継ぎはぎの温泉宿。
畳の目の繊維に人差し指をあてる。
テーブルの盆にひとつ。
用意された温泉饅頭を、食べるのだ。
年季の入った小さい冷蔵庫。
腰掛けの椅子が、対面になって。
窓から見える景観は、
いつも真っ暗で、厳しさをもった、
やわらかな雪だった。
レトロなガス灯と、降り続ける雪。
連なる木造の宿場と商店を仕切るように、
掛かった赤い橋と、
上流から流れてきた川が見える。
吐く息の白さが、
温泉街の湯気に、じんわりと溶けていく。
長靴を履いた旅館の作業員が忙しそうに、
ダンプで積もった雪を川に落として。
あぁ明日の朝食はなんだろうね。
温泉はいつ入ろうか。
ただ、何もしなくていいという、
贅沢を楽しんで。
そんな、空想に耽るのだ。
脳は、記憶を継ぎはぎした映像を、
映画のように、みせてくれる。
空想の宿は、暖かく、
雪の結晶は、一つとして同じものはない。
ただのひとりも。
わたしを知らない場所に行きたかった。
寺航さんより、エッセイしりとりのバトンをいただきました。
企画はこちら↓
締切が8月31日のため、バトンはなしでお願いします。
