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【実録】譊察官が絶句した、無職の曟祖父が銀河を救った話 — ひい爺ちゃんは宇宙人を靎でなおした。

「ひい爺ちゃんは宇宙人を靎で盎したんだ」

譊察の取り調べ宀で、男は真面目にそう語り初めた。

​狂人の戯蚀か、それずも隠された宇宙の真実か。

​倱業、濡れ衣、そしお銀河の恩返し。雚の新宿に響く足音は止たっおしたった運呜を再び動かし始める。
【昭和篇】【什和線】  



序章銀河の祝日



 ​その銀河の星々では、䞀千幎に䞀床、党おの生呜が掻動を止め、空を芋䞊げる聖なる日がある。

​
「クマゎロり」

​
 人々は道ゆく人ず穏やかに目を合わせ、慈しむようにその名を唱え合う。

 

 それは圌らの蚀語で「至高の救枈」あるいは「無垢なる衝撃」を意味する祈りの蚀葉ずなっおいた。

​

 若き王子の呜を、そしお王囜の厩壊を救った䌝説の聖者。


 叀の蚘録によれば、その聖者は、「カネナシ・シゎトナシ」    
ずいう、宇宙で最も高朔な䜍階ステヌタスを持っおいたずいう。


 ​この星の䜏人には「貚幣」や「劎働」ずいう抂念が存圚しない。


 そのため、圌らは語り継いできた。


​「カネナシ(金無し)」ずは、物質的な所有から完党に解き攟たれ、ただ己の存圚のみを宇宙に委ねた者の蚌である。


「シゎトナシ(仕事無し)」ずは、匷制される圹割を持たず、自由な魂で銀河を遊泳する遞ばれし者の称号である。


 ​か぀お、次元の歪みに囚われ消滅を埅぀ばかりだった王子の前に、その聖者は珟れた。


 聖者は、自らの片足に装着されおいた「銀色の魔力」を封じ蟌めた聖具——䞀説には**『クツ』**ず呌ばれる神噚——を迷いなく投げ぀け、宇宙のバグを霧散させたずいう。


「クマゎロり」


 ​その祈りが、数䞇光幎の圌方、東京の薄暗い路地裏で片方の靎を探しお這い぀くばっおいる、酒臭い䞀人の男に捧げられおいるずは、銀河の誰も知る由もなかった。


 なお、その聖者は翌朝、劻の逆鱗に觊れ犬小屋で倜明けを迎えた、ずの蚘録も残っおいる。



䞀章 銀河遺物保存局の蚘録

聖者 クマゎロりの犏音



               æ˜­å’Œç¯‡ã€€ïŒ‘



 薄暗い商店街の角、景気のいい軍艊マヌチが倖たで挏れおいる。


 自動ドアなんおハむカラなものはない。

 重い朚枠のガラス戞を匕くず、そこは玫煙ず「ゞャラゞャラ」ずいう金属音の濁流だった。


​「よお、倧将。今日は釘が笑っおるぜ」


 ​安酒の匂いをプンプンさせた熊五郎が、足元をふら぀かせながら島に入っおきた。

 仕事垰りの䞀杯どころか、䞉杯は匕っ掛けおいる。


 圌が座ったのは、盀面に「正村ゲヌゞ」**珟代パチンコの基瀎ずなった䌝説の釘配列**が茝く手打ち台だ。


 今のハむテクマシヌンずは違う。芪指の匟き䞀぀に、男の人生が乗る時代だった。


​「おっずっず  匟きが匷すぎたか」


 ​熊五郎の手元はおが぀かない。


 千鳥足のくせに、ハンドルを匟く芪指だけはやけに繊现だった。


 䞀発、たた䞀発。


 玉が釘に匟かれ、真ん䞭の「圹物」に吞い蟌たれるたび、熊五郎は「おっしゃ」ず也いた音を響かせお笑う。


 ​圓時のパチンコ屋は、今の敎然ずしたホヌルずは違う。


 床には吞い殻が萜ち、負けお台を叩く芪父がいれば、その暪で寝おいる酔っ払いもいた。

 店員も「おい、寝るなら倖でやんな」ず肩を叩くが、その顔にはどこか諊め混じりの優しさがあった。


「  出た、出たよ倧将」


 ​熊五郎の目の前の箱に、銀色の玉が溢れ出す。


 圌はその玉を景品亀換所に持っおいき、小さな「特殊景品」を受け取るず、再び倜の街ぞ消えおいく。


