「家に飾れるか」で作品を諦めなくてもいい|住まいに合わせて、好きなものまで小さくしない
作品を見て、
「これ、いいな」
と思ったとします。
けれど、次の瞬間に考える。
「うちには大きすぎるかもしれない」
「こんな色の作品、リビングには強すぎるかな」
「飾れる壁がないから無理だろうな」
そして結局、もう少し小さくて、もう少し無難で、今の部屋に合わせやすそうな作品を探し始める。
住まいにアートを迎えようとすると、こんなことがよく起こります。
もちろん、サイズを確認することは大切です。
ただ、「飾れるかどうか」を最初の基準にしてしまうと、本当に惹かれた作品から離れてしまうことがあります。
なぜ、小さな作品なら安心するのか
大きな作品には存在感があります。
壁に掛ければ、部屋の印象も変わるでしょう。
だから少し怖く感じます。
一方、小さな作品なら家具の上にも置ける。空いている壁にも掛けやすい。もし合わなければ別の場所へ移すこともできます。
失敗しにくそうに感じるのです。
でもそれは、
「好きな作品を選ぶ」というより、
「今の家に問題なく収まる作品を選ぶ」
ことになっているのかもしれません。
作品は家具と同じように考えなくてもいい
家具を選ぶときには、寸法が重要です。
幅180センチの場所に、200センチの収納は入りません。
ところが作品は、もう少し自由です。
壁いっぱいに近い大きさでも美しく見えることがあります。
家具の上にきれいに収めなくてもいい。
少し低くても、思い切って大きくても、そのアンバランスさが空間の魅力になることがあります。
作品には、「ちょうどよく収まる」こととは違う面白さがあるのです。
大きな作品ほど、部屋を整えることがある
意外ですが、
大きな作品を置くことで、部屋がすっきり見えることがあります。
小さな額や雑貨をいくつも並べるより、一枚の作品だけが壁にある。
すると視線の行き先が決まり、周囲に余白が生まれます。
「大きな作品=圧迫感」とは限りません。
むしろ作品の存在がはっきりすることで、家具や小物を足さなくても空間が成立することがあります。
作品が部屋の重心になってくれるからです。
今の家に合わないこともある
とはいえ、本当に飾れないこともあります。
壁が小さい。
窓が多い。
直射日光が当たる。
家具が壁際を占めている。
作品を少し離れて見られる場所がない。
そんなとき、無理に飾る必要はありません。
大切なのは、
「この作品は家に合わない」
で終わらせないことです。
もしかすると問題は作品ではなく、今の住まいとの関係にあるのかもしれません。
好きな作品から、家を見る
大きな作品に惹かれたことで、
初めて家の壁を意識する。
窓の位置を見る。
家具を少し動かしてみる。
これまで置いていた小物を減らしてみる。
すると、今までとは違う部屋の使い方が見えてくることがあります。
作品を家に合わせるだけではなく、
作品をきっかけに、家のほうを見直してみる。
それもアートと暮らす面白さです。
「いつか飾りたい」でもいい
どうしても今の家では難しい。
それでも、その作品を好きだという気持ちまで諦める必要はありません。
いつか住み替えるかもしれない。
リフォームするかもしれない。
次に家をつくることがあるかもしれない。
そのとき、
「あの作品を飾れる場所がほしい」
という希望が、住まいを考える一つの基準になります。
間取りや設備ではなく、一枚の作品から次の家の景色を想像する。
そんな順番があってもいいと思います。
おわりに
家に飾れるかどうか。
それは作品を迎えるうえで、確かに大切な条件です。
でも、
その条件だけで作品を小さくしたり、無難なものへ変えたりする前に、
一度立ち止まってみてもいい。
自分は本当は、どの作品に惹かれたのだろう。
どんな大きさで、その作品を見たかったのだろう。
そこには、自分が心地よいと感じる空間のヒントが隠れているかもしれません。
家に合わせて作品を選ぶ。
それも一つの方法です。
けれど、ときには好きな作品のほうから、
「こんな家で暮らしてみたい」
という景色が見えてくることもあります。
作品に合わせて暮らしを少し変えてみる。
その先に、これまでとは違う住まいの楽しみ方が始まるのだと思います。
ここに書いたことは、
正解ではなく、ひとつの視点です。
作品と人のあいだに、
どのような距離をつくるか。
その設計について、
もう少し具体的にまとめたページがあります。
関心があれば、静かに覗いてみてください。
→ 作品と人のあいだに立つ設計
