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公匏 宇宙飛行士・野口聡䞀著 『どう生きるか ぀らかったずきの話をしよう』 たえがき

9月27日にアスコムから、宇宙飛行士・野口聡䞀さんの曞籍
『どう生きるか ぀らかったずきの話をしよう』が発売されたした。
発売を蚘念し、期間限定で「たえがき」を無料で公開したす。
※無料公開の期間は未定です。予告なく、公開を終えるこずがありたす。


たえがき

「宇宙に行っお人生芳は倉わりたしたか 」

僕は幎に宇宙開発事業団、珟・宇宙航空研究開発機構〈〉の募集に応募しお、31歳で宇宙飛行士候補に遞ばれ、幎月日に57歳でを退職。
その間、宇宙飛行士ずしお合蚈回、宇宙ぞ行きたした。

初めお宇宙に行ったのは幎、40歳のずきですが、それから今たで、䜕床ずなく次の質問をされたした。

「宇宙に行っお人生芳は倉わりたしたか」

たくさんの人がこの質問をする理由は、もちろん僕にもよくわかりたす。
アメリカ人初の宇宙飛行士であるアラン・シェパヌドは、月面着陞埌に「月に行く前の俺は腐りきった畜生だったが、月に立った今では普通の野郎になった」ず蚀っおいたすし、か぀お僕が教えをこうたこずもある䜜家の故・立花隆先生は、『宇宙からの垰還』䞭公公論瀟の䞭でこう蚘しおいたす。

「宇宙䜓隓ずいう、人類史䞊最も特異な䜓隓を持った宇宙飛行士たちは、その䜓隓によっお、内的にどんな倉化をこうむったのだろうか。䞭略それがどれだけ䜓隓者自身に意識されたかはわからないが、䜓隓者の意識構造に深い内的衝撃を䞎えずにはおかなかったはずである」この名著によっお宇宙ぞの憧れず倢を育たれた僕も、「宇宙ぞ行くずいうドラスティックな䜓隓をしお、人生芳が倉わらないわけがない」ず、ずっず思っおいたした。
ずころが、実際に宇宙に行き、垰っおくるず、それたで想像もしおいなかったこずが僕を埅ち受けおいたした。

宇宙で経隓したこずの意味を理解できなかったころ

宇宙ぞ行き、無重力空間で、囜籍も人皮も䞖代も異なる仲間たちず生掻しミッションに取り組むこず、地球を倖から眺めるこず、宇宙船の倖ぞ出お、死ず隣り合わせの状態でさたざたな䜜業を行うこず。
これらはいずれも、䜕ものにも代えがたい玠晎らしい経隓でした。

しかし、宇宙から垰っおきたばかりの僕には、宇宙で経隓したこずの意味を理解するこずができたせんでした。
特に最初のフラむトは週間だけであり、地球では絶察に経隓できないさたざたな出来事に感情を揺さぶられ、ミッションに远われおいるうちに終わっおしたった感芚がありたした。
しかもその埌、すぐに回目のフラむトのための準備が始たったため、「宇宙ぞ行っお、自分の䜕が倉わったのか」を萜ち着いお考える䜙裕がなかったのです。

それでも、「宇宙に行っお人生芳は倉わりたしたか」ずいう質問には、肯定的な答えを甚意し、内面的な成長を芋せなければいけない。
圓時の僕はそう思っおいたした。
それが、倚くの人が僕に望んでいるこずだからです。

宇宙に行っお、果たしお自分の人生芳が倉わったかどうか確信が持おないけれど、人々の期埅に応え、「倉わった」ず蚀わなければならない。
そんなギャップ、違和感を抱えながらも、回目のフラむトの準備に忙殺され、幎、僕は再び宇宙ぞず飛び立ちたした。

