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周波数


三〇二号室の田村さんが亡くなったのは、梅雨の晴れ間の午後だった。

遺品の整理は、いつも通り由美がひとりで担当した。着替え、入れ歯、色褪せた家族写真。段ボール一箱に収まってしまう暮らしの量に、由美はもう驚かなくなっていた。

クローゼットの奥から出てきたのは、古いポータブルラジオだった。プラスチックの外装は黄ばみ、アンテナは根元で折れ曲がっている。田村さんがラジオを聴いていた記憶は、由美にはなかった。テレビさえ、ここ数年はつけていなかったはずだ。

電池を入れ替えると、豆電球のようなランプが灯った。ダイヤルを回す。ノイズだけが流れる。局を探して端から端まで動かしても、音楽も、声も、何も出てこない。ただ、砂を撫でるような音がスピーカーから漏れ続けるだけだった。

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