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第4話:【IT環境】ソフトウェア対応とデータ連携── 審査対応を支えるデータ出力の技術

こんにちは。株式会社Arentです。
第3話では「入出力基準適合誓約書」の役割や、実務で気を付けたい「モデルと2D加筆の不整合」を防ぐ工夫を解説しました。

実務上の業務プロセスが見えてきたところで、次に向き合うのが「IT・システム環境」の整え方です。自社のBIMソフトをそのまま使えるのか、IFCデータをどう書き出すのが正解なのか、ArchSync(確認申請用CDE)にどんな環境で臨めばよいのか。

第4話では、主要BIMソフトの対応状況、IFC書き出しの要点、モデルチェッカーの運用、ArchSyncを介したデータ連携を、技術的な側面から紐解いていきます(記載内容は2026年5月時点のものです)。

1. 主要BIMソフトの対応状況

BIM図面審査への対応を考える際、最も多い疑問が「いま自社で導入しているツールで申請できるのか?」という点です。

結論から言うと、入出力基準は特定ソフトに依存しないオープンBIMの考え方をベースにしているため、主要BIMソフトの多くで対応可能です。ただし実際には、IFC変換設定や属性マッピングの調整、参考テンプレートの活用といった準備が運用上の鍵となります。

建築BIM推進会議の参考資料として、BLCJ(BIMライブラリ技術研究組合)が公開してきたサンプルモデルでも、以下のソフトウェアによる検証データが提供されています(BLCJは2026年3月末で解散しましたが、公式サイトは2029年3月末まで維持予定)。

  • 意匠:Revit、Archicad、Vectorworks、GLOOBE

  • 構造:Revit 、SS7

  • 設備:Revit、Rebro、CADWe’ll Tfas/Linx、CADEWA Smart、FILDER CeeD

重要なのは「どのソフトを使うか」ではなく、「入出力基準に沿ったデータを正しく出力できる設定(マッピング)になっているか」です。サンプルモデルは、本格運用前の書き出し検証用のテストデータとして活用できます。

各ベンダーからは入出力基準対応を明示した製品も登場しています。GLOOBE Architectは2026年4月リリースで「誓約書チェックリスト機能」を搭載、Archicadでも入出力基準への対応状況や検証結果が公開されています。自社ソフトの対応範囲は、各ベンダーの公開情報で確認するのが現実的です。

2. 中間フォーマット「IFC」の正しい書き出し設定

BIM図面審査では、設計者が作成したネイティブデータをそのまま出すのではなく、「IFC(Industry Foundation Classes)」という共通の中間フォーマットに変換して提出します。

第3話で「ArchSyncのビューワで意匠・構造・設備のモデルが原点からずれて表示されることがある」と触れましたが、こうした不具合のほとんどはIFCの書き出し設定に起因します。実務者が必ず押さえておくべき3つの要点を見ていきます。

① 座標系と原点(プロット)の一致

最もつまずきやすいのが、意匠・構造・設備で別々に作業している場合の原点ズレです。書き出し時の「プロジェクト原点」や「向き」の設定が分野間でわずかでも違うと、ArchSync上で重ね合わせた瞬間にモデルがバラバラに表示されてしまいます。

プロジェクトの初期段階で、チーム全体として「共通の基準点(座標)」を合意しておく。各分野はそれぞれのソフトの出力設定で必ずその基準点を指定してエクスポートする。この合意と運用の徹底が、CDE上での重ね合わせを成立させる前提になります。

② IFCバージョンの統一(IFC2x3 と IFC4)

BIM図面審査の運用資料では、提出するIFCデータのバージョンとして「IFC 2x3 Coordination View 2.0(通称 IFC2x3)」が標準的な提出形式として示されています。設備分野については、これに加えて「IFC2x3 設備IFCデータ利用標準Ver.1.3」を併用します。