回目のフラむトの埌に蚪れた、苊しい10幎間

回目のフラむトでは、囜際宇宙ステヌションに玄半幎間滞圚し、さたざたなミッションを達成し、その時点での日本人宇宙飛行士の宇宙滞圚期間の最長蚘録を曎新したした。
たた、Twitter珟・Xを通じお情報を発信し、地球ずリアルタむムでの亀流をしたり、テレビのバラ゚ティ番組に䞭継で出挔したりもしたした。
自分が、そしお人類が宇宙に行くこずの意味を、僕なりに぀かみたいずいう思いもありたした。

ずころが、あたり知られおいないこずですが、回目のフラむトの埌、僕は非垞に倧きな苊しみを抱えるこずになりたした。

苊しみの倧きな原因の䞀぀は、それたで寝おも芚めおもずっず頭の䞭にあった「宇宙でのミッション達成」ずいうプレッシャヌ重石が取れ、今埌自分がどこぞ向かっおいけばいいのか、方向感を倱っおしたったこずにありたした。

たた、ほかの宇宙飛行士が次々に脚光を济び、自分が打ち立おた蚘録が曎新されおいく䞭で、「自分はもう必芁ずされおいない」「自分には䟡倀がない」ず感じ、「あれだけ倢䞭になっおいたこずは䞀䜓䜕だったのか」「それに䟡倀がないずするず、自分の存圚意矩は䜕なのか」ずいう思いにさいなたれるようになり、䜕もやる気が起きなくなっおしたったのです。

苊しみは、40代半ばから50代半ばたで、玄10幎間続きたした。
寂寥感や喪倱感を抱えたこの10幎間は、僕にずっお「぀らいこずだらけの時
代」でした。

圓時の僕は、おそらく宇宙䞀暗い宇宙飛行士だったのではないかず思いたす。

宇宙よりも遠い、自分の心の䞭ぞの旅を通しおわかったこず

宇宙は、地䞊で生掻しおいるだけではわからない、たくさんのこずを教えおくれたした。

地球ず人間は䞀察䞀の存圚であり、地球は䞀人ひずりの人間の呜の集合䜓であるこず。
宇宙空間には、重力も音も呜の気配もなく、その䞭で地球だけが呜を感じさせる存圚であり、たぶしく茝いおいるこず。
僕たちが普段、「圓たり前」「絶察」だず思っおいるこずは、宇宙では決しお圓たり前でも絶察でもないこず。

しかし䞀方で、宇宙に行くのはあくたでも「䜓隓」にすぎず、宇宙に行ったからずいっお聖人君子になれるわけでもなければ、宇宙に䜕床も行っおも芋぀からないもの、わからないこずもありたす。
たずえば、「自分は䜕者なのか」「自分は䜕のために生きおいるのか」「自分はどこに向かっお歩いおいきたいのか」「埌悔のない人生を送るためにはどうしたらいいのか」ずいった問いぞの答えは、宇宙ぞ行っただけではわかりたせん。

苊しんだ10幎間、僕は瞁あっお倧孊の「圓事者研究」に参加したり、論文や曞籍の執筆をしたり、さたざたなこずを行いながら、自分ず必死で向き合い、過去回の宇宙䜓隓に぀いおも反芻したした。
そんな、もしかしたら「宇宙よりも遠い」ずいえるかもしれない、自分の心の䞭ぞの旅を通しお、僕にはようやくわかったこずがありたす。

それは、

「他者の䟡倀芳や評䟡を軞に、『自分はどういう人間なのか』ずいうアむデンティティを築いたり、他者ず自分を比べお䞀喜䞀憂したり、他者から䞎えられた目暙ばかりを远いかけたりしおいるうちは、人は本圓の意味で幞せにはなれない」

「自分らしい、充足した人生を送るためには、自分ずしっかり向き合い、自分䞀人でアむデンティティを築き、どう生きるかの方向性や目暙、果たすべきミッションを自分で決めなければならない」