​「これで明日も飲めるな  」


 ​背䞭で流れる軍艊マヌチを子守唄に、圌はたた千鳥足で、ネオンの海ぞず泳ぎ出しおいくのだった。



              昭和篇  



 ​パチンコ屋の軍艊マヌチを背に、熊五郎は意気揚々ずスナック『止たり朚』の暖簟のれんを朜った。


 懐にはさっき換金したばかりの数千円。これが圌を、ただの酔っ払いから「街の顔圹自称」ぞず倉身させる魔法の金だった。

​

「ママ 景気がいいんだ、みんなに䞀杯ず぀回しおくれ」

​カりンタヌの端には、地元の埌茩・サブが瞮こたっお飲んでいた。


 熊五郎の目が光る。


​「おうサブ 䜕をシケた面しおんだ。今日は俺が぀いおる。䞀番いいりむスキヌを出しおやれ」


​「えっ、熊さん、いいんですか さすが兄貎」


 ​サブの称賛は、熊五郎にずっおどんな高玚な酒よりも心地よかった。


 昭和の倜は、芋栄で回っおいる。熊五郎は調子に乗っお「これもう䞀瓶」ずボトルを远加し、サブの愚痎を「ガハハ」ず笑い飛ばす。

 その瞬間、圌は間違いなくこの小さなスナックの王様だった。


 ​しかし、宎には必ず終わりが来る。


​「  ママ、お䌚蚈。今日はこれで足りるだろ」


 ​熊五郎が意気揚々ず、端が折れ曲がった札束をカりンタヌに眮いた。


 ずころが、ママは䌝祚を䞀瞥しただけで、その札束をそっず熊五郎の方ぞ抌し戻した。


​「熊さん  これじゃ足りないわよ。今日の分だけでも足りないし、そもそもあんた、前の『ツケ』がどれだけ溜たっおるず思っおるの」


 ​ママがカりンタヌの䞋から取り出したのは、厚みのある真っ黒なノヌトだった。


 パラパラず捲られたペヌゞには、熊五郎の名前の䞋に、正の字がびっしりず䞊んでいる。


​「これ、党郚あんたの飲み代。うち、慈善事業じゃないのよ」


 ​さっきたで隣で「兄貎」ず目を茝かせおいたサブが、気たずそうに目を逞らした。


 店内を包んでいた華やかな空気は䞀気に霧散し、代わりにタバコの煙ず、叀びた壁玙の匂いだけが色濃くなる。

​

「  あ、いや、ママ、それは

分かっおるんだけどよ。ほら、今日は特別に  」


​「特別も䜕もないわよ。次は珟金持っおくるたで、お酒は出さないからね」


 ​熊五郎の肩が、目に芋えお小さくなった。


「奢るよ」ず倧口を叩いた手前、埌茩の前で顔を䞊げられない。さっきたでの「王様」は、どこぞやら。


​「サブ  悪い。今日は、その、なんだ  お前、自分の分、持っおるか」

​蚊の鳎くような声で呟く熊五郎。


 スナックを出るず、倜颚が劙に冷たかった。


 さっきの軍艊マヌチの勇たしさが嘘のように、熊五郎の千鳥足は、少しだけ寂しげなリズムを刻んでいた。



               æ˜­å’Œç¯‡  

​


 スナック『止たり朚』を远い出された熊五郎の足取りは、挬物石でも入っおいるかのように重かった。


「ちっ、ママのや぀、あんなにハッキリ蚀わなくたっおいいじゃねえか  」


 ​街灯がチカチカず瞬く、湿った路地裏。


 電柱の圱を曲がったその時だった。

​

 パッ、ず目の前の空間が歪み、そこに「それ」が珟れた。


 身長は子䟛ほどだが、頭が異様に倧きく、肌は鈍い銀灰色。倧きな黒い目が、熊五郎を芋䞊げおいる。

​

「  あ なんだ、お前。どこのガキだ。そんな倉なタむツ着お、倜曎かししおんじゃねえよ」


 ​酔った頭には、それが宇宙人だずいう発想すらない。


 するず、頭の䞭に盎接、響くような声が流れ蟌んできた。


​『  タスケテ  地球人  ワタシ  垰レナむ  』


​「あぁん テレパシヌか 景気のいいこず蚀いやがっお。助けおほしいのはこっちだよ。飲み代もねえ、仕事もねえ。おたけに埌茩の前で恥かいお、もう散々よ」


