《魔女のハーブは、あんまり甘くない》 ノアと星の誕生日 Episode1−2
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"A cozy fantasy story of a witch, her bitter herbs, and the gentle secrets they hold."
<2>
「その石、いいですか?」
わたしは、キースさんを見た。
「これ、ですか? どうぞ」
キースさんが、手のひらの石を、わたしにさしだす。
わたしは、受けとった石を、ひらいた左手のうえに、おいた。
「…ほら」
わたしが、つぶやくと、石が、小さく光りだした。
すると、小さな白い光が、手のなかに、うかんだ。
「え、石が、どうして?」
キースさんが、目をひらく。
「ぼくのときは、なにも、おこらなかったのに…」
やがて、窓のすきまから、小さな風が、ながれてきた。
わたしは、右手の人さし指で石にふれると、星にむけて、指さきをのばした。
そのまま、指先が光ると、夜空の星も、かがやきだした。
「あれ、星が、またたいて?」
夜空の、デネブの星が、光っていた。
「白鳥の、一等星が…?」
キースさんが、星空につぶやく。
すると、夜空の白鳥が、ゆっくりと、翼をはばたかせた。
「え、白鳥の翼が、いま…?」
わたしは、まばたきをして、夜空をみた。
星座が、うごくなんて、まさか、そんなことが…。
しばらくすると、翼をひろげた白鳥は、魔女の形をした星座に、ちかづいていった。
「あそこって、魔女のホウキのさき…?」
そしてゆっくりと、デネブの星が、魔女のホウキにふれた。
「魔女と、白鳥が、かさなって…?」
キースさんは、しんじられないような表情を、うかべる。
2つの星は、1つになった。
星の色が、白く光った。
「キースさん、これって…?」
わたしが見ると、キースさんは、なにも言わず、じっと星空を見ている。
やがて、星からの白い光のすじが、テーブルのハーブティーにのびた。
「え?」
わたしは、ハーブティーを見た。
すると、うすい黄色のハーブティーが、きらめく白銀の色にかわった。
「ハーブティーの色が、変わった…?」
なんだろう。
いま見た、2つの星みたいだ。
わたしは、星空を見た。
白鳥の星座が、もとの位置に、あった。
翼は、じっとしたまま、うごかない。
もう、魔女の形をした星座も、見えなかった。
「…?」
わたしは、夜空とキースさんを見た。
「さ、ノアさま、飲みましょう」
すると、キースさんが、ティーカップをもって、わたしに、ほほえんだ。
「ええ…」
わたしは、小さくわらって、自分のティーカップを手にした。
「いい香り…」
わたしは、きらきらと光る白銀のハーブティーを、ひとくち飲んだ。
「おいしい…」
「ええ、とっても」
わたしの言葉に、キースさんも、にこりとわらう。
「背中に、翼が、はえたみたい…」
わたしは、背中を見た。
「なんだか、空を、とびたくなってきました。あの、夜空の白鳥みたいに」
キースさんが、わたしに、つぶやく。
わたしは、もうひとくち、ハーブティーをのんだ。
「ふうっ」
わたしも、キースさんも、2人で、いっしょに息をはいた。
そして、おたがいの顔を見て、わたしたちは、ともに、わらった。
星のゆらめきが、おちついてきた。
あれ、なんだか、胸が……。
「そろそろ、帰る時間ですね」
キースさんが、かべの時計を見て、つぶやいた。
「え、帰るって?」
わたしは、キースさんに、たずねる。
「ノアさま、すこしだけ、うしろをむいてもらって、いいですか?」
キースさんが、わたしを、見る。
「え? あ、はい」
わたしは、うしろをむいた。
わたしは、時計を見ると、はっとした。
そうだ、今日は、たしか…。
時計の針が、うごく音が、ひびいた。
「もう、いいですか?」
わたしは、ふりむいたが、キースさんが、いなかった。
「…?」
2つの、ティーカップが、丸テーブルのうえに、おいてあった。
「あれ、どこに…?」
わたしは、窓が、開いているのに気づいて、外をみた。
「あれは?」
むかいの、屋根のてっぺんに、1羽の鳥がいた。
わたしは、目をひらいた。
ーさっき見た、白い鳥?
