今日ときめいたこと769ーNHK映像の世紀バタフライエフェクト「陸軍VS海軍」を見る
このドキュメンタリーを見て愕然としてしまった。近代国家としての明治から太平洋戦争までの日本国の軍隊は国家の軍隊としての体をなしていなかったことがわかる。陸軍と海軍、両者の間には常に確執、敵対心、非協力、分断が存在し、戦争遂行時にもそれは続いていた。まるで2つの軍隊が別々の戦略のもと別々の目的に向かって戦っていたのだ。
ドキュメンタリー冒頭に、戦後1976年防衛研修所戦史部で陸海軍の元幹部が過去の戦争を語る場面がある。その時も両者は口々に相手を糾弾し責任のなすり合いをする。こんな連中のもとで死んでいった兵士の何と哀れなことか。彼らの罵り合いからは戦争に対する後悔や反省の念は微塵も感じとれない。
2つの組織は創設時からその文化や戦争のビジョンが異なっていた。戦争遂行にあたってバラバラのまま戦争に突入していき、その対立は終戦まで続いた。分断されたままの軍隊はそれが原因で多くの犠牲者を生んだ。
台湾沖航空戦では海軍は戦果の誤りを隠蔽しそれを信じた陸軍は無謀な戦いに向かっていった。ガダルカナル戦、レイテ沖海戦、ミッドウェイ海戦、インパール作戦等々あげたらキリがない。元海軍将校は「陸海軍は本当の協力一致ができなかった」と語っている。
東京裁判でも陸海軍弁護団の主張は分かれた。陸軍は自己弁護より戦争の正当性の主張に力を入れた。海軍は自らの責任回避に重点を置いていた。結果死刑となったものは陸軍のみで、海軍にはいなかった。満州事変を首謀した石原莞爾は裁かれることはなかった。戦後は一転して平和を語るようになった😱
さらに衝撃的なのは戦後彼らは、すんなりと日本社会に入っていったことだ。警察予備隊が創設された際には隊員育成のために幹部には元陸軍の軍人が迎え入れられた。一方海軍の働きかけで海上警備隊が創設された。志願者のほとんど元海軍出身者であった。そうして自衛隊として再び二つの組織が引き継がれていった。
高度成長期を迎えると、戦争を指揮した元軍人たちは企業社会に向かい入れられていく。企業は軍で培われた統率力を評価し、元幹部を積極的に採用した。軍隊の思想はそのまま戦後の社会に引き継がれたのである。
ドキュメンタリーの中で山本七平は、日本の組織における責任の曖昧さを問うていた。山本は戦後社会に敗戦で消えたはずの日本軍の影を感じると語っていた。
末端の兵士はバタバタと死んでいったのに彼らの上官たちは手厚い待遇でその後の人生を生きたのである。あるものは政治家に、企業の幹部に。国家の命運を担う省庁にも縦割り組織と縄張り意識が持ち込まれ、軍隊の組織の論理は形を変えて受け継がれた。日本人は、経済成長という新たな戦場に駆り立てられていった。銃からハンマーに持ち替えただけだと言われたように。
中でも山崎豊子の「不毛地帯」のモデルとされる瀬島龍三は伊藤忠商事の会長まで上り詰めた人物だが、日本人兵士60万人のシベリア抑留をソ連と画策したと言われている。彼はそのことについて一切語らず亡くなっているので事実は闇に葬られたままである。その彼が映像の中で意気揚々と「一点の疑問もなく自分の命を国家に捧げた」と語っていることに強い違和感を覚えた。
最後に映し出された企業の風景は、軍服こそ来ていないが日本軍の兵隊を見ているようだった。
