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日記:7月のまとめ

 暑くなってきたがどうお過ごしだろうか。先月のまとめをやっていこう。



7月はたくましく生きている

 毎度のことながらいきなり忙しくなり……いい加減な上司の不手際で休日出勤中に厄介事を押し付けられるなど激しい怒りを抱えており、人間をドラム缶に詰めて魚のエサにするか 私有地に埋めタケノコや山菜の養分としたい欲求が高まっている。ねぇダーリン❤ 山と海のどっち(に遺棄されるの)が好き?

 とはいえ時間を見つけてコンテンツはわりと順調に触っているような感じ。映画を見たり、サマーセールで買ったsteamのゲームが面白かったり、今月はそっちの話も結構できそうだ。長くなりそうなので好きなとこだけ読んでくれ。


音楽

All Time Best Album THE FIGHTING MAN / エレファントカシマシ

 椎名林檎との「獣ゆく細道」が良かったので宮本浩次らのエレファントカシマシも聴き始めていた。

 ものすごく王道のブルースをやっており、とにかくひたすら外れ者や疎外者、社会に電池として使い捨てられていく人の側に立った歌詞が多く 熱い人間性を感じ取れる。経済が冷え込み 人を人とも思っていない会社が多かった90年代を中心にずっと支持を受けてきたのも納得。
 いままであまり興味がなかったブルースの良さがわかるようになったというか、自分のこととして体験を思い起こして聴けるようになったことに 自身の経年変化を感じる部分もある。歳を取ることで考えが固くなるなどとも言われるが、昔わからなかったことや立場を想像することができるようになって楽しめるものが増えたりもするし 案外とてもいいことかもしれない。


 CMの曲として有名なものも多く「今宵の月のように」など一度は耳にしたことがある楽曲が目立つ。しかしじっくり聞いてみるとCMだけでは見えてこなかった曲のストーリーも見えてきて非常に良い。
 「俺たちの明日」は働く人への応援メッセージでもあるが 通しで聴くと実は「昔を思い出しつつ、嫁子供が出来ていろいろ変わった互いの今に思いを馳せ、別の道を行ったせいで最近会っていないが お前の輝きは俺が誰より知っていると告げる」などと既婚者男性から既婚者男性へのクソデカい矢印を歌っている曲であり、たぶん…男性同士の関係性に特殊な興奮を見出すお姉さま方にもおいしい一曲なのではないかと思う。試しに皆さんも一度 聴きながら歌詞を検索してサラリと読んでみてほしいんだが、思ったより湿度があるぞ。

 とはいえ疎遠になってしまった友人というテーマには純粋にわかるところもあり 心当たりがある人も多い内容だろう。
 おれも十年近く連絡を取っていないが 公園でブランコを漕ぎながら人生観や家庭の事情を語り合ったり、誕生日に互いの家を訪ねてわざといらないガラクタを贈り合ったり、夏のクソ暑い日に自転車でどこまで行けるか知らない道をずっと行き続けたり…そんな時期があった。人生いいことばかりではなかったと思うが、それでもあの日となりにいた親友たちの横顔は鮮明に浮かんでくる。ふわふわとこの世から消え去りたくなる一瞬に 自分を生きることへと結びつけてくれる、大切な思い出のひとつだ。

 ……ただこの曲に関しては…普段から感想記事と称して存在しない行間にインデントを打ちまくり 無限に解釈を捏造する因果な商売をやっているからでもあるが、「オマエがいつかくれた優しさが今でも宝物」などもう…おれは"そう"としか聞こえない。経年変化で心が汚れてきたせいだ。やっぱり歳を取るなんてロクなもんじゃない。


宮本、独歩。 / 宮本浩次

 こちらはミヤジという人物により迫ったソロ活動のアルバム。
 こっちにも収録されているが、やはり「獣ゆく細道」が本当に良い。自分の思想や考え方にアイソトニック飲料くらいスルスルと、しかし力強く馴染んでくる。

 改めてこの場でどう好きかを語るとすると、まず歌いだしから「この世は無常」と前提を置いてあるところにある。
 ちょっと強めな思想の話になってしまうので読み飛ばしてくれていいんだが この世を花咲く庭園と思っているおめでたい人類というのが本当に心の底から嫌いなので…生きづらい穢土だと再確認してから入っていってくれるところにとても安心を感じる。
 そんなふうに世界の真理を悲劇と見抜いたようなツラで隠者ぶる一方で、実際のところペシミズムに泥酔しているだけで何もしたがらないアル中みたいな集団にもどうも馴染みづらい。でも「間違っている世界と戦っている自分カッコいい!!」と熱病に浮かされながらアジるキラキラ活動家のような手合いにも辟易する。
 この曲はその点で「この世はどうせ終わっておるので 妙な遠慮をせず生きろ」と個人サイズのちょうどいいメッセージで啓発してくれるのがとても好きだ。主語がデカすぎないのが良い。困難な世界なのは承知の上として そこに対して人がどう生きるかという信念の話をしている。

