芋出し画像

゚ンドり豆の䞊に寝たお姫さた

嵐の吹き荒れる倜、お城の重厚な門を、誰かが激しく叩きたした。

ゎロゎロず雷鳎が蜟き、窓を打぀雚はたすたす激しさを増しおいたす。

こんな倜に、䞀䜓誰が蚪ねおきたのでしょう。

門番が恐る恐る扉を開けるず、そこに立っおいたのは、䞀人のお嬢様でした。

党身ずぶ濡れです。

矎しい金色の髪からは雚氎が滎り、立掟なドレスは泥だらけ。芋るからに、散々な目に遭っおきたのでしょう。

けれどお嬢様は、そんなこずなどたるで気にしおいたせんでした。

顎をすっず䞊げ、濡れたドレスの裟を぀たむず、門番を芋䞋ろしお蚀いたした。

「たあ、い぀たで立たせおおくお぀もりかしら 早く䞭ぞ通しなさいな」

門番がぜかんずしおいるず、お嬢様はさらに続けたした。

「いいこず わたくし、プリンセスですのよ」

そしお、扇をぱっず開きたした。

「わたくしず出䌚えたこず、光栄に思いなさい」

「おヌっほっほっほ」

お嬢様の高笑いが、嵐の倜のお城に高らかに響き枡りたした。

嵐の䞭を䞀人でやっお来た、ずぶ濡れのお嬢様。

泥だらけのドレスをものずもせず、この堂々たる立ち居振る舞いでございたす。

なんずいう自信。

なんずいう気品。

そしお、なんずいう圧倒的なお嬢様力でしょう。

これは、ただ者ではありたせん。

門番たちは顔を芋合わせたした。

そしお、ほどなくしお、この隒ぎを聞き぀けた王劃が姿を珟したした。

王劃はお嬢様を頭のおっぺんから぀た先たで眺めるず、思わず眉をひそめたした。

「  な、䜕かしら、この子は」

王劃は心の䞭で呟きたした。

雚に濡れお頭がおかしくなったのかしら。嵐の䞭を歩いおきたせいで、ずうずう正気を倱っおしたったのでは  

初察面の人間に察しお、いきなり「早く通しなさい」ず呜什する。

自分をプリンセスだず名乗る。

挙げ句の果おには、出䌚えたこずを光栄に思えずたで蚀う。

普通なら、呆れお远い返すずころでしょう。

  しかし。

王劃は、お嬢様をもう䞀床じっず芋぀めたした。

ずぶ濡れです。

泥だらけです。

それなのに、

この堂々たる態床。

王劃の目が、すっず现くなりたした。

え、埅っお

初察面の人間に、ここたで自然に我儘を蚀える  

しかも、たったく悪びれおいないわ  

王劃は静かに頷きたした。

「このわたくしが盎々に、『本物』かどうか芋極めお差し䞊げたしょう」

こうしお、王劃は䞀蚈を案じたのでした。



王劃が甚意させたのは、䞀぀のベッドでした。

ただし、普通のベッドではありたせん。

たず、床の䞊に、゚ンドり豆を䞀粒だけ眮きたす。

その䞊に、シ〇ンズの最高玚マットレスを――

十枚。

高玚ホテルなどでも知られる、蚀わずず知れたベッドブランド。

ポケットコむルによる独立した䜓圧分散。

身䜓の動きに合わせお支える、優れたフィット感。

長幎にわたっお培われおきた、眠りぞのこだわり。

䞀枚でも極䞊の眠りぞず導いおくれる最高玚の寝具。

それを、

十枚。

さらにその䞊には、倩然の銬毛ずシルクを莅沢に䜿甚したハス〇ンスの最高峰トッパヌを――

二十枚。

銬毛ならではの優れた通気性ず匟力性。

シルクのしなやかさ。

身䜓を支えながら湿気を逃がし、快適な睡眠環境を敎える、たさに寝具のための理想的な玠材です。

それを、

二十枚。

しかし、ただ終わりではありたせん。

その䞊にはさらに、アむスランドの厳しい自然環境の䞭で育たれた、最高玚アむダヌダりンを䜿甚した西〇の矜毛垃団を――

八枚。

アむダヌダりン。

厳しい寒冷地に生息するアむダヌダックの巣から採取される、垌少な矜毛です。

その軜さ、保枩性、垌少性から、矜毛の王様ずも称される最高玚玠材。

それを、

八枚。

そしお仕䞊げ。

繊維の宝石ずも称されるカシミダ。

その最高峰ずもいえるロロ・ピアヌ〇のピュアカシミダ毛垃を――

䞃枚。

なめらかな肌觊り。

卓越した保枩性。

そしお、遞び抜かれた玠材だけが持぀圧倒的なラグゞュアリヌ。

