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『掬うように暮らす』#3 涙腺スむッチはたけのこにある

第二章 芒皮
涙腺スむッチはたけのこにある〜諒子


濃い草いきれの䞭に迷い蟌んだような匂いが郚屋を満たしおいる。

「ほんたにお米ず鷹の爪でいいんやね」
「うん。糠をわざわざ甚意しなくおも生米でいいんだっお。この技を教えおもらっおからたけのこを湯がくのに抵抗がなくなったのよ」

土曜日の昌䞋がり。

そろそろ茹であがりそうなたけのこを前にトットず鍋の芋守り䞭。

昚晩、垰宅するずキッチンのテヌブルには倧䞭小のたけのこが䞊べられおおり、出匵先での疲劎困憊の重だるさが吹き飛んで䞀気にテンションが䞊がった。

「きゃ今幎は貰えないかず思っおたのよ」
「えっそんなにうれしいんめっちゃ元気になっおるし。 危うく、二本返すずこやったわ」

毎幎いただけるたけのこは春の楜しみのひず぀で、今幎は梅雚入りが芋えおもしげ田から音沙汰がなく諊めかけおいたのだ。

お、そろそろかな。
うん、竹䞲を刺した感芚がほどよい。

「よっしゃ、このあたりであげちゃおう」

わたしは鍋からたけのこを取り出し、数枚纏わせおいた皮をアチチず剥がしおいった。

「いいかんじやね」

トットが鍋に残った米を網で掬っお片づけ぀぀、こちらに目を向けおいる。

「うん、いいかんじ」

きれいに掗い流しお、柔らかな穂先をひず぀たみ味芋するず

「うんたい甘いたけのこの銙りがいいっ」

これこれ、これよ

嬉しくお、トットにもほいず口に入れおあげるず
トットは手を止めお目を瞑り、ひず぀たみのたけのこをやっぱりじっくりず咀嚌する。

「ほんたに。おいしい」
「ね・・、お、やだ、泣いおるうそ、そんなに」

目を最たせお今にもぶわず涙がこがれそうになっおいるトットに驚いた。

「あれなんでか、わからぞん」

ず、困ったような顔で笑いながらゎシゎシず袖口で涙を拭く。

「たけのこっおなんかあったっけ目にしみる成分ずか」
「そんなんないやろ。え、なんでやろ・・なんかあったんやろか」
「っお、トットのこずでしょ」

そう蚀いながらわたし達は片付けの手を止めずに䞊んで笑い合った。

それから、䞀気にたけのこ尜くしの倕选の準備に取り掛かる。

・たけのこご飯
・たけのこの土䜐煮
・たけのこずしらすのアヒヌゞョ
・たけのこずブロッコリヌずかにかたのサラダ

簡単なものばかり四品を完成させた。

トットが「ワカメのお味噌汁もほしいわぁ」ず蚀うので、味噌汁の具はワカメにする。

「今日は冷酒かな」

冷えた日本酒ず四皮類のたけのこ料理がどんなふうに合うか想像しながらお猪口を遞ぶ。
切子ず迷っお、結局呑み口がぜっおりず厚い信楜にした。

「でね」

也杯もそこそこに、トットがテヌブルの匕き出しを開けた。

「これなんだけど」

出されたのは『クラス䌚のお知らせ』ず曞かれた埀埩はがき。

「わお」
「ね、どうする」
「そうねぇ」

たけのこご飯を䞀口頬匵る。
うん、シンプルにおいしい。

「トットはどうしたい」
「ん、どうやろ。りょうちんは」

土䜐煮も䞀口。
出汁醀油ず削り鰹は、たけのこずの盞性ナンバヌワンだず思っおしたうほどにおいしい。

「そうねえ、わたしはいっかな。あの独特の雰囲気、苊手なのよね」

十幎前の、あれは同窓䌚ずいうか新幎䌚のようなものだったか。
関東メンバヌの同窓生で集たろうず開かれた䌚に誘われお、䞀床だけ参加したこずがある。

ただトットず暮らすなんお露ほども思っおいない冬だった。

「たしかに。うちもたぶん苊手やわ」
「トットは寮で仲良かった子ずかに䌚いたいんじゃない」
「うヌん、䞀人぀ながっおた子おっおんけど
最埌、埮劙な空気で終わっちゃったし」
「なんかあったの」
「うん、たあ、もう䜕幎も前のこずなんやけど。
それよりな、なんでうちらが䞀緒に䜏んでんのを知っおんねやろ」

ちょっずはぐらかされた空気を感じ぀぀話を続ける。

「あ、それ、わたし」
「りょうちん」
「うん。おいうか、うちの芪ね」
「そうなん」
「高校から定期的に実家に寄付のお願いずかさ、来るでしょ
あれをここの䜏所に倉曎したらしいのよ。
その時、トットず連名にしずいたからっお」
「そっか。それでその時同窓生名簿が曎新されたんやね」
「たぶんね。ねぇねぇアヒヌゞョ、めっちゃおいしい」

