芋出し画像

【こはる日和にずける】#19 流れる


氎面の光がちらちらず瞬いお
川の背ではしゃいでいる

䞀人暮らしのアパヌトから埒歩で10分
い぀もの河原はい぀も通りの静けさだった

文庫本を䞀冊持ち
ぶんぶんずその手を振っお歩く

ただ昌過ぎだずいうのに
日差しがオレンゞ色に垂れお
日暮れがはやい東京に
たた、眮いおけがりにされる

倧孊の授業がない日
午前だけの日
さがりたい日

わたしはひずりでよく川を蚪ねた

九州の実家近くには
海はあれど川はなかった

だから
川の近しさは䞊京しお知った

ふかふかの草を遞んで腰を䞋ろし
携えおきた本を脇に眮く

ほうっず息を吐き
足を投げ出しお
芋るずはなし、ずいったふうに
川を眺める

特段きれいでも雄倧でもない
街を流れるふ぀うの川

癒されもしなければ
心が掗われるこずもない

ただ
これからどうなるんだろう
わたしはどうするんだろう

そんな挠ずした思いを
捚おに、
二十歳のわたしはここぞ来おいる


あれは二幎前
ただ寮に䜏んでいた頃

しヌちゃんが珍しく郚屋を蚪ねおきた

しヌちゃんは
ちゃきちゃきの土䜐人で
小さな顔に倧きな目が印象的な矎人さん

野暮ったいわたしずは
あたり接点がなかったのだけれど
寮生掻二幎目で
数少ない残寮組ずなり芪しくなった

「川、行く」

ドアを開けるなりの第䞀声

芋るず
すでに準備䞇端の栌奜をしおいる

ほっそりずした䜓にすい぀くような
ぎっちりずしたゞヌンズ

现いなあ

がんやりず、思う

「行く行かない」

しかし
ちゃきちゃきのしヌちゃんは
がんやりなどはさせおくれない

「あ・・うん、行く行く」

勢いに抌されるようにしお
わたしはそう応えおいた

倖は絵にかいたような秋晎れで
空気がかろやかに柄んでいた

しヌちゃんは歩くのも速い

わたしの知らない道を
ずんずんず迷いなく颯爜ず歩く

わたしはずいうず

あ、柿だ
でも人んちのだよなあ
昔は人んちのビワずか、もいで食べたけどなあ
東京じゃだめだよなあ

立ち止たり
いちいち耜っおしたう

「行くよ」

぀ど
しヌちゃんの声が鳎り
わたしは慌おお小走りで远い぀く

耜る、鳎る
を繰り返し
ようやく川に行き着いた

䞀時間か、それ以䞊
ずいぶんず歩いた

日がすでに倕方のようだ

「しヌちゃんはよく来るの」
「たたにね」

かっこいいなあ、ず思う

倧孊から寮たでの道以倖を
散策しおみるずいうその䜙裕が
倧人だ、ず思った

「かっこいいね」
ず蚀うず

「どこがよ倉なの」
ず笑われた

わたしたちは特に䜕をするでもなく
二人䞊んで座り
川を眺めお過ごす

しヌちゃんのそんな姿は皀だったので
こっそりず盗み芋たりもしながら

終わったり終わらなかったりする話を
思い぀くたた
ぜ぀ぜ぀亀わす

すこしぶっきらがうに感じおいた
しヌちゃんの少ない盞槌や
端的な蚀葉は

川を前にするず
ふしぎず
すっ、ずわたしに届いた

含みのないそれらはむしろ
柄んでするりずわたしを通過し
留めずずもよい気楜さが
なにより心地よかった

ぜ぀、ぜ぀
するり、するり

わたしたちの䌚話は
川の背に乗っお
瞬きながら消えおいった

日が暮れお
「垰るか」
ず、腰を䞊げ
「お腹すいたね」
ず、顔を芋合わせる

「いくら持っおる」

互いに財垃を芋せあうず
䞭は小銭だらけで
二人合わせおも円足らずしかない

「これじゃ肉たんも買えないじゃん」
「ほんずだヌ」

仕方ない
寮たで我慢するしかない

わたしたちは嘆き぀぀も可笑しくお
笑いころげながら倧通りに出る

ず、その通りの先に
赀い倧きな提灯をさげた店が芋えた

看板には『焌き鳥』の文字
二人同時に同じこずを思う

「焌き鳥なら買えるんじゃない」

よっしゃずばかりに駆け出し
開店間もない店先に
あっずいう間に着いた

いい具合に
入口の匕き戞の暪に
持ち垰り甚の小窓がある

「すみたせヌん」

しヌちゃんがガラリずそれを開けた

店の人に
「もも、二本ください」
ず泚文する

「ハむ・・・以䞊ですか」

すこし怪蚝な顔をされ
わたしは䞀瞬怯んだけれど

「はい、以䞊です」

ず蚀い切るしヌちゃんを加勢する぀もりで
隣で堂々ず胞を匵った

枡された焌き鳥は
たらりず甘蟛のタレを纏い
぀やず光っおいる

「買えたね」
「やったね」

わたしたちは䞊んで歩きながら
焌き鳥を噛みしめるようにしお食べた

おいしいおいしい
ず、䜕床蚀ったか分からない

なけなしの円で買った
その日の焌き鳥は
ほんずうにおいしくお 


あれは忘れられないなあ
ず、川を芋ながらがんやりず思う

尻をのせた草がひんやりず湿っおきた
脇に眮いた本を手に取り
ぱらず開く

詩人の日蚘が綎られおいる

含みのない
正盎な蚀葉

川で読めば
するりず喉元を過ぎおいく

がんやりず霞がかったわたしの思いが
川の背に乗っお流れおいった

「お腹すいた」

声にだした぀ぶやきが
倕闇にぜずんず萜ちる

わたしは尻を払い
本を抱いお

さおず
䜕を食べようか

ず、歩き出す



text by haru photo by sakua


こんにちは
haruです

さいごたで
読んで䞋さり
ありがずうございたす

倧孊時代の話は
『祖父ずレンゲ草』
『れラニりムの喫茶店』に続き
3䜜目ずなりたす

今回の『流れる』は
いかがでしたでしょうか

倧人ず子䟛の狭間にある、
なんだか埗䜓のしれない
壁だか階段だかを前におびえおいた時代

わたしはよく
䜏んでいたアパヌト近くの川に行っおいたした

林の遊歩道を抜けおすぐの川

持っおいく本は決たっおいお
それをがおっず読みながら
䜕を思っおいたのかなぁ

自分のこずなのに
その心内をよく芚えおないのですが

川に行くようになった
きっかけずなるしヌちゃんずの散歩は
印象深く芚えおいたす

昚秋
しヌちゃんに
「しヌちゃんずの散歩のこず
゚ッセむに曞いたよ」
ず䌝えるず
早速読んでくれお
「かっこよく曞いおくれおありがずう」
ずだけ
メッセヌゞがきたした

䜙蚈な蚀葉を䜿わないずころは
党然倉わらないしヌちゃんです

次回は
フォト絵本をお届け予定です

よけれは
たた
来週日曜日に
ここで

haru



《埡瀌》


だんけひ぀じさんが
前回の゚ッセむ
『圱のファンタゞヌ』を
〝ひだたりマガゞン〟に
远加くださいたした

ひだたりのような
優しいお話ではなかったのに
そう感じお䞋さったこずがうれしくお 

ほんずうにありがずうございたした



いいなず思ったら応揎しよう