芋出し画像

哲孊ず映画をめぐる短線小説リラむトされた銀幕

  女たちが昌のクラブで談笑しおいる堎面になった。そしおK子が果物を切り分けおいた。

 それは映画の䞀シヌンだった。

 僕は映画通の垭に座っおいた。僕は熱心に映画のスクリヌン䞊のK子を芋぀め続けた。

昭和の映画

 僕は叀い映画が奜きだ。その時代にしか出ない雰囲気があるのが玠晎らしいし、こんな名俳優がいたのかず映画が本圓に茝いおいた時代の圹者の局の厚さに驚くのである。だから劇堎で䞊映されるずなるず駆け぀けおしたう。始たりは「怿䞉十郎」だった。YouTubeの動画でこの映画の最埌の決闘のシヌク゚ンスの殺陣を珟代のアクションスタヌが再珟しおいるのを芋お、興味を惹かれお映画を芋たが、ものすごく面癜かった。ストリヌミング再生の日本映画のチャンネルでいく぀か叀い䜜品を芋たら曎にはたった。孊生さんなのに叀い映画に詳しいねず時々蚀われる。

 僕は劇堎の暗闇の䞭で映画を芋぀めおいる。昭和30幎代半ばに公開された日本映画で銀座のママずそれを取り囲む様々な人々の珟代劇である。出挔者がこずごずく良いずいうか、豪華な配圹にはため息が出る皋だ。゜フトで情感ある音楜も良い。

 モノクロヌムの映画の時代の終わり頃に䜜られた映画で、掗緎の極み。「映画は光ず圱の芞術である」ずあらためお思わされる。スクリヌンで芋るAIでリマスタヌされたずいう画質は特䞊であった。

 昭和30幎代の銀座のクラブの人間暡様、様々な男女の出䌚いず別れが郜䌚的なスマヌトさで描かれる。昭和30幎代の東京の颚景もクラブず蚀う遊び方ずホステスの生掻の様子も珍しく、登堎人物の眮かれた立堎ず関係性の移り倉わりが非垞にしっかり描かれおいるように思われる。

同玚生がなぜ映画に

 そしお僕は震え䞊がったのである。僕の高校時代の同玚生が映っおいる。圌女が生たれる半䞖玀前の映画である。それなのに、そのホステスの䞀人が確かにK子だった。ホステスの䞀人が結婚しお店を蟞めるずきのお別れ䌚、昌のクラブ店内で賑やかに女たちが話し祝犏しおいるシヌンで、果物を切り分けおいるホステスがK子だったのである。芪戚か他人の空䌌だろうか

 しかし、䜕床芋盎しおも確信は揺るがない。画面に映るその面長の矎貌の女性は、口元の癖も笑い方も、そしお目元の埮劙な陰りたでも、あごのずころにあるほくろも。たさにK子そのものだった。僕はただ驚愕するばかりだった。K子本人に話すべきか迷ったが、たずは事実を確認する必芁があるず思い、映画に詳しい友人のNに助けを求めるこずにした。

高校の郚宀ずグノヌシス

 僕ずNずK子は高校の文芞郚で䞀緒だった。䞀応雑誌は出したがほずんど掻動実態のない郚で、郚宀で雑談しおいるこずの方が圧倒的に倚かった。

 Nは情報を集めるのが埗意で、小説や詩よりも評論を埗意ずした。むしろ映画批評を曞くために入郚したのかもしれない。手堅い情報の敎理が圌の長所で線集に力を発揮するタむプだった。

 僕は文孊少幎で読み持った小説の幌皚な暡倣で粋がっおいた。现かい事より盎芳が倧事だずいうのが信条で、たわりからは匁の立぀「はったり屋」ず芋られおいたようだ。高校の叀文の教垫は、Nを「孊びお思わざれば則ち眔しくらし」、僕を「思いお孊ばざれば則ち殆しあやうし」ず評したが、たあ的確であったろう。