一般的なBIM実務ではIFC4系への移行も進んでいますが、2026年5月時点では、BIM図面審査関連の運用においてはIFC2x3ベースの提出が中心となっています。プロジェクト内で分野ごとにバージョンや出力ビューが混在すると、属性情報の欠落や重ね合わせ時のエラーにつながります。提出するIFCのスキーマは、必ずプロジェクト内やBIM実行計画書で統一しておく必要があります。

③ プロパティセット(属性情報)の「マッピング」

2026年4月開始のBIM図面審査では、IFCデータは形状把握のための参考扱いで、IFC内の個別の属性項目までが入出力基準で直接規定されているわけではありません。ただし、2029年春に予定されるBIMデータ審査ではIFCデータそのものが審査対象となる方向で議論が進んでおり、IFCの属性をどう設計するかが将来の運用品質を左右します。

書き出し後のIFCで、壁が「IfcWall」として正しく認識されているか、部屋の名称や用途・防火区画の情報がオブジェクトに紐づいているか、といった点を整えておくことは、ArchSyncのビューワでの確認や社内の品質管理の観点でも重要です。ソフト標準の設定のままでは、こうした属性が空欄のまま出力されてしまうことも少なくありません。

各ソフトの「IFC翻訳設定(マッピングルール)」を自社のBIM運用ルールに合わせてチューニングしておくと、後工程が安定します。BLCJの公式サイトで公開されている各ソフトごとの「サンプルモデルパラメータに関する補足説明資料」を参照しながら設定を整えるのが現実的な近道です。

IFC書き出しを支える参考テンプレートの活用

これら3つの要点を、ソフトのデフォルト出力のまますべて満たすのは現実的ではありません。書き出し設定の整備を支援する仕組みとして、まず活用したいのがBLCJの公式サイトで公開されている「参考テンプレート」です。

Revit、Archicad、GLOOBE、Vectorworksの各ソフト向けに、入出力基準に沿ったBIMデータの作成と図面表示が行える作業環境のサンプルが無償公開されています。確認申請図作成の負担軽減、整合性確認の省略を求める項目への入力支援、個社テンプレート作成の参考例といった役割が想定されています。

大半のBIMソフトには標準でIFC 2x3形式の書き出し機能が備わっているため、参考テンプレートをベースに自社運用に合わせてカスタマイズするのが、書き出し体制を整える現実的なアプローチです。第3話で触れた「書き出し段階の体制」と「提出前の検証体制」の2段構えのうち、まず書き出し側のテンプレートを整えることが第一段階になります。

3. 自社内検証を自動化する「モデルチェッカー」の選定とルールセット運用

第3回で予告した通り、IFCの書き出し不備や属性のエラーを、目視だけでチェックするのは現実的ではありません。国の指定はありませんが、審査機関からの「受付不可」や「差し戻し」を減らす実務的な事前確認手段として、自社内での「モデルチェッカー」の活用が非常に有効です。

ここで押さえておきたいのが、モデルチェックには2つの段階があるという点です。

  1. ネイティブ環境でのチェック(書き出し前)
    RevitやArchicadなどのオーサリングツール側で行うチェック。各ソフトの干渉チェック機能や独自のチェックアドインで、書き出し前にモデル単独の品質を整えます。

  2. IFC変換後の横断チェック(書き出し後)
    複数分野のIFCデータを統合して行うチェック。意匠・構造・設備が別々のソフトで作成されている場合、最終的に審査機関側で見える姿は「IFC統合後の状態」であり、ここでの整合性を確認できるのは変換後のチェックに限られます。

ネイティブ側で「個別品質」を、IFC側で「統合品質」を、という二段階の運用が申請データの精度を支えます。本章では主に後者の「IFC変換後の横断チェック」を担うツールについて整理します。

ネイティブ環境のチェックツール例(書き出し前)

  • Autodesk Model Checker(Autodesk)
    Revitのライセンス保有者向けに無料提供されるアドインです。Revitモデルに対してルールベースの自動チェックを実行し、不適合箇所をレポート出力できます。多数のサンプルチェックセットが標準で含まれ、別途の「Model Checker Configurator」で独自ルールの構築も可能です。Revit環境を運用している事務所であれば導入しやすい選択肢です。