借りものゝ命がひとつ 厚かましく使ひ込むで返せ

獣ゆく細道 / 椎名林檎と宮本浩次

 なかでもこのセンテンスのなんと美しく逞しいことか!捕食者の隆起した筋肉のしなやかさをも思わせる。
 人間は雑食性の動物だ。なにもいそいそと遠慮して人目をはばかりながら草を食む必要はない。こんな腐りきった世界では図々しく贅沢に……奪い取り、取られたものを取り返すくらいの態度で生き抜くくらいでよい。生きづらく自分を許せない人々への、そんな後押しと赦しを感じる。燃えるように生きろ、細かいことに構うな、楽しいことを喰らい尽くせ!と 檄を飛ばしてくれる熱量が本当に好きだ。

 かつてエレファントカシマシの契約が一度レーベルから打ち切られバンド活動に挫折があったこと、そこから己を見つめ直し再起したこと、難聴と戦って舞い戻ったことなど 宮本浩次自身も苦難を乗り越えてきた人だというバックを知ると聴き応えが増す。
 加えて彼がこの曲を椎名林檎とともに 紅白でエネルギッシュにパフォーマンスしたとき既に50代、いまや還暦というのだからすごい話だ。おれが死ぬまで歌い続けてくれないかなぁ……。オマエも鬼にならないか、ミヤジ。


 あと本当に申し訳ないのだが 悪いインターネットのせいで冬の花を聴くといろいろな雑念ミームが脳裏にKICK BACKしてきて集中できず こんなどうしようもない人間になってしまったことに哀叫する。いい曲なのに……。お前 マジでインターネットやめろ。


八月の銃声 / ポップしなないで

Electric / ポップしなないで

 そうだ、ポしなを聴こう。ということでしばらく離れていたポップしなないでのミニアルバム「八月の銃声」とアルバム「Electric」を聴いていた。これから八月が始まる時節にちょうどいいタイトルだ。

 従来の独自色の強かった作風から、流行ポップを意識した曲調に寄っているのが新鮮だ。これはずとまよっぽいな…これはサカナクションっぽいな…これは米津っぽいな…と かわむらさんが自分野のロックサウンドにこだわらず手広くやっている感がある。
 しかしそこでポしなの凄いところは かめがいさんの声の使い方が声優ならではの他じゃ絶対真似できないボーカルになっていること。何をどう寄せようがポしなは ポしなだな…と核の部分がしっかりしているので安っぽくならない。


 ポしなは楽曲のテーマが様々で 隣の家の子が弾くピアノを部屋でなんとなく聴いている引きこもりの曲だったり 朝の通勤電車に詰め込まれる疲れ切った労働者の曲だったりと 表現がカラフル。
 たとえば「あかるい秘密結社」「エレクトリック修羅」などは社会人になって変わっていく自分の価値観についてで 仕事に疲れている自分にとってタイムリーだったなと思う。まあ仕事で疲れてないときがないので おれにとって労働哀歌はいつでもタイムリーなのだが……。

 一方でオトナなテーマとして男女の破局・別れを歌っているにも関わらず 明るく童謡チックにまとめている「ぼくがきみを」などピリッと辛い一味のような楽曲もあり、相変わらず曇りのないリリックの切れ味を感じさせる。いつ聴いても面白いユニットだ。


カメラレンズ

AF-S DX NIKKOR 55-200mm f/4-5.6G ED VR II

 そういえばニコンの一眼レフを買ってから、これ用の望遠レンズを持っていなかったのでAF-S DX NIKKOR 55-200mm f/4-5.6G ED VR II を買った。いわゆるキットレンズというやつで、カメラのセットに付いてくるオマケ的なレンズではあるのだが こいつは妙に評判がいいのでこれにした。


いいね~~

 そもそもニコンのキットレンズは「オマケだろうが手を抜いていない」と全体的に評判がいいのだが、散歩しながら試写してみるとこれまた良い。カリッと解像し、細かなところまで鮮明に描き出してくれる。
 小径で持ち運びやすさ優先なので流石にF値の暗いレンズであり 室内や夜の撮影は厳しいのだが、屋外や明るい場所ではその本領を発揮する。いいのだろうか?こんなに質の良いレンズをセットにしてしまったら誰も新しいレンズを買わなくなっちゃうぞ。まあカメラオタクはみんな金銭感覚と頭がおかしいから いいレンズ持ってようが無関係に買い増すんだけど。

 ふだんはニッパの標準域ズームばっかり使っているので 暗さからくるシャッタースピードの鈍化、ISOでの底上げなどセッティングに戸惑ったが……物理的に立ち入れず、接写できないところにある被写体や 近づくと逃げる生き物を撮りやすく、フレーミングの自由度に感動する。Fマウントという時代に取り残された遺物にしておくにはあまりにも惜しい銘玉だ。