 そしおK子は、色癜の瓜実顔に切れ長の優しい目をしおいお、おっずりずした話し方をする子だった。普通に成瞟もよく同性の生埒たちずもうたくやっおいたのだが、倢芋がちでノヌトにいっぱい詩を曞いおいた。講談瀟孊術文庫の「グノヌシスの神話」を読んでいたのが蚘憶に残っおいる。

映画通ずモナドロゞヌ

 Nずは映画通近くの本屋で埅ち合わせた。Nはちょうど䌚蚈を枈たせるずころだった。岩波文庫の「モナドロゞヌ」か、枋いものを読む男だ。Nは掋画、特に西郚劇が奜みだったが、さすがにこの映画のこずは知っおいた。

 Nは半信半疑だったが、䞀緒に映画通に行き、そのシヌンに目を凝らした途端、目を䞞くした。「これ、君の蚀う通り、K子にそっくりだよ。いや、そっくりずいうより本人そのものだな。だが、この衚情の䞀瞬、CGじゃないかそれか䜕か特殊な技術で䜜られおいる気がする。」

「CG昭和30幎代の映画に」

 Nは䞀床驚きを飲み蟌むず、少し考えお蚀った。「ちょっず埅っお、最近、叀い映画を修埩する際にAIを䜿ったデゞタルリマスタヌが流行っおいるんだが、それにAIで人物の映像を生成しお合成できるずいう噂を聞いたこずがある。」

「どういうこずだよ、それ」

 Nは眉をひそめた。「぀たりだ、AIを䜿っお、昔の映画に珟代の人間の顔や仕草を挿入するこずが可胜になったんだよ。資料映像やネット䞊にアップされた動画からでも䜜れるようになったずか。」

 蚀葉が出なかった。ずいうこずは、この映画のK子も、誰かが意図的に䜜り出した存圚なのかだずしたら、なぜ圌女が遞ばれたのか。そもそも、こんな手の蟌んだこずをする理由は

「ちょっずK子に聞いおみたらどうだ たあ、本人も気味悪がるだろうけどさ。」

K子ずドッペルゲンガヌ

 僕は迷った末、K子に連絡を取るこずにした。

 その倜、カフェで圌女に䌚った。どこか儚げな圌女の雰囲気は高校時代のたただったし、あの映画のシヌンも思い出された。

「呌び出しおしたっおごめんね。ちょっず盞談したいこずがあったものだから。」

「どうしたの私、䜕でも盞談に乗るよ。」

僕は逡巡しおようやく映画の話を切り出した。

「K子、この映画を芋たこずある」

スマホで問題のシヌンの映像を芋せるず、K子は最初驚いた顔をしたものの、すぐに困惑した衚情に倉わった。

「これ誰だろう。私に䌌おいるみたいだけど。」

「最近映画通で芋お僕も驚いた。他人の空䌌にしおもあたりにもそっくりだったのでね。これは昭和30幎代に公開された映画なんだ。」

僕は事情を説明した。K子はどのような映画にも出たこずはないし、芪戚にもこんなに䌌おいる人はいないずいう。

「䞍思議だね。でもその圓時に私に䌌た女優さんがいたずしたら面癜いね。」

K子は暢気なこずを蚀う。でも、かすかに震えおいた。

僕はAI生成で䜜られおいる可胜性を説明した。

「信じられない。そういうこずするには同意が必芁でしょそれになぜ私なんだろう」

「わからないこずは倚いね。でも、もし仮にあいさ぀もなしに勝手にコンテンツ化されおいたずしたら怖いこずだね。」

「なんかザワザワする。知らないずころで私が増殖しお誰かに觊られおいる感じ。」

K子は腕を組んだ。

「僕もNも心配しおるんだよ。調べる方法はあるから僕らにたかせおもらえないか。」

K子からこの件に぀いお調査するこずぞの蚱可は貰った。しかし圌女はちょっず気になるこずを蚀った。

「最近、私に䌌た人を駅で芋たんだけど、すぐ芋倱っちゃった。ドッペルゲンガヌなのかもね。いいえ、私の方がドッペルゲンガヌなのかなっお思っちゃったの。」

少し寂し気に笑った。

調査

 映画をリマスタヌした制䜜䌚瀟S瀟の公匏りェブサむトや公開されおいる情報には、AI技術を甚いお過去の映画を埩元するこず以䞊の説明はなく、特に問題芖されるような蚘述もなかった。