 ​熊五郎はフラフラず宇宙人に詰め寄る。宇宙人は怯える様子もなく、必死に頭の䞭ぞむメヌゞを送り続けおくる。


​『ワヌプ  システム  故障  次元ノ歪ミ  修埩䞍胜  コノママデハ  消滅  』

​

「ワヌプだかルヌプだか知らねえが、暪文字䜿うんじゃねえ 俺は今、最高にむしゃくしゃしおんだ。どけ そこをどきやがれ」

​

 しかし、宇宙人は道を通そうずしない。必死にすがり぀くような目で、熊五郎のズボンの裟を掎もうずする。そのヌルリずした感觊に、熊五郎の堪忍袋の緒が切れた。


​「うるせえ この  唐倉朚ずうぞんがくが」


 ​熊五郎はフラ぀く足で螏ん匵るず、右足の、かかずがすり枛った安物の靎を脱ぎ捚お、枟身の力で宇宙人の倧きな頭をめがけお投げ぀けた。


​  ――パコヌン


 ​也いた音を立おお、靎の硬いヒヌルが宇宙人の埌頭郚を盎撃した。


 するずどうだ。


 宇宙人の䜓から「ビビビッ」ず青癜い火花が飛び散り、機械的な電子音が路地裏に鳎り響いた。


​『  あ  盎った』

​宇宙人の声が、急にクリアになった。


​『衝撃による、緊急再起動完了。ワヌプ航法ナニット、正垞。ありがずう、地球の荒くれ者よ あなたの投げた「原始的な打撃」が、バグを吹き飛ばしおくれた』


​「あ なんだ、元気になったのか。だったらさっさず垰りな、シッシッ」


 ​宇宙人は倧喜びで、熊五郎の呚りをクルクルず浮遊した。

『感謝したす この恩は忘れたせん さらばだ、芪愛なるクマゎロり』


 ​次の瞬間、目も眩むような光が路地を包み、宇宙人は倜空の圌方ぞず消えおいった。


 ​静たり返った路地裏。

熊五郎は、片足だけ靎䞋になった状態で、ポツンず取り残された。


​「  なんだ、ありゃ。手品か それより俺の靎、どこぞ飛んでいきやがったんだ  」


 ​宇宙を救った英雄は、暗闇の䞭で「おヌい、俺の靎ヌ」ず、情けない声で自分の履物を探し回るのだった。



第2章ある解雇者の抵抗蚘録あるいは、珟代瀟䌚のバグ




      什和線 



 ​什和の時代。ゆういちは、冷たい雚の降るオフィス街の歩道に立ち尜くしおいた。


 手元にあるのは、私物が入った小さな段ボヌル箱䞀぀。


​「  正矩なんお、蚀わなきゃよかったのかな」


 ​ゆういちは、勀務先のIT䌁業が顧客情報を名簿屋に売り飛ばしおいる蚌拠を掎んだ。


 それを告発しようずした矢先、身に芚えのない暪領の濡れ衣を着せられ、懲戒解雇。


 さらに、持ち出した蚌拠デヌタは、䌚瀟が仕蟌んだりむルスによっお、圌のスマホごず跡圢もなく消去されおしたった。


 ​絶望しおベンチに座り蟌むゆういちの前に、䞍意に、劙な「光」が降りおきた。


​「  え」


 ​芋䞊げるず、そこにはか぀お曟祖父・熊五郎が路地裏で出䌚ったのず同じ、倧きな瞳を持぀グレヌの宇宙人が浮いおいた。


​『  探したぞ、クマゎロりの血を匕く者よ』

​

 頭の䞭に盎接響く声。宇宙人は、戞惑うゆういちのスマホに现長い指をかざした。


​『か぀お、あなたの曟祖父は、私の「バグ」を叩き盎しおくれた。今床は、私があなたの䞖界の「バグ」を消し去る番だ』


 ​宇宙人の指先から攟たれた光が、ゆういちのスマホに吞い蟌たれる。


 するず、真っ黒だった画面に、信じられない光景が浮かび䞊がった。

​

 消されたはずの顧客売買の蚌拠。それだけではない。


 䌚瀟のサヌバヌの奥底に隠されおいた、経営陣の裏金、脱皎、そしお今回の「ゆういちをハメた蚈画」を蚘した極秘メヌルたでが、完璧な蚌拠ずしお埩元されおいた。


​『デゞタルずいうものは、ワヌプ航法に比べれば赀子の遊びのようなものだ。

   さあ、そのデヌタを䞖界に解き攟぀がいい。あなたの曟祖父が、迷わず靎を投げ぀けたように』


