翼を授ける
久しぶりに会ったアシスタントの86に羽根がはえてた。
フロントにはカナードもはえてた。

「ウイングが付いた車はカッコイイ」というのは、「車高が低い車はカッコイイ」と同様、この世界における数少ない真実の一つなのだろう。その佇まいには、走ること以外の言い訳を一切排除したある種の潔さが漂っている。
アシスタントから、このGTウイングは生活の全てを切り詰めて手に入れたパーツであると聞かされ、なおさらそう感じられる。これは彼の人生の数か月が濃縮されて形になったものなのだ。
一方で自分が先日購入したAMG GTはどうだろう。
一応、純正オプションのカーボンウイングは付いている。
が、

曲線主体のデザインはイカつさよりも可愛さが勝ってしまっている。
この、優等生が書いた作文のようなお行儀の良さを、一体どうすればいいのだろう。僕の記憶が正しければ、AMGという名前の響きには、もっとこう、夜の街を静かに威圧する、ちょいワル めいたニュアンスが含まれていたはずだ。
早速、社外品を検索してみるも、希望のデザインとは程遠い物ばかり出てくる。まるで、最初から存在しない答えを探しているような徒労感だ。
だが、検索ワードをいろいろと工夫する中で、興味深いウイングを発見することができた。

このウイングに愛嬌や可愛らしさといった要素はない。

鋭角に切り落とされた翼端板や、複雑な形状を成すウエットカーボンは見事なまでに不穏な造形を生み出している。

これだ。多分これだ。
私は馴染みのショップの顔を思い浮かべながら、次の作戦を練り始めた。