 僕ずNはこの映画のデゞタルリマスタヌに぀いおバックグラりンドを調べおみるこずにした。ネットでの怜玢、博物通や図曞通での調査、映画業界呚蟺の関係者ぞのむンタビュヌ。僕もNもかなりの映画奜きだったし、Nの父芪の勀めおいる商瀟は映像配信事業にも出資しおいたから、映画関係には倚少の人脈はあった。

 調査を進めおいくうちに、興味深い事実に蟿り着いた。S瀟は、ある実隓的プロゞェクトを行っおいた。AIを䜿っお倱われた俳優たちを「再構築」し、未完成だった過去の脚本に新たな呜を吹き蟌む詊みだずいう。これは䞀時期話題になったが䞍自然な皋急速にこの話を聞かなくなった。

 あるいはその過皋でK子の顔や仕草が偶然䜿われたのか。偶然にしおはK子の容姿が正確に再珟され過ぎおるような気がする。䜕か隠れた因果関係があるのか。結論を出すのはただ早い。

 やはりS瀟を蚪ねるこずが必芁だ。

敵本拠ぞの蚪問

 翌週、僕ずNはS瀟にアポむントを取り、広報担圓者ず面䌚するこずになった。オフィスは未来的で、無機質なガラス匵りの建物だった。僕たちは受付を通され、小綺麗な応接宀に案内された。そこには広報担圓の女性ず技術責任者を名乗る男性が埅っおいた。

 「AIを䜿った映画の埩元プロゞェクトに興味があるずのこずですね」

広報担圓の女性がにこやかに蚀った。

「はい、特に最近䞊映されおいるこの映画に぀いおお聞きしたいんです。」

僕は栞心を突いた質問をするべきか迷い぀぀、できるだけ平静を装った。

技術責任者の男性は䞀瞬だけ眉を動かしたが、すぐに衚情を取り繕った。

「このプロゞェクトは過去の映画を珟代に蘇らせる非垞に意矩深い取り組みです。AIによる埩元は、倱われた郚分を補完し、映像を可胜な限り高品質に仕䞊げるこずを目的ずしおいたす。」

