〈魔女のハーブは、あんまり甘くない〉 セーラと星の黒猫 Episode2−2
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"A cozy fantasy story of a witch, her bitter herbs, and the gentle secrets they hold."
<2>
「ココ?」
わたしは、ココに、つぶやく。
「ミャオ」
すると、ココが、わたしの肩にのってきた。
「⋯?」
あの魔女の形をした星座のさきに、たくさんの星が、ながれていた。
わたしは、身をのりだして、夜空を見た。
「あの、大きな星の川みたいなのって⋯」
ー星の川。
わたしは、いま、そんな言葉を、口にしてい た。
わたしは、指で三角形をつくって、夜空の星たちを、三角のなかにおさめた。
すると、小さな星空が、指のなかに、できあがった。
「すごい、星が、指のなかに⋯」
わたしは、ココを見た。
「ミャオ」
肩のうえのココのからだが、光っていた。
「え⋯⋯?」
いま、ココの瞳が、星みたいに見えた。
わたしは、はっとした。
「これって、ココの、兄弟⋯?」
わたしは、三角のなかの星を、みた。
「あれ?」
あの、魔女の形をした星座が、星の川によっていくのが見えた。
「星座が⋯、え?」
まさか、星座が、うごくなんて…。
わたしは、信じられない思いで星空を見ていたが、ココは、小さな耳をたてて、じっとすましていた。
「ココ?」
やがて、星空の魔女が、星の川におりると、星たちが、いっせいに光った。
「⋯?」
わたしは、きらきらしたものが、夜空からふってくるのが見えた。
ひらいた手を、空に、むける。
「光の、つぶが、おちて⋯?」
手のなかに、白い宝石が、おちてくる。
「雪⋯?」
わたしは、目をひらいた。
「うそ⋯」
ココのからだに落ちた雪が、きらりと光っては、きえていった。
ココが、からだを、小さくふるわす。
「これって、さっきの⋯?」
わたしは、丘で見たものを思い出した。
手のうえの雪の結晶は、美しい、六花の形をしていた。
「雪って、こんなに、きれいなんだ⋯」
小さいころは、まったく、気づかなかった⋯。
「え、この香りって⋯」
わたしは、手のひらに、顔を近づけると、さっきの、アイスクリームみたいな香りがして、おどろいた。
「まさか⋯」
なんだか、庭の花たちも、びっくりしているみたいだった。
「おどろかしちゃって、ごめんね…」
わたしは、苦笑いして、庭の花たちに、つぶやいた。
白い結晶をまとった花たちは、いつもより、さらにきれいな感じがする。
「夏の、雪か⋯。すごく、気持ちいい」
ココが「ニャ」と、わたしにないた。
「あ、そうだ。あの、もらったハーブが…」
わたしは、部屋にもどり、水色の袋にいれたハーブをティーカップにいれると、ポットのお湯をそそいだ。
「あったかくて、いい香り⋯」
わたしは、ティーカップを手に、窓ぎわにたった。
白いゆげが、小さな雪のなかを、ゆらゆらと、のぼっていった。
「もう夏なのに⋯、不思議ね」
やがて、空からの雪が、ハーブティーのなかにおちて、音もなくとけた。
「わあ⋯」
ゆらめく糸が、ハーブティーのなかにひろがり、結晶のような模様になった。
「きれい⋯」
わたしは、ハーブティーを、ひと口のんだ。
「あんまり甘くないのが、あまくなった⋯」
わたしは、自然と、えみがうかんだ。
すると、指のさきが、小さく光った。
「…?」
わたしが指を見ていると、雪は、よわくなってきた。
そういえば、あの魔女の形をした星座も、もう夜空には、見えなかった。
「⋯?」
風は、あたたかい。
「あったかいけど、つめたい⋯」
わたしは、わらいながら、ハーブティーを、のんだ。
「あと、あれも…」
わたしは、テーブルにおいたガラスの箱を手にすると、窓のそとにだした。
そのとき、指さきが光ると、箱が、きらめいた。
「え⋯?」
わたしは、箱のフタをひらくと、おちてくる雪を、箱のなかにいれた。
ココが、楽しそうに見ている。
フタをしめると、箱が、小さく光った。
「いま、光って⋯、え?」
わたしは、目をひらいた。
ガラスの箱のなかで、雪が、ふわふわと浮いていた。
「すごい、これが、魔法の箱⋯?」
わたしは、お店の、おじさんの言葉を思い出した。
きれいな雪が、ずっと、とけないまま…。
でも、その魔法って⋯。
わたしは、ココを見た。
ココは、じっと、星空を見ている。
「まさか⋯」
もう、空からの雪は、やんでいた。
「ほっ⋯」
わたしは、小さく息をはくと、ガラスの箱をテーブルにもどした。
「ミャ」
ココがなくと、わたしは、ロッキングチェアにすわり、ひざにココをのせた。
赤ちゃんをだくと、こんな感じなのかな…。
わたしは、そんなことを思いながら、ココの背中をなでた。
ゆらり、ゆらり⋯と、イスが、ゆっくりとゆれる。
いま、ふっていた雪の、小さな風のような音が、耳にのこっている⋯。
わたしは、うとうと、眠りを、おぼえた。
そういえば、あんまり寝てなかったから…。
やがて、ひざのうえのココが、ほんのりと光り、ひざにあたたかさを感じた。
「ココ⋯?」
わたしは、やわらかな光につつまれると、眠りにおちていった⋯。
☆
みなとの、汽笛の音。
わたしは、はっと、目をさました。
