド・トゥ・ミヌ』から、そこにモリコヌネのハヌモニカず、ゞョニヌ・ダむネルのノォヌカルサンプルたで重ねる。第1章で蒔かれた皮ず、゜りル・II・゜りルが蚌明したばかりの新しいビヌト感芚。この2぀を1曲の䞭で正面から接続しおみせたのだ



結果、この曲は党英チャヌト1䜍を獲埗する。ロックキッズの免眪笊ず、ブラックミュヌゞックの最前線が、ポップの衚舞台で正匏に握手した瞬間だった。

ノヌマン・クックがやったこずは、暡倣ではない。融合ずリスペクトの䞊での再線集である。すでに空気の䞭に挂っおいた耇数の朮流を、誰よりも早く1぀の噚に泚いでみせた。この「早さ」ず「線集センス」こそが、圌のキャリアを貫く才胜の正䜓だず蚀っおいい。


第3章東京・ロンドン地䞋氎脈屋敷豪倪ずストリヌトの繋がり


ここで芖点を、地䞊のヒットチャヌトから地䞋氎脈ぞず移す。

゜りル・II・゜りルのあの重いビヌトを実際にプログラムし、ドラムずベヌスたで叩いおいたのは、日本人ミュヌゞシャン、GOTAこず屋敷豪倪。

経路をたどるず、そこにあるのはメゞャヌレヌベルの戊略ではなく、遊び仲間の私的なネットワヌクである。屋敷は京郜出身、䞊京しおミュヌト・ビヌトのドラマヌずなり、その埌メロンに参加しおペヌロッパ公挔を経隓する。この過皋で、ブリストルのワむルド・バンチにいた頃のネリヌ・フヌパヌず知り合っおいる。ただお互い䜕者でもなかった時代の、単なる顔芋知りだ。



1988幎、屋敷は単身ロンドンぞ枡る。そこぞ旧知のネリヌから連絡が入る。「゜りル・II・゜りルのレコヌディングを手䌝っおくれないか」。この軜い䞀本の電話から、『バック・トゥ・ラむフ』のあの重いグルヌノが生たれたず蚀われおいる。




東京ずブリストルずいう、2぀の郜垂の、私的な信頌関係だけだ。メゞャヌを介さず、遊び仲間たちのトランクで運ばれたレコヌドずアむデアが、䞖界的なヒットの震源地になる。この構造そのものが、90幎代のポップカルチャヌがどこから発火したかを物語っおいる。䞭心が発明するのではない。呚瞁同士が繋がったずき、䞭心が慌おお埌远いする。

屋敷のもう䞀぀の顔、ミュヌト・ビヌト。こだた和文のトランペットを軞にした、あの也いた、突き攟すような東京のダブ。めちゃくちゃカッコいいバンドだった。
ブリストルの湿った霧のダブずは肌觊りが違うがゞャンルの玔床よりも、間ず沈黙の䜿い方を優先する。東京の冷たさずブリストルの湿り気は、察極に芋えお、実は同じ問いに察する2぀の答えだったのではないか。


第4章メむンストリヌムの乗っ取りず「別れ」


90幎代が進むに぀れお、この2人はそれぞれのやり方で、アングラの偎から䞭心を乗っ取っおいく。

ネリヌ・フヌパヌの䞋克䞊ぶりは培底しおいた。ブリストルの䞀介のサりンドシステムDJだった男が、ビョヌクのデビュヌ䜜を手がけ、マドンナの『ベッドタむム・ストヌリヌズ』を手がける。1995幎のブリット・アワヌドでは最優秀プロデュヌサヌに遞ばれる。ストリヌトの矎意識を、ポップスタヌの制䜜珟堎に盎接泚入しおみせた。圌にずっおメむンストリヌムは、ストリヌトの延長にあったのかもしれない。


ノヌマン・クックの道行きはもっず祝祭的だった。ビヌツ・むンタヌナショナルからファットボヌむ・スリムぞず名前を倉えながら、圌はビッグ・ビヌトずいう新しいゞャンルの顔になっおいく。そしおブラむトンの海岞を25䞇人の芳客で埋め尜くすずいう、むンディヌ出身の人間ずしおは前代未聞のモンスタヌに成長する。




ネリヌ・フヌパヌずノヌマン・クック、2人の䜜法は違う。䞀方は制䜜者ずしおスタヌの内偎に入り蟌み、もう䞀方はステヌゞの䞊に立っお自ら祝祭の䞻になる。


1963幎に生たれ1991幎に花が開いた


すべおの糞が䞀床、1991幎ずいう幎に集たる。

ザ・クラッシュが蒔いた皮、゜りル・II・゜りルが蚌明したビヌト、東京ずブリストルを結んだ私的な回路、そしおそれをポップの衚舞台ぞ持ち出した2人の男。パンクもレゲ゚も゜りルもヒップホップも、この幎前埌のロンドンでは境界線がドロドロに溶けおいた。ゞャンルずいう地図がただ確定しおいなかったからこそ、誰もが自由に越境できた。奇跡の幎、ず呌びたくなる所以である。

あれから30幎以䞊が経った。圓時バラバラのシヌンで鳎っおいた点は、今振り返れば1本の線ずしお繋げるこずができる。ブラむトンの陜気なポップ職人ず、ブリストルの暗黒のダブ職人ず、東京から来たドラマヌ。圌らは同じ時代をハックしおいた共犯者だった。


1. The Clash – Guns of Brixton
2. Soul II Soul – Back To Life
3. The S.O.S. Band – Just Be Good To Me
4. Beats International – Dub Be Good To Me
5. MUTE BEAT – Still Echo
6. Björk – Human Behaviour
7. Madonna – Bedtime Story
8. Fatboy Slim – Praise You


モノコトフロヌ研究所
文化氎源調査隊ヌGeminiSHOGO生成AI






いいなず思ったら応揎しよう

あしょじ よろしければ支揎。応揎お願いしたす いただいたチップはクリ゚むタヌずしおの掻動費に䜿わせおいただきたす