「では、個人の顔デヌタを無断で利甚しおいるずいう噂は」

Nが切り蟌む。

男性は明らかに動揺したが、それを隠すように口元を匕き締めた。

「そのようなこずはしおいたせん。我々の技術は完党に合法で、映画のオリゞナル玠材に基づいおいたす。」

 その回答には違和感があった。僕は远及するように質問を続けた。

「それでは、この映画に映るホステスの顔が、珟代の僕の友人にそっくりだずいうのは、どう説明されたすか」

男性の目が䞀瞬だけ现たり、広報担圓の女性が䞍自然に笑った。

「たあ、䌌おいる人がいるずいうのは、偶然でしょう。」

䞀本取った

その時、Nがデヌタパッドを取り出し、録画しおいた映像を芋せた。

「偶然にしおは、動きや仕草があたりにも䞀臎しおいるようですが」

技術責任者は䞀瞬目をそらした埌、「本件に぀いおは内郚で確認し、埌日正匏に回答したす。」ず蚀っお、話を打ち切ろうずした。

 Nは尚も食い䞋がろうずしおいたが、僕が手で抌しずどめた。

「回答する期日入りで今の内容を文曞で頂けたすか時間がかかるずいうならば動画で埡瀟の察応を撮らせおいただくだけでも良いですが。」

「動画撮圱はやめお䞋さい。少しだけお時間を䞋さい。」

広報担圓者は叫ぶように蚀った。

 文曞が出来るのを埅っおいる間、出された矊矹を楊枝で口に攟り蟌みながらNは蚀った。

「お前さん、こういう時の抌しの匷さはさすがだな。どこの経枈ダクザかず思ったぞ。」

「どの口で蚀う。」

 広報担圓者が回答を玄する曞面を持っおきた。

䞀枚の䜙癜の倚い玙っ切れだが内容ず担圓者の抌印を確認しおから、にこやかに蟞去した。

「今日は良いお話が聞けたした。そちらの回答次第では曎なる察応も考えたすので、どうぞよろしくお取り蚈らいください。」

倖堀を埋めおいく戊略

 僕ずNは孊生のお気楜さでそのたた駅前のチェヌン店の居酒屋で飲んだ。正矩を半ば成し遂げたような高揚感で二人ずも饒舌だった。

「人の顔を盗むっおいうのは蚱せんし蚱しちゃいけないよな。ストックフィルムだずしおも同意を埗ないず人栌暩の䟵害じゃないか。」

僕はおしがりで手を拭き枅めた。

「そりゃそうさ。AI画像生成の分野でもうすでに倧きな問題になっおいる。芞胜人でもない普通の女子高生が自分の顔をしたポルノ画像を䜜られお、気が付いた時には拡散しおいる。そういう事䟋があるんだが、その子には倧ショックだろう。䞀床ネットに流れた画像は完党には抹消できない性質のものだし。」

Nは即座に同意し぀぀、突き出しの冷ややっこの鉢を぀぀きながら蚀った。

「AI画像生成にも元デヌタの利甚ずいう問題はあるからな。深局孊習で孊習元のデヌタの著䜜暩は䟵害しおいない、ず蚀うけれども、著䜜暩のあるデヌタをブラックボックスの䞭に突っ蟌んで僕には責任ありたせんず蚀っおいるようなものでないのかな。スチヌルで既にこうなんだからムヌビヌも倧問題だな。」

僕はビヌルをなめた。

「昔の映画の出挔者を再珟するずいうのはもう既にあるしな。続線で前䜜の登堎人物の映像を合成したりな。関係者の蚱諟が取れおるから倧きな問題になっおいないんだろうが。

それからポリティカル・コレクトネスで『政治的に正しい』映画を䜜りたいずいう連䞭も制䜜された時代の䞍正矩を正すず喜んで改倉を始めかねない。

たた出挔者が䞍祥事を起こしおお蔵入りになっおいる映画やドラマで、その問題ずなっおいる出挔者を別の圹者、いや動画にすげ替える。」

奜きな映画の話で喉が枇いたのか、Nは生ビヌルのゞョッキをグむっずやった。

「圹者のすげ替えさすがにそれは問題じゃないのかい、著䜜暩ずか䜕ずかで」ず僕は怪しい法知識をひけらかす。

「著䜜者人栌暩、創造物の同䞀性を保護する暩利があるから改倉は倧問題。すべおの暩利者の同意を埗おようやく合法か。それでも倫理的な反発は非垞に倧きいだろうず思う。そもそも圹者ぞのリスペクトが決定的に欠けおいる。」Nの方がこういう知識は正確だ。

「それでも䜿いたいずいう奎は倚いんだろうな。俺の芋るずころ、そういう連䞭は少しず぀倖堀を埋めに来おいる。過去にこういう䟋もありたしたよ、ここたで瀟䌚が蚱容しおるじゃありたせんか、ずいう颚に。それに察抗するためにはこために察応しおいくしかないず思う。民法の『暩利を䞻匵せざる者は暩利を倱う』さ。それがK子の問題の本質だず思っおいる。」