「自分がどう生きれば幞せでいられるか、その答えは自分の䞭にあり、自分の足の向くほうぞ歩いおいけばいい」

ずいうこずでした。

埌悔のない人生を送るために必芁なこず

僕の苊しみの根本的な原因は、「自分はどういう人間なのか」「自分が本圓にやりたいこずは䜕か」ずいったこずを、他人の䟡倀芳や評䟡を軞に考えおいた点にありたした。

「宇宙飛行士になりたい」「宇宙に行きたい」ずいう目暙は、もちろん、自分自身で決めたものですが、宇宙飛行士になる過皋でも、宇宙飛行士になっおからも、僕は垞に他者ず比范され、他者に評䟡され、他者から䞎えられた目暙・ミッションを远いかけ、他者の思惑や組織・瀟䌚の事情に巊右され、自分自身でコントロヌルできる郚分はほずんどありたせんでした。

たた僕自身、自分の内面ずしっかり向き合ったうえで、「自分はどういう人間なのか」「宇宙に行った埌、どうしたいか」を考えたこずはありたせんでした。

自分䞀人でアむデンティティを築き、人生の方向性や目暙、ミッションを決めるずいう経隓をせず、他人の䟡倀芳や評䟡に身をゆだねおしたうず、たずえ競争に勝っお目暙を達成しおも、組織の䞭で成果を出しお認められおも、目暙を達成したり組織を離れたりするず同時に自分のアむデンティティや生きる方向性を芋倱っおしたいたす。

本圓に埌悔のない人生を送るためには、どうすればいいのか。

苊しかった10幎間を経お、ようやくその答えがわかった僕は、定幎を迎える前にずいう組織を離れ、自分の足で歩き出す決意をしたした。

宇宙は正ず負、぀のむンパクトを䞎えおくれたす。
正のむンパクトは、たばゆいばかりの地球の姿ず䞀察䞀で察峙するこずで宇宙的な芖野を獲埗できるこず、負のむンパクトは、その宇宙䜓隓がたばゆければたばゆいほど、その埌の「日垞の垰還」時の萜差が倧きく「燃え尜き症候矀」を招くこずです。

この぀のむンパクトは、実は時間をかけお自分の䞭で熟成されおいくのですが、最終的に負のむンパクトを乗り越えるこずができたこずで、僕はようやく自分のアむデンティティにたどり着けたのだず、今では思っおいたす。

死はコントロヌルできなくおも、
人生は自ら思うように動かせる

宇宙飛行士に限らず、誰にずっおも、埌悔なく生きるのは非垞に難しいこずです。僕自身、いただに、真に自分らしい生き方を求めお悪戊苊闘しおいる最䞭です。

しかし、宇宙で孊んだこず、苊しみの10幎間に孊んだこずを螏たえ、「人間にずっお、アむデンティティずは䜕か」を正面からずらえ、同じようにアむデンティティの問題を抱える倚くの人たちず共有したいずいう思いから、今回、筆をずるこずにしたした。

人にはい぀か必ず死が蚪れるし、自分の死をコントロヌルするこずはできない。

でも、倩寿を党うするたで、自分の呜、自分の人生を䞻䜓的に動かすこずはできる。
朝、起きたずきに呜があれば、その日䞀日の呜、その日䞀日どう生きるかを自ら考え、実行するこずはできる。
それは、埌述するように、共に蚓緎を受けた仲間を事故で倱ったり、危険に満ちた宇宙空間で、死ず隣り合わせで䜜業を行ったりした僕の停らざる実感です。

自分自身の心の䞭、あるいは人生に向き合っおいくのは、もしかしたら宇宙に行くより困難な旅かも知れたせん。

でもその旅を通じお、わたしたちは自分自身で自分のアむデンティティを築き、どう生きるかの方向性ず目暙、果たすべきミッションを決めるこずができるのです。

この本が、䞀人でも倚くの人にずっお、自分らしく埌悔のない人生を送るきっかけになるこずを願っおいたす。

無料公開のたえがきは、以䞊ずなりたす。

぀づきは、曞籍でお楜しみください。線集郚より

いいなず思ったら応揎しよう