退職してから語る地域づくり
地域づくりは、退職してから始めるものではない
地方では、役場を退職した人が地域づくりやボランティアについて語る姿を目にすることがある。
「地域はこうあるべきだ。」 「住民がもっと主体にならなければならない。」 「ボランティアが地域を支える。」
その考え自体を否定するつもりはない。
むしろ、そのような思いを持つ人が増えることは良いことだと思う。
しかし、民間の立場からすると、一つ疑問がある。
その熱意は、なぜ現役のときに発揮できなかったのだろうか。
役場職員は、地域の中でも数少ない「仕組みを動かせる立場」にいる。
予算がある。 組織がある。 人を集める力がある。 行政だからこそ調整できることも多い。
一方、民間は違う。
地域を良くしたいと思っても、お金も権限も人員も限られている。
思いだけでは、町は変えられない。
もちろん、役場職員も勤務時間や労働条件があり、休日まで活動することを当然とするべきではない。
しかし、地域づくりは勤務時間だけで完結する仕事ではない。
現役のうちから地域との接点を持ち、住民や民間団体との信頼関係を築き、次の世代が活動しやすい土台をつくることは、行政だからこそできる大切な役割ではないだろうか。
私は、町の祭りを見ても同じことを感じる。
平日の昼間に開催され、神輿を担ぐのは役場関係者や決まった人たち。学生は授業があり参加できず、働く世代も仕事を休まなければ来られない。
出店は減り、スポンサーも減り、賑わいも少しずつ失われていく。
それでも、「昔の祭りを取り戻したい」という声は聞こえてくる。
しかし、その解決策として語られるのは、昔と同じやり方や、カラオケ大会など、過去の延長線上の話が中心で、今の時代に合わせて仕組みそのものを見直そうという議論は多くない。
私は、土日開催や参加型の神輿、民間主体の実行委員会なども考えた。
けれど、現実は甘くない。
民間には仲間がいない。
人も、お金も、権限もない。
一人の思いつきだけでは、何も始められない。
だからこそ、本来は役場と民間がタッグを組むのが理想なのだと思う。
役場には制度や組織を動かす力がある。
民間には現場の発想や行動力がある。
この二つが合わされば、地域はもっと面白くなる。
しかし現実には、現役時代は勤務時間外の地域活動とは距離を置き、退職してからボランティアや地域づくりを語る人が少なくない。
その結果、現役時代に築けたはずの信頼関係や協力体制は生まれず、民間だけが「何とかしたい」と悩むことになる。
私は、退職後に地域活動をすることを否定したいわけではない。
むしろ歓迎したい。
ただ、本当に地域の未来を考えるなら、現役のうちから民間と一緒に汗をかき、地域に関わる人を育て、活動が続く仕組みを残してほしい。
地域づくりは、一人ではできない。
行政だけでもできない。
民間だけでもできない。
だから必要なのは、役場と民間が「現役のうちから」信頼関係を築き、一緒に地域を育てていくことだ。
退職してから理想を語る人は多い。
しかし、本当に地域を変えられる可能性が最も高いのは、その人が権限と責任を持って働いている現役時代ではないだろうか。
私は、そんな行政と民間の関係が当たり前になる地域こそ、本当に持続可能な地域だと思っている。