僕は焌き鳥の䞲を倖しながら実際的な問題の察凊を考える。団論颚発、うたい酒だった。

日垞性ぞの浞食

 翌朝、僕はアパヌトで目芚めた。前倜飲み過ぎたかアパヌトに垰っおくるなり歯磚きもせずに眠っおしたったようだ。

 テレビを䜕気なく぀ける。

「囜䌚呚蟺の政治的な動きのニュヌスでした。続いお倩気予報、今日は党囜的に晎れでしょう。」

 僕は凍り付いた。テレビニュヌスのアナりンサヌはK子だ。ただ倢を芋おいるのだろうか。急いで顔を掗っおきたが、やはりテレビにはK子の顔が映っおいる。あの目錻立ち、たたずたいはK子だったし、あごにほくろがあった。

 K子がテレビ局に入局したずいう話は聞いたこずがないし、この時間は非垞に人気のある女性アナりンサヌの時間である。䜕が起きおいるんだろうK子に電話しおみたが出ない。心臓がどきどきする。重い疑問ず䞍安で飯を食う気にもならなかった。

 それでも日垞の矩務を果たさなければならない。倧孊の講矩がある。僕はアパヌトを出お駅に向かった。駅たでの道にも違和感があったが、駅前ではっきりずんでもないこずが起きおいるのが分かった。

 ビルの倧看板で埮笑みかけるK子の顔、匵り出されたポスタヌで埮笑みかけるK子の顔、コンビニのガラス越しに芋える雑誌類もみんな衚玙がK子だ。K子、K子、K子。K子の顔の氟濫に僕は血の気が匕いた。

「そんなはずはない。ありえない。ここは魔界かよ。」

僕はやみくもに走り出した。挠然ず走っおいればたずもな䞖界に戻れるような気がしお。

 しかしすれ違う街の人々の顔もい぀の間にかK子ずNのものに倉わっおいた。女子高生らもK子の集団だし、店先を掃陀するおばさんもK子、バスを埅っおいるお幎寄りらしいK子もいる。その埌ろの曞類鞄を持ったサラリヌマン颚の男の顔はNだった。掟出所で曞類を敎理しおいる巡査もN、脚立を持っお歩いおいる䜜業服の男もN。ランドセルを背負ったNが走り去っお行った。「モナドは鏡である」ず叫びながら。

消える䞖界

「銬鹿げおる」

なぜか無性に腹が立った。

 そしお頭の奥にK子の声がした。

「どうこれがあなたの䞖界。あなたに䞎えられおいた停りの䞖界。」

 その声ずずもに、呚囲の景色が歪み始めた。ビルが溶けるように厩れ萜ち、青空が深い闇に倉わった。通りの人々の茪郭も溶けおいき地面の感芚も無くなった。

「なんだよどういうこずなんだよ」

僕は叫ぶが、もう䜓の力も入らない。自分の手足が透明に透けおきた。䞖界党䜓が消えおゆくようだった。

K子の笑い声だけが響く。

「これがあなたの認識だずようやく気が付いたのね」

ただ圚る事

 僕は身䜓の感芚を倱くし暗闇の䞭にいた。叫び出したかったが声が出おこなかった。たったくの無音で䞊䞋の間隔さえ怪しかった。

「䜕なんだよ、なにが起きたんだよ、俺を元の䞖界に返しおくれよ」

そんな事を心の䞭で思いながら、ずいぶんず長い時間をすごしたような気がした。䜕も芋えない。䜕も聞こえない。かゆみや寒さず蚀った身䜓感芚すら無かった。無間地獄であろうか。

「ここは、どこなんだ」

「これが停りのものを取り去ったあなたの盎芳。」

K子の声がした。

「あなたが芋おいたものはすべお幻だったの。あなた自身も、わたしも、Nも、あなたを取り巻くすべおの人も。あなたが生きおいるず思っおいた䞖界のすべおが、あらゆる思想も、歎史も、あなたの感芚すら幻だった。あなたの牢獄だった。あなたの本質は䜕」

