徳川家康に〝さん〟付けしないよね?
イベント名や番組名に敬称を付す文化
ありますよね。
タレントが「この前『さんま御殿さん』に出させていただいたんですけど〜、」とか。
ミュージシャンが「去年サマソニさんで演奏したときの話で、」とか。
このあと詳しく解説します。が、先に申しておくと、これらは日本語として誤用です。
NHKのアナウンサーがイベント名や番組名に〝さん〟付けしているの、聞いたことないですよね?

日本語のルール
個人の感情は関係ありません。
正しいのか、誤りかの話です。
たとえば。
・犬が死んだ。 ←正しい
・犬が亡くなった。 ←誤用
愛犬が天に召されたときに「死んだ」という言葉を使いたくない気持ち、とても分かります。ただ、試験の答案用紙に動物対象で「亡くなった」という表現を書いてしまうと撥ねられます。
繰り返しますが、気持ちの問題ではなく、現代の言語として正しいか間違っているかの話です。

名称の話
それでは、ミュージシャンを例に説明していきます。
個人名とユニット名で異なる
個人には敬称を付します。
グループやユニット名には敬称を付しません。
たとえば、
〝サザンオールスターズさん〟は誤用です。
〝サザンオールスターズの皆さん〟等が適切な表現です。
一方で〝桑田佳祐〟という個人名には敬称を付して〝桑田佳祐さん〟と呼びます。
〝YOASOBIさん〟も誤用です。
当然〝Ayaseさん〟〝ikuraさん〟は正しいです。
つまりグループ名には敬称を付さないルールなので、
〝嵐さん〟
〝ゆずさん〟
〝ドリカムさん〟
…これらはいずれも誤用です。
〝CHAGE and ASKA〟を〝チャゲアスさん〟と呼称するのは誤りですが、どっちがチャゲでどっちがアスカなのかは明確なので〝チャゲさん〟〝アスカさん〟と個別では敬称を用いるのが自然です。

ここまで、ご理解いただけましたね?
そうなってくると、ややこしいのが。
たとえば〝MISIA〟は?〝Ado〟は?
明らかに本名じゃないだろうからユニット名あるいは企画名と捉えるべきかもしれない。けど、ソロで活動しているから〝さん〟付けするべきなのかなあと迷います。
報道番組などを視聴していると、これに関しては言語のプロであるアナウンサーでも、人によって表現が変わります。
最もややこしいのが。
〝Superfly〟のような事例です。
もともと2人組ユニットだったのが、ソロになった。
だから正しくは〝Superflyの越智志帆さん〟と言うべきです。
でも〝Superfly〟というユニット名のまま活動しているわけだから、いちいち個人名を足すのは無粋ですよね。
そうなると、どう呼ぶべきなのか迷います。
故人に対しては?
〝徳川家康さん〟って言わないですよね。何百歳も上の超大先輩ですけれども。
故人に対しては敬称で呼ばないというのが日本語の原則です。
でも、自分が生まれていた時代に生きていた人に対しては〝さん〟付けで呼ぶことが多いです。
NHKアナウンサーも大体〝志村けんさん〟〝三浦春馬さん〟〝中村玉緒さん〟と呼びます。原則に従うなら、必要ない敬称なんです。でも、人としてという倫理観からのことです。
そのアナウンサーが、たとえ三浦春馬さんよりも歳上だったとしても。
また、日常の話でいうと、亡くなった親族に対しても、故人について語る際、生前に呼んでいた敬称や愛称のままで話しますよね。これも自然なことです。

番組名やイベント名
世代にもよるかと思いますが、私は激しい違和感を抱きます。
〝さんま御殿さん〟〝Mステさん〟〝TVタックルさん〟など。
…〝さんまさん〟〝タモリさん〟〝たけしさん〟でしょ?
番組やイベントは、人じゃない。
不必要な敬称です。
「この前、劇団四季さんの舞台を見させていただいたんですけど〜、」なんて。これも、
「この前、劇団四季を観劇してきたんだけど、」で良いんです。

古来からの文化
二重敬語というのは我が国で1000年以上前から存在する文化です。
〝○○させ給ふ〟など。
現在、
「仰られる」
「お伺いさせていただく」
などの重複表現が巷で広く使われています。
もちろん誤用です。が、それらを口にしている人の割合が高くなってくると、もはや間違っている多数派が正しいと認識され、いずれ辞書に載る日が来るわけで。
そうやって言語の歴史は紡がれてきました。
この先も、きっとそうなんでしょう。

100年後の社会の教科書には「江戸幕府を開いたのは徳川家康さんです」なんて載っているのかもしれません。
