英語フレーズの記録No.9 カズオ・イシグロ『わたしたちが孤児だったころ』
数あるnoteの中から、こちらをご覧いただきありがとうございます。
カズオ・イシグロさんの『わたしたちが孤児だったころ(When We Were Orphans)』を読み進めながら、気になった英語フレーズを紹介していきたいと思います。
※物語の一部に触れていますので、未読の方はご注意ください。
今日は、この作品で気になった英語フレーズを2つご紹介します。
Fuelled by this anger, I was at last able to tear myself away from Osbourne.
「この怒りに突き動かされて、 僕はやっとオズボーンから離れることができた。」
《場面説明》
主人公クリストファー・バンクスは、昔の学友ジェームズ・オズボーンに誘われて夜のパーティーにやって来ます。ところが、実際に混雑したパーティー会場に足を踏み入れてみると、その日の午後に想像していた雰囲気とはあまりにも違っていて、興奮していた自分がばかばかしく思えるほどでした。そして苛立ちながらも、バンクスは30分ほどオズボーンのそばをどうしても離れられずにいました。
バンクスは、場の気まずさにすっかり固まってしまい、グラスをちびちび飲んで時間をつぶしていた一方で、オズボーンは30歳ほど年上のゲストたちと次々と楽しげに話していました。
しばらくすると、バンクスは自分にも、オズボーンにも、この場の成り行き全体にも次第に苛立ちが募っていきました。周囲の人間を軽蔑して当然だとさえ思ったのです。彼らの大半は欲深く自己中心的で、理想や公的な責任感などまるで持ち合わせていないように見えました。
「その怒りに突き動かされ、バンクスはようやくオズボーンから離れることができた。」今日の引用文は、そんな場面を描いています。
🌀今日の英語フレーズ
① fuelには、名詞と動詞があります。
【名詞】:燃料/行動の原動力
【動詞】:燃料を供給する/感情や行動をあおる
例文:
【名詞】
・物理的な「燃料」
Many countries are trying to reduce their dependence on fossil fuel.
(多くの国が化石燃料への依存を減らそうとしている。)
・抽象的な「行動の原動力」
A single question became the fuel for his lifelong research.
(ひとつの疑問が、彼の生涯の研究を支える原動力になった。)
【動詞】
・物理的な「燃料を補給する」
They fuelled the truck before starting the long journey.
(長旅に出る前に、彼らはトラックに燃料を補給した。)
・比ゆ的な「感情や行動をあおる・勢いづける」
Social media posts fuelled the debate.
(SNSの投稿が議論をさらに勢いづけた。)
今回の引用文で使われている fuelled は、動詞 fuel の過去分詞で、
「〜によってあおられて」「〜に突き動かされて」という意味を持っています。
アメリカ英語ですと、fuelの過去形はfueledですが、こちらの作品はイギリス英語で書かれているため、fuelledとなっています。
文頭の Fuelled by this anger は分詞構文で、接続詞・主語・be動詞が省略された形になっています。 本来の形は As I was fuelled by this anger(僕はこの怒りにあおられて)となります。
抽象的な fuel は、感情・思考・創作意欲・行動・社会的な動きなど、目に見えない「心のエネルギー」を表すときに使える単語です。
文学作品では、人物の内側で『何が燃えているのか』、心理の動きを描くために効果的に使われるようです。
② tear oneself away from ~
「(心残りや心理的抵抗がある中で)~から離れる」というニュアンスを持つ表現です。
ここでの tear は「引き裂く」という意味で、“離れがたい状態から自分を引きはがす” という比ゆ的な感覚を表します。
今回の引用文では、「バンクスは離れたいのに離れられなかったが、ようやくその場を離れた」 という意味になります。
例文:
・離れたいのに離れられない場合
She tore herself away from the group, even though she felt too nervous to move.
(彼女は緊張で動けなかったが、ようやくそのグループから離れた。)
・状況が自分を縛っている場合
He tore herself away from his desk after hours of work.
(彼は何時間も仕事に縛られていた机から、ようやく離れた。)
・感情的な葛藤がある場合
I tore myself away from the memory and tried to focus on studying.
(私はその記憶から自分を引きはがすようにして、勉強に集中しようとした。)
今回の場面で出てくる「パーティー会場となった部屋」ですが、原文では“the crowded room on the first floor”とあります。
日本語版「わたしたちが孤児だったころ」(カズオ・イシグロ/入江真佐子訳 早川書房)では「二階の混雑した部屋」と訳されていました。
最初見た時、「ん?」と思ったのですが、イギリスでは
一階のことをground floor(地面に接している階)
二階のことをthe first floor
というのを学校で習ったことを思い出しました🤣
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました☺️