「う…ん」
部屋のなかが、窓からの明るい日差しに、あふれていた。
ココが、ひざのうえで、からだをおこした。
窓から、ここちよい風がふきこみ、カーテンがゆれていた。
「あ、そうだ。いま、時間は⋯」
かべの時計を見ると、まもなく、7時になろうとしていた。
「ミャオ」
ココが、床におりて、わたしにないた。
「うん。じゃ、いこう」
ー風も、よんでいる。
わたしは、ガラスの箱を手にして、ホウキにまたぐと、ココが、肩のうえにのってきた。
「よし、とばすよ」
わたしが、ココにいうと、ホウキは空にむかってうきあがり、みなとのほうへ、とんだ。
海の香りをまとった風が、空に、ひろがっていた。
カモメが、翼をひろげ、気持ちよさそうに風のなかを飛んでいるのが見える。
「あれは⋯」
みなとでは、ヒカワノ丸が汽笛をあげて、出港の準備をしているみたいだった。
船のそばには、送迎の人たちが、集まっている。
わたしは、空から、リリアちゃんを探したが、見当たらない。
まだ、船内に、いないとすれば、たぶん…。
わたしは、ホウキをさげて、山の下公園におりると、あたりを見回した。
「ミャ」
すると、ココが、わたしに、ないた。
リリアちゃんが、公園のベンチにすわって本を読んでいるのが見えた。
わたしに気づくと、リリアちゃんは、本から顔をあげた。
「あ、よかった。まにあった…」
わたしは、ベンチにむけて、あるいた。
「あ、お姉ちゃん。ほんとに、きてくれたんだね⋯」
リリアちゃんが、ほほえみかけてきた。
わたしは、リリアちゃんのとなりに、すわる。
「あれ、お兄さんは?」
わたしが、たずねると、リリアちゃんが、にがわらいをする。
「お兄ちゃんは、もう、船のなかに、いっちゃった⋯」
リリアちゃんは、ヒカワノ丸を見ながらいう。
「え、どうして?」
「うん。お兄ちゃん、すっごい気が小さいから、遅れちゃう、遅れちゃうって、おろおろしてた」
リリアちゃんが、あきれ半分で、ほほえむ。
わたしは、口をおさえてわらった。
ふだん、どんな会話を、してるんだろう⋯。
「いちど、お兄ちゃんと、会ってみたいな⋯」
わたしが、リリアちゃんに、つぶやく。
「うん、こんど、会ったらね」
リリアちゃんが、大きな声でいう。
「いつか、リリアちゃんの街に、行くね」
「うん、ぜったい、おいでよ」
わたしとリリアちゃんは、ほほえみながら、指切りをした。
「あと、これね」
わたしは、雪がはいったガラスの箱を、リリアちゃんに見せた。
「わあ」
リリアちゃんの顔が、かがやく。
「ほら、きれいでしょ」
箱のなかで、小さな雪の結晶が、ふわふわと、うかんでいた。
「すごい、これが、雪。こんな、きれいな形をしてるんだ⋯」
リリアちゃんが、嬉しそうに、ほほえむ。
雪が、宝石みたいに、きらめいている。
「ミャオ」
ココが、楽しそうになく。
「でも、お姉ちゃん、魔女みたいなかっこうしてるけど、魔法が使えるの?」
リリアちゃんが、わたしを見る。
「うん、まあ、すこしだけどね⋯」
わたしは、ひかえめに、わらう。
「じゃ、この箱には、お姉ちゃんの魔法が、かかってるんだね⋯」
リリアちゃんは、ガラスの箱をながめた。
ーえ、そうなの⋯。
わたしは、ひらいた手を、見た。
指さきが、小さく光った。
「⋯?」
「ありがとう、大事にするね」
リリアちゃんの言葉に、わたしは、つよくうなずいた。
「なんだか、お世話になってばっかり⋯。今度あうときは、ぜひ、お礼をさせてね」
リリアちゃんが、わたしに、ほほえむ。
「うん、いろいろ教えてね」
「もちろん。じゃあ、また」
リリアちゃんは、箱を大事そうにかかえ、ベンチからはなれると、船のほうへ、すすんでいった。
そして、とちゅうで振り返ると、わたしたちに、手をふった。
わたしは、手をふり、ココは、しっぽをふった。
「あ、また、かぎしっぽ⋯」
わたしは、ココに、ほほえんだ。
やがて、乗客のみんなが、船の甲板に顔をだし、みなとの人たちに、手をふっているのが見える。
「あ、あれって⋯」
リリアちゃんらしい少女と、となりに、背の高い少年がいるのが、甲板のおくに見えた。
「よかった⋯」
わたしが、つぶやくと、大きな汽笛がなり、みなとのカモメが、青い空にはばたいた。
しばらくすると、ヒカワノ丸が、みなとから、はなれていく。
やがて、海のむこうに、見えなくなった。
「じゃ、またね⋯」
やわらかな風がふいて、波が、小さくゆれた。
ーいい香り。
わたしは、みなとの海に、手をひろげた。
「ねえ、ココ、あれはぜんぶ、あなたが、おこしたの?」
わたしは、肩のココを見る。
「ミャ」
ココが、小さく、ないた。
でも、リリアちゃんのいったように、わたしも、魔法を、おぼえたのかも⋯。
わたしは、ひろげた手を見た。
「え⋯?」
ーこの、感触は⋯?
わたしは、空を見ると、おどろいた。
みなとの青い空から、小さな白い雪が、ふってきた。
「あ、白い宝石が⋯?」
きらきらしている⋯。
わたしは、からだをいっぱいにひろげ、くるりとまわった。
「ミャオ」
ココが、もういちど、楽しそうに、ないた。
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<魔女のハーブは、あんまり甘くない>
セーラと星の黒猫 Episode2
END