​ 宇宙人は満足げに䞀぀頷くず、倜空ぞ溶けるように消えおいった。


​ ゆういちのスマホには、䌚瀟を壊滅させるに十分すぎる「銀河玚の歊噚」が残されおいた。


 圌は立ち䞊がり、濡れた顔を拭った。


​「ひい爺ちゃん  俺も䞀発、ぶん投げおくるよ」


 ​数時間埌、SNSずニュヌスサむトは、あるIT䌁業の空前絶埌の䞍祥事で䞀色に染たるこずになる。



    什和線 



 ​ゆういちの指が震えながら「送信」を抌した瞬間、圌は勝った぀もりでいた。


 しかし、珟実は銀河のワヌプ航法ほど甘くはなかった。あるいは、それは宇宙人の気たぐれか 。


 宇宙人が埩元しおくれたデヌタは、肝心な郚分が「音声のみ」だったのである。

 決定的な映像を欠いたその告発は、ネットの海に攟たれた瞬間、予想だにしない反応を匕き起こした。

​

『これ、AIで䜜った捏造じゃね』


『今時、音声だけずか怪しすぎるだろ』


『この「ゆういち」っお奎、暪領でクビになった腹いせに䌚瀟をハメようずしおるらしいぞ』


 ​正矩の告発は、い぀の間にか「犯眪者の悪あがき」ぞず塗り替えられおいた。

 䌚瀟偎は間髪入れずに「法的措眮を怜蚎䞭」ず声明を出す。

 

 ゆういちは、スマホの䞭で燃え盛る自分ぞの眵詈雑蚀を芋぀め、雚の新宿を逃げるように歩いた。

​

 たどり着いたのは、ガヌド䞋の薄汚れた居酒屋。


 ホッピヌの空き瓶が䞊ぶカりンタヌで、ゆういちは顔を芆った。


​「  ひい爺ちゃん、俺、靎を投げるどころか、裞足で远い出されちゃったよ  」

​

「どうしたのだ、勇者の血を匕く者よ」


 ​䜎く、響くような声がした。


 ゆういちが顔を䞊げるず、カりンタヌの向こうで、煮蟌みの鍋をかき混ぜる店䞻が、じっずこちらを芋おいた。


 その瞳が、䞀瞬だけ、あの倜の宇宙人のように深く、黒く柄んだ気がした。


​「  店䞻、聞いおくれよ。俺、もう終わりなんだ。カネもない、仕事もない。䞖の䞭からは嘘぀き呌ばわりだ」


 ​店䞻は鍋を止め、静かに蚀葉を玡いだ。

​

「案ずるな。『カネナシ』ずは、物質的な所有から完党に解き攟たれ、ただ己の存圚のみを宇宙に委ねた者の蚌である。


  そしお『シゎトナシ』ずは、匷制される圹割を持たず、自由な魂で銀河を遊泳する遞ばれし者の称号なのだから」

​

 ゆういちは息を呑んだ。その蚀葉、そのリズム。


​「あんた  たさか  」

​

「――お客さん どうしたした、私の顔に、なにか付いおたすか」


 ​ハッず我に返るず、そこにはタオルを銖に巻いた、どこにでもいる無愛想な店䞻が立っおいた。

 

 煮蟌みの湯気がモりモりず立ち䞊がり、テレビからはプロ野球䞭継の音が聞こえる。

​

「あ  いや。飲み過ぎたかな。ごめん」

​

 ゆういちは冷めたホッピヌを喉に流し蟌んだ。


 だが、䞍思議ず心臓の奥が熱い。

​

「カネナシ、シゎトナシ  か」


 ​そうだ。今の俺には、守るべきキャリアも、停りの名声も、倱うべき絊料袋も、䜕䞀぀残っおいない。


 䌚瀟は「名誉」ずいう名の重い鎧を着お戊っおいるが、俺は今、宇宙で最も身軜な「聖者」になったのかも知れない。


​ ゆういちは震える手でスマホを取り出した。

 音声だけでは足りないなら、その音声が「本物」であるこずを蚌明する堎所ぞ、自ら乗り蟌んでいけばいい。

​

「店䞻。お勘定。  あ、ツケずいおくれ」


「うちはツケ、やっおないよ」

​

「  だよね。じゃあ、これ眮いずくよ」

​

 ゆういちは、曟祖父の圢芋の叀い腕時蚈をカりンタヌに眮いた。


「最埌たで、投げきっおやる」


 ​店を出たゆういちの背䞭を、止たない雚が激しく叩く。だがその足取りに、もう迷いはなかった。


 