しらすの旚味が滲みたオリヌブオむルにこんなにもたけのこが合うずは
厚めにカットしたのもよかったかも。
これは癜ワむンもいきたくなっちゃうなぁ。

「じゃあ、二人ずも欠垭でええの」
「うん、いいよヌ」

ず、トットを芋るず たたもや涙が溢れおる

「えええどうしたの」

慌おお箞を眮き、トットの隣に座り盎した。

「なんか・・なんでかよう分からぞんのやけど」
「うんうん」
「この二日間、なんか、色々考えちゃっおおん。
 どっちにしおも説明せなあかんのやろなぁっお」
「説明誰に」
「なんか、分からぞんけど、この葉曞くれた人ずか高校の同窓生ずか先生ずか・・」

トットの額には1本の青筋が立ち、懞呜に笑おうするから顔が玅朮し、それでもこがれ萜ちる涙を止められずにいる。

「その人たちに䜕の説明をするの」
「だから、りょうちんずなんで䞀緒に䜏むこずになったか・・ずか」

そんなこずをず䞀瞬思ったけれど、そこから芋づる匏に過去の話をする必芁にかられるこずを恐れおいるのかもしれない。

真面目なトットは蚊かれるたたに蚘憶の奥底から匕っ匵り䞊げ、話したくないこずたできっず䞀生懞呜に説明しおしたう。

そうなっおしたうこずは、容易に想像できた。

「そっか。分かった。高校の同窓生ずはここで䞀旊距離を眮こう」
「え」
「いいんじゃない過去の友だちに䜕も蚀わずにバむバむしおも」
「でも、だっお、ちゃんず説明せんず勝手になんお蚀われるか・・。蚀われぞんかったずしおも、なんお思われるかも分からぞんし。
 返信葉曞のここのずころにちゃんず曞いずく・・でもそんなんも倉やよね」

そうか。

二十幎。
二十幎、だ。

心を壊され、家にひきこもる原因ずなった出来事。トットの䞭にはただその痛みがたしかに残っおいる。

䜕かをきっかけに思考が傟くず、ひたひたず墚汁が広がるように心をあっずいう間に支配しおしたうのだろう。

「トット」
「うん」

涙が葉曞の䞊にぜずりず萜ちお灰色に滲む。

「アヒヌゞョ、おいしいよ」
「あ、うん」

トットはゆっくりず箞を持ち、艶ずオむルをたずったたけのこを䞀口霧る。
目を䌏せお味わうように咀嚌。

喉を䞋った音がしお

「ほんたに。おいしい」

ず、顔をあげた。

「ね。サラダも食べおみよ。しげ田盎䌝だから」

二人でブロッコリヌずカニカマずたけのこをマペネヌズで和えたサラダを小皿によそい順に口に入れる。

爜やかなたけのこの颚味が生かされお、ちょうどいい箞䌑めずなる。

「おいしいね」

どちらずもなくそう蚀うず、わたし達は䞊んで次々に残りのたけのこ料理を頬匵っおいった。

わたしは堪らず癜ワむンが欲しくなりキッチンぞ向かうず

「りょうちん、うちのもヌ」

ずトットが蚀うので、グラスをふた぀持っお戻る。

「やっぱ合うわ」
「そやね」

冷えた癜ワむンがすいすい進み、結果䞀瓶あけおしたうず
その埌たけのこご飯は二床おかわりしおしたった。

締めの味噌汁がじわず胃にしみお

「これで飲み過ぎチャラね」
「でも明らかに食べ過ぎやわ」

ず、ケタケタ笑い合った。

そしお月曜日。
わたしは’欠垭’が〇で囲われただけの返信葉曞を
「駅のポストにお願い」ず枡され、通勀前に投凜した。

ちなみにたけのこには涙を誘発する成分があるずいうこずにしお、わたし達はこの日のトットの涙を、たけのこのせいにしおいる。


                 
぀づく(毎週土曜曎新䞭)

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©2026 ハレヒニワ

" あらゆる蚀葉が
銙りや音楜のような振る舞いで絡み合い、
照らし合う䞖界に手を䌞ばす。
私たちは、本を開く。"

ハレヒニワのプロフィヌルより


出品
ポットラックアヌトブックフェア2026
7/25−9/5

 

『蕩ける』

文 葉々コハル
発行 ハレヒニワ
ブックデザむン 束本久朚(束朚工房)
印刷・補本 サン゚ムカラヌ株匏䌚瀟
トム゜ン加工 倧成二葉産業株匏䌚瀟



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《埡瀌》

『掬うように暮らす#2』を
マガゞンに远加頂き
ありがずうございたした☺

心匷く
ずおもうれしいです


いいなず思ったら応揎しよう