たさに身䜓を包み蟌むための芞術品です。

それを、

䞃枚。

最埌に枕蟺ぞ、テンピュ〇ヌルの高玚枕を䞀぀。

人間工孊に基づいた蚭蚈。

理想的な䜓圧分散。

頭郚ず銖をやさしく支える、卓越したフィット感。

か぀お宇宙飛行士のための研究から生たれた技術が、今宵、䞀人のお嬢様の眠りを支えるのでございたす。

こうしお積み重ねられた寝具は、党郚で――

四十五枚。

それは、郚屋の䞭にそびえ立぀巚倧な塔でございたした。

王劃は満足そうに頷きたした。

「これなら、さすがに゚ンドり豆など感じるはずがないでしょう」

お嬢様は、そびえ立぀寝具の塔を芋䞊げたした。

「ずいぶんず颚通しの良さそうな高さですこず」

お嬢様は優雅に扇を閉じたした。

「わたくしのような高貎な者を迎えるのであれば、これくらいの準備は圓然ですわね」

そう蚀うず、お嬢様は梯子を䜿っお、その塔を登り始めたした。

やがおお嬢様はその頂ぞずたどり着くず、そこに眮かれた最高玚の枕ぞ頭を預け、静かに目を閉じたした。



翌朝。

食堂ぞ珟れたお嬢様の目の䞋には、深いクマ。

矎しく巻かれおいた髪は少し乱れ、足取りもふらふら。

今にも倒れそうです。

それでも、高貎なご尊顔だけは本日も煌びやかで、䞀倜の疲れを感じさせながらも、その矎しさには䞀片の曇りもございたせんでした。

王劃は、少し意地悪そうに尋ねたす。

「たあ。よく眠れたかしら」

お嬢様はゆっくり顔を䞊げたした。

そしお、乱れた髪をバサッずかき䞊げたす。

「  䜕をおっしゃいたすの」

「あんな倧理石の床のようなベッド、お話になりたせんわ」

「絶察に底にルビヌかサファむアか、䜕か仕蟌たれおいたしたわよ」

「おかげでわたくしの囜宝玚の矎肌はアザだらけ」

「䞀睡もできたせんでしたわ」

お嬢様は優雅に垭ぞ腰を䞋ろしたした。

「たったく、このお城の管理はどうなっおいるのかしら」

そしお、䟍埓長ぞ向かっお蚀いたした。

「ちょっず、䟍埓長」

「今すぐ、このベッドの補造元をここぞ連れおきなさい」

「それから――」

お嬢様は優雅にカップを持ち䞊げたした。

「  このお玅茶」

䞀口。

お嬢様の眉が、ぎくりず動きたした。

「0.5床ぬるいですわ」

「枩め盎しおきなさい」

その様子を䞀郚始終芋おいた王劃は、確信したした。

「  間違いないわ」

「この息をするように自然な我儘」

「枅々しいほどの傲慢さ」

「圓然のように他人ぞ呜じる、その揺るぎない粟神」

王劃は䞡手を広げお宣蚀したした。

「これぞ本物のプリンセスよ」

なんずいうこずでしょう。

最高玚寝具を四十五枚も重ねたにもかかわらず、その䞋に隠された䞀粒の゚ンドり豆を芋事に感じ取ったのでございたす。

これはたさに、最高玚の寝具をもっおしおも隠しきれなかった、類たれなる繊现さ。

珟代の睡眠科孊をもっおしおも再珟できない、王族だけに蚱された究極の感性。

そしお、この圧倒的なお嬢様力。

王劃は倧喜びしたした。



その日からお嬢様は、正匏に本物の王女ずしお認められ、最高玚の囜賓ずしお迎え入れられたのでございたす。

゚ンドり豆は囜の宝物ずしお倧切に保存されたした。

そしお本物のプリンセスずなったお嬢様は、その埌もお城の者たちを四六時䞭振り回しながら、どこたでも優雅に、そしお高らかに笑い続けたのでした。

「おヌっほっほっほ」

なんず気高く、なんず矎しく、なんず尊いお姫様なのでしょう。

その繊现なお肌。

その揺るぎない自尊心。

その劥協を蚱さぬ矎意識。

そしお、䜕よりも――

圧倒的なお嬢様力。

これぞ本物のプリンセス。

これぞ、真のお姫様なのでございたす。

なんずめでたく、

そしお茝かしい結末でございたしょう。


同時代評

1836幎、『Dannora』掲茉の匿名評。『Prindsessen paa Ærten』に぀いお、高貎な女性は「ひどく繊现な肌をしおいる」ずいう考えを子どもに怍え付けかねないずしお批刀しおいる。


いいなず思ったら応揎しよう