鳥の輪郭が、月のシルエットに、かさなっていた。
「…え」
やがて、白い鳥は、翼をひろげると、星空に、とびたっていった。
「あそこって…?」
鳥のシルエットは、白鳥座のほうへ、きえていった。
しばらくすると、デネブの星が、光った。
「まさか…」
わたしは、石を、ポケットにいれた。
☆
<オカエリナサイ、ノア>
部屋にもどると、ムックが、わたしに、話しかけてきた。
「ノアさま、どうでしたか?」
テーブルのクワトロさんが、わたしを見る。
「うん、とっても、おいしかったし、楽しかった」
わたしは、そう言うと、イスに座った。
「ほう、それは、よかった」
クワトロさんが、ほほえむ。
「ノアさま、すこし、お待ちになってくれますか?」
「え?」
わたしが返事をすると、クワトロさんが、キッチンにはいっていった。
「…?」
<オタノシミ、オタノシミ>
ムックが、わたしに、つぶやく。
「え、ムックは、知ってるの?」
わたしがムックを見ていると、クワトロさんは、キッチンから、バースデイケーキをのせたトレイをはこんできた。
「わあ」
わたしは、おどろいた。
「ノアさま、13歳の、お誕生日、おめでとうございます」
クワトロさんが、ほほえみながら、テーブルに、ケーキをおいた。
「すごい…」
わたしは、胸のまえで、手をあわせた。
そうだ、さっき思い出したのは、今日は、わたしの誕生日だったということ。
サプライズとは、この、素敵な…。
<オメデトウ、オメデトウ>
ムックが、楽しそうに、声をだす。
「クワトロさん、ムックも、ありがとう…」
わたしがいうと、クワトロさんが、小さくうなずく。
「じゃ、息を、すって…」
わたしは、13本の、ろうそくの火を、ふうっと息をはいてけした。
クワトロさんが、楽しそうに拍手をした。
「いい歳です。大人の階段を、のぼりはじめたということですね」
クワトロさんは、そういって、カットしたケーキを、お皿にのせてわたしてくれた。
「あ、わたし、ハーブティーを、いれますね」
わたしは、ハーブティーを2人ぶんいれると、ケーキを口にいれた。
「おいしい…!」
わたしは、手を、ほっぺたに、あてた。
「よかった。私、じつは、お菓子をつくるのが、好きなんです」
クワトロさんは、そういいながら、ケーキを口にはこんだ。
イチゴは、さいごに、とっておこう。
好きなものは、さいごにするタイプなのだ。
お姉ちゃんといっしょに、お祝いしたかったなあ…。
わたしは、ハーブティーを、のんだ。
「うん、あんまり甘くなくて、大人の味がする」
わたしは、窓のそとの星空を見た。
星たちが、まじわって、遊んでいるように見えた。
「でも、ノアさま」
「?」
「なんだか、大人の表情になった気がします」
クワトロさんが、わたしを、やさしげに見る。
「そ、そうかな…」
ムックが、<ノア、テレテル、テレテル>と、わたしになく。
「どこで、おぼえたの?」
わたしは、わらって、ムックを見た。
クワトロさんも、えみをうかべる。
あ、そうだ、さいごに、とっておいた…。
わたしは、イチゴを、口にいれた。
☆
わたしは、夜の砂浜を、さんぽした。
風が、きもちいい。
海のむこうに、光る街が、見える。
だれかが、呼んでいるような気がした。
きいたことの、ある声…。
なんだろう。
そとの世界へと、でたくなってきた。
海のむこうの、ひろい世界へ…。
わたしは、背中をさわった。
やはり、翼は、はえていない。
でも、心のなかの、翼がはえた。
そんな気がする…。
「え、あれは?」
さっき見た、小舟が、まだ、とめてあった。
夜の波の音が、そっと、ひびいてくる。
わたしは、ゆっくりと小舟にちかづくと、ロープをほどいた。
「ちょっとだけ、いってきます…」
わたしは、館にむかって、つぶやくと、小舟をおして、夜の海にでた。
「わ、つめたい」
はねた、しぶきが、ほおについた。
「よいしょっ…、と」
わたしは、小舟にのると、オールを手にしたが、すぐに、あおむけになった。
ゆらゆらと、小舟が小さくゆれ、波の音が、歌のようにながれてきた。
「ああ、きもちいい…」
夜空に、たくさんの星が、ちりばめられている。
星たちが、きらきらと、あそんでいた。
「いくつ、あるんだろう…」
あの言い伝えのような、夜空の光景だ…。
わたしは、ピアノのメロディーを、ハミングした。
やがて、まうえに見えるデネブの星が光り、星空の白鳥が、翼を、はためかせたのが目にはいった。
「え、翼が…?」
わたしは、ポケットのなかの石を見た。
「これは、星を…、星座を、うごかす石?」
わたしがつぶやくと、石が、星のように、光った。
「…え?」
いま、手のなかに、星空ができた感じがした。
わたしは、手を、そっと、にぎった。
「そうか…」
風が、わたしの髪を、ゆらした。
「今日は、旅立ちの、誕生日なんだね…」
わたしは、星空につぶやくと、港のある街にむかって、オールをこいだ。
《 魔女のハーブは、あんまり甘くない》
ノアと星の誕生日
END
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Thank you for reading Episode 1☺️✨🌈
See you in Episode 2!🤗🐈⬛🩷
