【実録】「いい感じにしといて」とChatGPTに丸投げしたら、社内資料がファンタジー小説になった話
パソコンの画面右下に表示された時計は、冷酷に『18:00』を指していた。
明日の朝イチで部長に提出しなければならない重要案件の締め切りまで、残された時間はあと1時間。 デスクの上には意味不明な殴り書きメモの山。連続ミーティングでフリーズした脳みそを抱え、「もういい、ChatGPTに全部丸投げしちまえ……!」と、私は思考停止のまま入力欄に禁断の言葉を叩き込んだ。
「この資料、なんかいい感じにしといて」
数秒後。ChatGPTは「お任せください!」と、快活なスピードで文字を吐き出し始めた。 ――救われた。そう思ったのは、ほんの一瞬だった。
画面をスクロールした瞬間、私の心臓は文字通り「ドクン」と大きく跳ね、血の気が一気にサーッと引いていった。
そこにあったのは、来期の事業計画書でも、スマートな議事録でもない。なぜか画面いっぱいに広がっていたのは、「剣と魔法の世界を舞台にした、壮大なファンタジー小説のプロローグ」だった。
「かつて、王国(A社)の財務省には、暗雲が立ち込めていました……そこに現れた一人の若き勇者(あなた)は、聖剣エクセルを抜き……」
ふむ、ふむ。 なるほど。 そうかー。
えっ、そうなの。 御姫様を救いにいくんじゃないの? ……って、
あれ、俺は一体、何の資料を頼んだっけ? あれ、チャッ……じゃなくてChatGPT。これって、何の資料なんだっけ……?
すると、画面の向こうからChatGPTが平然と言い放つ。
ChatGPT:「はい。これは、戦士エクセルが、闇の王(財務王)の悪政から、エクセル王国を守るため、王女を救いだす、戦士の物語です。いい感じに仕上げました!」
えっ?、いい感じに仕上げてくれたのって……そこ?!
戦士エクセルってなんだ? 闇の王(財務王)の悪政ってなんだ? 王女を救いだすって、どこから出てきたんだよ! 王女って誰だよ!
そもそも、さっき投げたの、来期のシステム保守費の予算案とサーバ移行のスケジュール表だぞ!!!
夜のオフィスで、私の絶叫とツッコミだけが虚しく響き渡った。
2. 中盤:なぜ暴走したのか?(AIの誤解メカニズム)
冷や汗を拭い、荒くなった息を整えながら、私は画面を凝視した。 「一体なぜ、ビジネスの真面目な事業計画書が、ファンタジー小説の原稿になってしまったんだ……?」
原因は明白だった。極限の焦りから、私がChatGPTに投げた指示があまりにも抽象的すぎたのだ。 AIという生き物は、人間が想像している何倍も「指示に忠実」である。こちらが雑に扱えば、その雑さを全力で解釈し、斜め上の方向へアクセルを踏み抜いてしまう。
「いい感じに」という最悪の呪文
人間が言う「いい感じに」とは、「常識の範囲内で、それっぽく整えて」という都合の良い忖度を含んだ言葉だ。しかし、AIに「常識」という忖度回路はない。
「いい感じ=ドラマチックに盛り上げろ」「退屈な数字をエンタメ風に脚色せよ」と脳内変換され、フルスロットルのクリエイティブ執筆モードにスイッチが入ってしまった。
コンテキスト(文脈)という名のガードレールの欠如
「これは会社の真面目な予算書です」「トーン&マナーは硬めのビジネス用語で」という大前提を一切置かずに丸投げしたため、AIの自由度が100%になり、暴走を止めるブレーキが不在の状態になっていた。
AIは「優秀だけど、指示を額面通りに受け取る暴走特急」と同じだ。こちらが適当にハンドルを手放せば、ファンタジーの世界へまっしぐらに突っ込んでいくのは当然の結末だったのだ。
3. 後半:現実への帰還と、笑えないリカバリー地獄
画面に輝く「魔王軍の討伐資金(※来期のシステム保守費)」の文字をぼんやりと眺めながら、私の頭の中は完全に真っ白になっていた。
「これ……明日の朝イチで、あの鬼の部長に提出する資料なんだけど……?」
笑うしかない。いや、笑っている場合ではない。 冷や汗が再び背中を伝い、心臓がバクバクとうるさく鳴り響く。終電のタイムリミットが刻一刻と迫る中、私は泣く泣く手動での「現実帰還作業」を強いられた。
ファンタジー小説のプロローグを1行ずつ冷徹に削除し、ドラゴン族と戦う勇者の叙事詩を、冷や汗混じりの正しい数字と硬いビジネス用語に書き直していく。
「もう二度と、焦ってAIに『いい感じにして』なんて雑な丸投げはしない……!」
終電間際のオフィスで、私は固く心に誓った。 そして、この二度と味わいたくない地獄の残業を二度と繰り返さないために、「AIを暴走させず、最初からビジネス文書を出力させるための防衛策(プロンプト)」をその場で血眼になって構築し始めたのだった。
4. お土産:二度とファンタジーにしないための「事故防止&軌道修正プロンプト」
あの絶望的な終電間際の残業を、あなたには絶対に味わってほしくありません。 もし明日、仕事が詰まって「もう面倒だから丸投げしたい!」となったときに、AIをファンタジーの世界へ暴走させず、一発で正しいビジネス文書を出力させるための「鉄壁のコピペ用プロンプト」を置いておきます。
ぜひ保存(スキ)して、明日からの実務にお役立てください!
① 最初から暴走させないための「直球ガードレール」プロンプト
雑な丸投げを防ぐため、最初から「役割・トーン・出力形式」をガチガチに固定する指示テンプレートです。
【指示】 以下のグチャグチャなメモや箇条書きを、**ビジネス文書(または事業計画書・議事録)**として綺麗に整理してください。
【絶対守るべきルール】
1.エンタメ要素、ファンタジーの比喩、ドラマチックな修飾語は一切排除してください。
2.事実ベースの冷徹なビジネス用語・箇条書きを使用してください。
3.勝手なストーリーや脚色を付け加えないでください。
【対象のメモ・資料】
(ここにあなたの雑なメモを貼り付け)
② 万が一、ファンタジーに暴走してしまったときの「緊急・現実帰還」プロンプト
もしAIが物語や架空の例えを出力してしまったとき、一発でビジネスモードに引き戻すためのリカバリー呪文です。
【指示】 先ほどの出力内容ですが、なぜかファンタジー小説や過剰な脚色になってしまっています。 創作や比喩表現をすべて削除し、**「上司に提出できる真面目なビジネスの数字と事実」**だけに直してください。
【修正指示】
・「勇者」「魔王」「ドラゴン」等の比喩は、すべて実際の「担当者」「課題」「競合他社」等のビジネス用語に置き換えること。
・物語のプロローグ形式ではなく、上から順に読める箇条書きの報告書形式に書き直すこと。
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