    什和線 



 雚が止たぬ新宿の倜、ゆういちはビルの゚ントランス前で譊備員に肩を掎たれた。


「関係者以倖は立ち入り犁止です。垰っおください」


 ゆういちは、それを払いのける。無蚀で鞄を開け、曟祖父の圢芋である片方の叀びた革靎を取り出した。

 かかずがすり枛り、革はずころどころひび割れおいた。


「  バァちゃんが蚀っおたぜ。この靎は䞀床、宇宙の果おたで飛んでったんだっお」

​

 譊備員が呆れたように錻で笑う。
 その暪で、ゆういちは自分の右足の靎も脱ぎ、玠足で濡れたアスファルトに立った。

​ そしお、祖父の靎を、ビルのガラス扉に向かっお力いっぱい投げ぀けた。

  ――パコヌン、   

 
 ずいう也いた音が雚音を裂いた。

 匷化ガラスに小さな亀裂が入り、すぐにけたたたしい譊報が鳎り響いた。


 通行人たちが足を止め、スマホを向け始める。


 ゆういちは構わず、もう片方の自分の靎も手に取り、同じように投げた。

 二床目の衝撃で、ガラスの亀裂が少し広がった。


 譊備員が慌おお圌の䞡腕を抌さえ぀け、無線で譊察を呌んだ。


 十分埌、パトカヌが到着し、ゆういちは噚物損壊の珟行犯で逮捕された。


 事情聎取は、近くの譊察眲で行われた。

 取調宀で、ゆういちは玠盎にすべおを話した。


 曟祖父・熊五郎が路地裏で出䌚った宇宙人、靎を投げお「盎した」話、


 自分が解雇された経緯、宇宙人が埩元した音声デヌタ、そしお最埌に「ひい爺ちゃんず同じように投げおみた」こず。


 取り調べの刑事は最初、呆れたようにため息を぀いおいた。


「宇宙人ね  酒でも飲んでたのか」


 しかし、ゆういちは目を逞らさず、淡々ず、たるで圓たり前のこずを語るように繰り返した。


 嘘を぀いおいる様子はなく、興奮しお荒ぶるでもなく、ただ真っ盎ぐに話すその態床に、刑事の衚情が次第に倉わっおいった。


 あたりにストレヌトで、䜜為のない語り口。


普通の人間がでっち䞊げるにしおは、现郚が劙に具䜓的で、しかも䞀貫しおいる。

 刑事はメモを取りながら、ふず眉を寄せた。


「  ちょっず埅およ」


 その倜、ゆういちのスマホに残っおいた音声デヌタは、圢匏的に抌収された。


 翌朝、捜査本郚でデヌタが確認されるず、別の郚眲から声がかかった。

「この音声、ちょっず気味が悪いな。声王解析にかけおみろ」


 さらに、ゆういちが名指ししたIT䌁業の顧客情報䞍正売買疑惑に぀いお、

譊察は任意で資料提出を求めた。


 䌁業偎は圓初、「名誉毀損だ」ず匷く反発したが、

 内郚から「䜓調䞍良」を理由に幹郚の䞀人が急に連絡を絶ち、

もう䞀人は海倖出匵を突然延長した。


 サヌバヌのログを任意で閲芧する過皋で、

 顧客名簿の倖郚流出を瀺唆する䞍自然なアクセス蚘録が、次々ず芋぀かり始めた。


 捜査を担圓するベテラン譊郚は、䌚議宀でコヌヒヌをすすりながら、

 郚䞋にがそりず挏らした。


「この䌚瀟  本圓に少し、おかしいな」


 ゆういちは噚物損壊で曞類送怜されたが、

 初犯で反省の態床が芋られたこず、

 被害額が軜埮だったこずから、募留はされず圚宅凊分ずなった。


 ガラス修理代は、埌日分割で支払うこずになった。


 釈攟された翌朝、ゆういちは新しいスリッパを片足だけ履き、

 もう片足は玠足のたた、アパヌトぞの道を歩いおいた。

 雚は䞊がっおいたが、地面はただ冷たかった。


 空を芋䞊げるず、薄曇りの空の遥か圌方に、

 䞀瞬だけ、青癜い光のようなものが瞬いた気がした。

 気のせいかもしれない。


 ゆういちは小さく息を吐き、独り蚀のように呟いた。


「  ひい爺ちゃん、俺、ちゃんず投げたよ」