IFC統合後のチェックツール例(書き出し後)

  • Solibri(Nemetschek Group / 国内総代理店:グラフィソフトジャパン)
    データ検証で国際的に広く使われている世界水準のツールです。ルールベースの自動チェックに強みがあり、形状の干渉確認だけでなく、「特定の部屋に防火区画の属性が正しく入っているか」といった属性情報の整合性を論理的にチェックできます。

  • Navisworks(Autodesk)
    Revit環境との親和性が非常に高く、大規模3Dモデルの軽量表示と干渉チェック(Clash Detection)に強みを持ちます。Autodesk製品を多く保有する事務所・ゼネコンでは導入のハードルが低く、形状面のエラーを網羅的に洗い出すのに向いています。

成功を左右する「ルールセット」の運用

モデルチェッカーは導入するだけでは機能しません。ソフトに対して「何を基準に合格・不合格を判定するか」というルールセット(検証条件)を設定する必要があります。

現在のBIM図面審査(参考扱い)ではIFCの個別属性までを厳格に規定していないため、ルールセットには「自社のBIM運用ルール」や「2029年春に予定されるBIMデータ審査を見据えた品質管理ルール」を落とし込んでいくことになります。

【ルールセットの条件例】
部屋オブジェクトに「室名」や「用途」が漏れなく入力されているか
・「防火区画」の属性を持つ壁が、構造の梁下まで隙間なく到達しているか
・意匠・構造・設備のIFCを重ね合わせたときに座標がずれていないか

自社ルールセットを一度構築しておけば、社内のBIM運用品質を一定水準に揃えられ、提出前の不備検知や差し戻しリスクの低減につながります。最初の構築には手間がかかりますが、プロジェクトを重ねるほど効果が積み上がる投資であり、来たるべきBIMデータ審査への重要な助走にもなります。

なお、自社環境でのチェックに加え、ICBA(一般財団法人建築行政情報センター)が無料で提供する「IFCデータ表示確認サービス」も、提出前の表示確認手段として有用です。ArchSync上で審査機関がIFCデータをどう表示するかを、ICBA会員登録(無料)の上で事前に確認できます。

💡 テクノロジートレンド:AIを活用したモデルチェックの動向

ルールベースのモデルチェッカーと並行して広がりつつあるのが、AIを活用したBIMモデルチェックです。

Anthropic社が策定した「MCP(Model Context Protocol)」という仕組みを通じて、生成AIがRevitなどのBIMソフトと直接連携し、自然言語(普通の話し言葉)の指示で要素抽出や整合性チェックを実行できる事例が、海外の実務者を中心に登場しています。Autodeskも公式ブログでBIMデータとAIの自然言語連携を紹介しており、2026年4月リリースの『Revit 2027』には組み込みAIアシスタント「Autodesk Assistant」のほか、外部AIから読み取り接続できる公開MCPサーバーもTechnical Previewとして提供されています。

国の動きとしても、国土交通省の支援を受けて日本建築防災協会が2025年11月から「建築確認申請図書作成支援サービス」を無償提供しており(2026年7月末まで提供予定)、AIによる申請図書の事前チェックを後押ししています。BIMモデルそのものの審査ではありませんが、設計実務にAIを組み込む流れは確実に進んでいます。これからは「ルールベース」と「AIベース」を組み合わせ、申請データの品質を多角的に担保していく時代に入りつつあると言えそうです。

4. ArchSyncを介したデータ連携と運用上の留意点

データが正しく検証できたら、次は審査機関への届け方です。BIM図面審査では、CDE(共通データ環境)であるArchSyncを介して、設計者・協力事務所・審査機関が同じデータ基盤を参照しながらやり取りを進めます。ArchSyncは一般財団法人建築行政情報センター(ICBA)が運営するCDEで、重要な設計情報をクラウド上で扱う以上、利用にあたってはセキュリティと権限管理の運用ルールを社内で整えておく必要があります。