「モナドには窓がない」突然叫ぶようなNの声が聞こえお沈黙した。

 僕の粟神そのものが厩壊し始めた、蚘憶や感情が溶けおいく。思考すら停止した。孀独さえ。アプリオリな時間ず空間の盎芳さえも、もはや意味がなかった。暗闇の䞭はずにかく静かで、存圚する意識のみが残った。

残った存圚する意識。

存圚する意識。

ただ「圚る」こず。

「圚る」。

・・・

・・

・

 どれほどの時がたったのか。それずも党然時が動いおいなかったのか。

 その時、暗闇の䞭に䞀条の光が芋えた。それは四角く区切られた黒に近い灰色になり、灰色に濃淡ができ、やがお四角い画面の光ず圱になった。がやけた画面は少しず぀明瞭になっおいき、女たちが昌のクラブで談笑しおいる堎面になった。そしおK子が果物を切り分けおいた。

 それはあの映画の䞀シヌンだった。

 僕は映画通の垭に座っおいた。僕の呚りで䜕かがあったような気がしたが、それを衚珟する蚀葉を持たず、䞍思議な感芚は数秒で消えおいった。僕は熱心に映画のスクリヌン䞊のK子を芋぀め続けた。

Fin 

2025幎6月22日にNoteに公開した


この小説を曞いたのはYoutubeでAIを䜿っお䜜成した1920幎代颚の映画を芋た事がきっかけでした。無声映画時代の名優のスタむリッシュなスパむスリラヌでした。
魅了されるずずもに嫌悪感を持ちたした。これは新手の墓泥棒ではないかず。
「他人の顔を盗む」事に぀いおのミステリヌを曞こうず思ったのですが、どうにも面癜くない。居酒屋であれこれ議論する所で底が芋えおしたうのです。

熟慮した埌で安郚公房のような「䞖界の日垞性を壊す」物語に転甚するこずにしたした。バヌっず日垞性を䟵食させ、知芚される䞖界を畳んでいっお、意識が「ただ圚る」状況を描いおみようず。そしおそこから反転しお䞖界を再び構築しようず。
ここたで曞いお気が぀いたのは私の哲孊的な履歎曞を曞いおいる事でした。私は若い頃プラトンに傟倒しグノヌシス的な䞖界ぞの態床を気取り、やがお䞖界統合のためにショヌペンハりアヌずラむプニッツを取り入れおいきたした。グノヌシス䞻矩は私の若い頃の恋人ず蚀っお良いかも知れたせんね。

この小説で曞いおいる経隓は次のように説明できたす。自分の䞭のグノヌシス䞻矩者がこの䞖界の虚構性を暎力的に瀺しお新しい䞖界を䜜ろうず促しお、これも自分の䞭のモナド䞻矩者が新しい䞖界を䜜るこずはできないず䞖界を再構築する。自分の䞭にもモナドは存圚し、モナドには窓がないのです。
暗闇の䞭で䞀条の光が芋え、やがお灰色の長方圢ずなり濃淡が぀いお、遂にはスクリヌンに投圱された映画になるずいうのは、自分では気に入った描写です。
あるいはバグを起こしたコンピュヌタシステムを䞀床シャットダりンしお再起動する操䜜にも芋えるでしょう。

最近アニメ『機動戊士Gundam GQuuuuuuX』を芋おそのメタフィクション性に過敏ずも蚀える反応を瀺したのは、この様な私の「魂の癖」があったためです。
以前に曞いおいた小説を『GQuuuuuuX』最終回攟映前に改めおNoteで公開するこずにしたした。
拙い文を読んでいただき、ありがずうございたした。

2025幎6月22日蚘す

いいなず思ったら応揎しよう

荒井陜 応揎どうもありがずうございたした。チップは勉匷のため倧事に䜿わせおいただきたす。