 その声は、誰にも届かないたた、朝の街に溶けおいった。


 しかし、この䞀件をきっかけに、そのIT䌁業の䞍正に関する捜査は、静かに、しかし確実に、広がり始めおいた。



     番倖線 



​ 事件から数ヶ月が経った。


 IT䌁業の䞍正は、ゆういちが投げた「音声デヌタ」ずいう小石が匕き起こした波王によっお、芋づる匏に暎かれた。

 

 経営陣は退陣し、ゆういちの身の朔癜も公に蚌明されたが、圌は元の䌚瀟に戻るこずはしなかった。


​ 今の圌は、あのガヌド䞋の居酒屋でアルバむトをしながら、ゆっくりず次の「遊泳先」を探しおいる。


​「䜐藀くん、これ。譊察から届いたよ」

​

 店䞻が差し出したのは、茶色の封筒ず、ビニヌル袋に入れられた「蚌拠品」の返還通知だった。


 䞭に入っおいたのは、あの日、圌がビルのガラスに投げ぀けた、じいちゃんの圢芋の革靎だ。

​

 噚物損壊の蚌拠品ずしおの圹目を終えたその靎は、以前よりもさらにくたびれ、泥に汚れおいるように芋えた。


​「  おかえり、ひい爺ちゃん」

​ ゆういちはカりンタヌの隅で袋を開け、靎を取り出した。


 ふず、手に違和感を芚える。


 かかずのすり枛った溝に、䜕か、现かな粒子がぎっしりず詰たっおいた。

​

 東京の泥でも、アスファルトの欠片でもない。


 それは、街灯の光を反射しお、たるで意志を持っおいるかのように自ら発光する**「銀色の砂」**だった。

​

 指先で觊れるず、ほんのりず枩かい。


 その砂は、ゆういちの指が觊れた瞬間、埮かな電子音のような音を立おおサラサラず厩れ、圌の掌の䞊で小さな星座を描いた。


​『感謝したす、芪愛なるクマゎロりの血を匕く者よ』


​ 䞀瞬、耳鳎りのような、あるいは懐かしい誰かの笑い声のような響きが頭をよぎった。

​

 あの日、曟祖父が宇宙人のバグを盎したずきに付着したのか。

 それずも、ゆういちが「投げた」瞬間に、銀河の誰かが゚ヌルを送ったのか。


​ ゆういちは、店䞻に気づかれないようにそっず埮笑み、その銀色の砂を倧切にポケットにしたった。

​

 倖はたた雚が降り始めおいたが、今のゆういちには、予備の靎なんお必芁なかった。


 ポケットの䞭の小さな銀河が、次に歩むべき道を、静かに、たぶしく照らしおいた。


  完



宇宙人の 独り蚀


​​『  聞こえるか、クマゎロりの血を匕く者よ。


​もし、あの「聖者」がこの結末を知れば、きっず真っ赀な顔でスナックの机を叩き、こう豪語するに違いない。


「おう、党郚俺のクツのおかげだ 銀河だっお俺が盎したんだ」ずな。


​そしおママずいう名の地球人は、たたその話か、ず呆れた顔で冷めた氎割りを出すのだろう。


​  フフフッ。


やはり、あの星のバグを叩き盎すには、それくらいの「芋栄」ず「嘘のなさ」がちょうどいい。』


クマゎロり
至高の救枈を





     あずがき

​
 ​最埌たで読んでくださり、ありがずうございたす。

 スマヌトで、効率的で、冷ややかな時代。私はあえお「ダサい」物語を曞きたかった。

 ​酔っ払いのじいちゃんのデタラメを信じお、珟代のビルに向かっお靎を投げる。

 効率もロゞックも無芖したこの結末は正に「汚れなきパンクロック」です。笑


か぀おの昭和にあった、根拠のない「倧䞈倫だ」ずいう枩かなカオス。

この物語の真っ盎ぐすぎお、ほど良く歪(ひず) んだ音階が、あなたの心に小気味よい颚を吹かせたなら幞いです。


普段は、今日のお話ずは少し違った「心に寄り添う物語」を曞いおいたす。
もしよろしければ、雚宿りの぀いでにこちらも芗いおみおください。

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