利用の基本構造と権限のしくみ
ArchSyncは、審査機関側が「サイト」と呼ばれる審査環境を保有し、案件ごとに「プロジェクト」「フォルダ」を構成して関係者を招待していく仕組みです。設計者側は、審査機関のサイト管理者から招待メールを受け取り、ユーザ登録を経て、指定範囲のフォルダにアクセスできるようになります。
ユーザ権限は、システム管理者・サイト管理者・プロジェクト管理者・一般

ユーザの順で範囲が定義されています。サイト管理者やプロジェクト管理者は基本的に審査機関側の役割であり、設計者は通常、招待された一般ユーザとしてファイル操作・アップロード・ダウンロード・閲覧・チャットを行います。CDE上の権限割り当ては審査機関側の運用に依る部分が大きく、設計者側は「招待された範囲内で動く」のが基本の立ち位置です。

裏返せば、関係のないプロジェクトの情報が見えてしまう事故は基本的に起きません。一方で、CDEのアクセス権を設計者側で自由に再配分できるわけではないため、「誰をArchSyncに招待してもらうか」「協力事務所をどの範囲まで関与させるか」は、申請開始前に審査機関と整理しておくべき論点です。

「審査員にまだ見せたくない途中のモデルが見えてしまう」「外部のパートナーが関係のない図面をダウンロードできてしまう」といった事故を防ぐため、フォルダの階層構造やステータス管理(「作成中」「共有」「公開」など)の運用ルールを、あらかじめ社内で標準化しておくことが重要です。

実務上の留意点

第4話で扱ったIT環境の整備において、現場で特に意識したいポイントは以下の通りです。

「使うソフトは何か」より「どう設定して書き出すか」を議論する

プロジェクト初期の打ち合わせで陥りがちなのが、「うちはRevitだから」「うちはArchicadだから」というソフト名ベースの議論です。BIM図面審査の文脈では、ソフトの違いよりも「同じ基準点・同じIFCスキーマ・同じプロパティマッピングで書き出せるか」が本質です。意匠・構造・設備の各担当に分かれた瞬間に出力設定が散らばらないよう、プロジェクトの最初に出力テンプレートを揃える時間を取ることをおすすめします。

まとめ

第4話では、BIM図面審査を支えるIT環境として、主要ソフトの対応、IFCの書き出し、モデルチェッカーの運用、ArchSyncを介したデータ連携について整理しました。鍵となるのは以下の4点です。

  • ソフトの対応
    主要ソフトはすべて対応可能。「出力設定(マッピング)」、参考テンプレートの活用。

  • IFCの設定
    座標の一致、バージョンの統一、プロパティ

  • ツールの運用
    モデルチェッカーによる自社内検証フローの定常化

  • 運用ルール整備
    審査機関主導の権限構造を踏まえた社内・パートナー間の運用ルール整備

一見すると難解なシステムや設定の話ですが、ここで挙げた要素は一度テンプレートや社内ルールを整えてしまえば、次のプロジェクトからは再現性をもってクリアできる領域です。BIM図面審査の運用を支える技術的な土台は、こうした地道な準備の積み重ねで作られていきます。

次回はいよいよ最終回(第5回)。
【展望】BIM審査の先にある未来と、今取り組むメリットをお届けします。

2029年春に開始予定とされる「BIMデータ審査」へのロードマップや、海外先行事例から見るデータ審査の方向性、そしてこの過渡期に早期から取り組むことの意味について、一歩先の視点で整理します。

私たち株式会社Arentは、建設DXのパートナーとして皆様の挑戦をサポートします。最終回の更新もお楽しみに!

※ 本記事の内容は2026年5月時点の公開情報および一般的な実務運用をもとに整理したものです。実際の運用要件や提出条件は、案件条件や審査機関ごとに異なる場合があります。


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