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なくなるのが、こわくて。── ストック癖、わたしなりの処方箋

朝、顔を洗おうと鏡を開けたとき──
ずらりと並ぶチューブやボトルが、静かにこちらを見返してきた。

シャンプーが2本、歯みがきペーストが3本、未開封の歯ブラシが5本。
見た目はすっきりしているけれど、実はなかなかの充実ぶりである。

「なくなるのが、なんとなく不安」
そんな気持ちが、静かに棚の中に並んでいた。


「不安・便利・こだわり」の三重奏


わたしの“ストック癖”には、それなりの理由がある。

たとえば、震災のあとの混乱。
スーパーの棚が空っぽになったあの日の光景。
パンデミックの最中に、マスクもトイレットペーパーも、幻のように消えた記憶。

「手に入らないかもしれない」という体験は、思いのほか深く残っているらしい。
たとえ今が、クリックひとつで何でも届く時代だとしても。

シャンプーはお気に入りのサロン専売品。
スキンケアは、朝のリズムを整えるお守りみたいな存在。
だから、どれも切らしたくない。

安心のための“予備”のつもりが、
気づけば引き出しの中は、ぎゅうぎゅうになっていた。

便利と不安と、ちょっとしたこだわり。
その三つが、わたしの備蓄棚を仕立てている。

「必要」と「過剰」の境目は、ほんとうにあいまいだ。

「見えない不安」は、日付でほどく


ある日、ふと思いついて、
「使い始めた日」をマスキングテープに書いて貼ってみた。

チューブの底にそっと貼った小さな日付。
それが、意外にも頼もしい存在になった。

開封時期がわかるだけで、あとどのくらい持つかが見えてくる。
その流れがつかめると、不思議と心に余裕が生まれる。

・買い足すタイミングを逆算できる

・“なくなること”へのストレスが減る 

・うっかり買いすぎが落ち着く


ストックが整うと、気持ちも整う。
見えない不安には、見える工夫が効く。
習慣は、そんなふうに少しずつやさしく変えていけるものだと思う。

「なくなるのが、こわい」──
それはきっと、今の安心が壊れるのがこわい、という気持ち。

けれど、守ることにとらわれすぎると、
新しい選択や変化に気づきにくくなってしまうのかもしれない。

歯ブラシ1本、トリートメント1本。
そんな“いつも”に、新しい風を入れてみる。

「足りないかもしれない」ではなく、
「ちょうどいい自分」を選び直すこと。

ストックを手放すという選択は、
たぶん、不安にそっと背中を向けることなのだ。



最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
少しでも響くものがあれば、“スキ”で教えていただけるとうれしいです。

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