フジオフードと物語コーポに見る中小の生存戦略
大企業は赤字でも潰れない。中小は同じ失敗で即終わる
8月10日、「まいどおおきに食堂」「串家物語」などを展開するフジオフードグループ本社が、2026年12月期中間決算を発表した。売上高は159億円で前年並み(1.6%増)。でも、営業利益は6,000万円で前年比76.5%減、最終損益は1億円の赤字に転落した。
同じ日に発表された物語コーポレーション(焼肉きんぐ・ゆず庵・丸源ラーメン)は、純利益87億円を維持する見通しを出している。
同じ外食大手、同じ時期の決算。片方は黒字を守り、片方は赤字に転落した。この差がどこから来ているのか、そして何より、これを見た中小の自分たちは、何を学ぶべきかを今日は書きたい。
2社の戦略は、思想からして違う
フジオフードは、自らを「食のよろず屋」と呼んできた会社だ。「まいどおおきに食堂」「串家物語」「つるまる」「さち福や」「天麩羅えびのや」など、15以上のブランドを同時に抱えている。特定の業態にこだわらず、柔軟に手を広げてきたことが、これまでの成長の原動力だった。
一方の物語コーポレーションは、焼肉きんぐ・ゆず庵という少数のブランドに絞り込み、そこに配膳ロボット・食材の自動搬送レーン・牛肉などの一括仕入れという、仕組みへの投資を集中させている。
「広く手を伸ばす」フジオフードと、「絞って仕組み化する」物語コーポレーション。FとLが同時に高騰するこの数年、この差が、そのまま決算の明暗になって表れたんだと思う。
なぜフジオフードは、変われなかったのか
正直に言うと、内部の意思決定の詳細までは分からない。ただ、フジオフード自身のIR資料には、以前から「原材料費の高騰や人件費の上昇を価格に反映した影響で、客数が一時軟調となった」という記述がある。コストが上がれば価格に転嫁する、という対応は、何年も前からずっと同じだったということだ。
ブランドを増やし続けてきたやり方、価格転嫁で乗り切るやり方。これまでうまくいっていた分だけ、それを疑う理由がなかったのかもしれない。「今までこうやってきたから」で走り続けた結果、FとLが同時に締め付けてくるこの数年に、仕組みを変えるタイミングを逃した、というのが一番近い見立てだと思う。
ここからが、今日一番言いたいことだ
フジオフードは、赤字1億円でも会社として潰れない。東証プライム上場企業で、増資での資金調達もできるし、内部留保もある。今回の赤字も、いずれ立て直す時間と体力がある。
でも、これが自分たち中小だったら、話は全然違う。同じ「客数はそこそこ維持できているのに、人件費と家賃で利益が消える」という状態になったら、中小には赤字を1年耐える体力なんてない。即、廃業だ。
大企業の失敗は、ニュースになって、また立て直しのチャンスがある。中小の失敗は、静かに閉店して、二度とニュースにすらならない。この差を、甘く見てはいけないと思う。
中小がやるべきことは、この2つだと思う
①手を広げない。絞る。 フジオフードのように、ブランドや業態を広げる余力は、中小にはそもそもない。であれば、今ある1つの武器(看板メニュー、立地、常連客)に、絞って磨き込む方向しかない。物語コーポレーションのような大規模な自動化投資はできなくても、「絞って集中する」という発想そのものは、規模を問わず真似できる。
②数字を、感覚じゃなく毎月見る。 フジオフードは、上場企業だからこそ、四半期ごとに数字が強制的に公開され、外部からもチェックされる。中小にはその強制力がない。FL比率を、毎月自分の手で計算する習慣を持たない限り、「なんとなく苦しい」で半年、1年が過ぎてしまう。気づいたときには、大企業のように立て直す時間は残っていない。
大企業の決算は、遠い世界の数字に見えるかもしれない。でも、フジオフードとて何十年もかけて300億円規模まで育て上げた会社が、今、赤字に足を踏み入れている。同じ判断の遅れを、体力のない中小がやったらどうなるか。その想像力だけは、絶対に手放してはいけないと思う。