 まっ 能書きはこんなもんでいいだろう。何枚か撮った写真を貼っておくから良かったらサラリと眺めてみてくれ。


ハグロトンボ
開きかけたハスの花
ハスのつぼみ


映画

落下の王国

 先月ちょっと話題に出していた落下の王国を観た。長い間映像ソフト化されておらず観る手段がなかったが、4Kリマスターと追加シーンを加えた新版が劇場で再上映され、ブルーレイとU-NEXTでの配信で観ることができるようになった。
 当初「有料レンタルだよな?有料会員になった上でさらにお金払うんか?まあええけど」と思いつつU-NEXTに登録したが、なんと初月無料キャンペーンの特典でもらった600ポイントを使うことで いっさい無償で観ることができた。もしまだU-NEXTを使ったことがなくて本作が気になっているなら クレカやデビットカードでアカウントだけ作ったらタダで観られるのでオススメしておく(無料期間が終わると引き落としが始まるので、その後U-NEXTを続ける予定がなければ解約しておくのがよい)。


 1915年、アメリカ、ロサンゼルス。主人公は大怪我を負い 無声映画のスタントマンの道を諦めかけている青年・ロイ。さらに追い打ちをかけるように 将来を誓った恋人を映画の主役に奪われ、絶望して自死を企図する。死のうにも下半身が動かせない彼は一計を案じ、たまたま知り合った少女・アレクサンドリアにおとぎ話を聞かせ、懐柔して毒薬を取ってこさせようとするのだが……というあらすじ。

 世界各国の奇景・奇観で撮った幻想的な風景に目を見張る、すばらしい映画。それでいて独善的で理解を拒むアーティスティックな脚本にはなっておらず、しっかりと地に足ついたストーリーが展開される。
 故・石岡瑛子氏の担当する服飾も見どころで、アイコニックかつヒロイックでありながらも キャラクターの性格や役柄を捉えて視覚的に納得させるロジカルさが垣間見え、小道具なども心情の表現に有効に活用されている。これはいい映画を見た。


 少しネタバレに踏み込むので 見る予定がある人はこの後の話を飛ばしてほしいのだが、物語の持つ力を感じさせるストーリーがとても良かった。
 ロイは当初、アレクサンドリアを操縦しようという目的のために…そして死に向かって突き進むために 物語を"利用"しようとする。しかしアレクサンドリアとの交流を通して少しずつ彼の心境が変化していき 物語が二人の手で共に創造されていくものになり、いつのまにか物語の力によって語り手のロイ自身の心が癒されていく。
 見失ってしまった自分の生きる意味を、誰かの祈りが込められた物語や あるいはふとしたさりげないエッセイのなかに見つけ、辛い現実にひとときの救いをもたらしたり あるいは人生を変えてくれることがある。そういった経験に心当たりがある人も多いだろう。人を救い導く 物語の力に真摯に向き合った作品で 静かに心打たれるものがある。
 フィクションを作って語ることに何かとややこしさがつきまとう昨今、少女の想像の羽ばたきがもたらす救いはひときわ眩しくおれの目に映った。


 とくにエログロシーンなどは出てこないので お茶の間でも見やすいし誰かと観るにもなかなか良い作品だ。作品の長さもちょうど2時間にまとまっており、長すぎず手頃な尺なのも好み。誠実で優しいお話なので 広い層に向けておすすめしておく。


小説

反ミーム部門は存在しない


"わからない"敵と どう戦う?


 SFと言えば!の早川書房から日訳版が出た、話題沸騰の海外小説。ジャンルを振り分けるのが難しいが、インテリジェンスバトル小説、ディザスターもの……あるいは 地上最悪のお仕事ノベルとでもしておこう。

 とある組織の部門長として働く女性、マリー・クイル。彼女の属する《機関》は人類の盾となり 超常的で危険な存在アンノウンを収集して封じ込め、研究して技術を取り出し 人類の破滅を防ぎながら同時に繁栄へと役立てている。
 今日も今日とてわんさかアンノウンが問題を起こし、慢性的に人手不足で忙しいというのに 《機関》の幹部に呼び出しを食らった哀れな管理職ことマリーだったが、ミーティングを前にある違和感を抱く……というお話。


 本作は「反ミーム」という概念を主題とした、静かなる戦いの小説である。
 ミームとはリチャード・ドーキンスが提唱した「情報の遺伝子」のこと。人から人へ受け継がれたり伝染したりして殖えていく情報や文化を 生き物になぞらえた言い方だ。ただし《機関》流に言うなら少し意味が違い 人間の精神や認知をいじくって洗脳してくるクソッタレ連中のことを指す。たとえば報告書に「ミーム的脅威を持つアンノウン」と書いてあったら”コイツは知らない間にお前の意識をパン生地みてえにコネコネしてくるから気をつけろ”、といったことを意味する。
 反ミームは その逆の厄介者だ。人間を操ったり 致死性の解けない呪い、不快なゴミ情報を押し付けてヒトに干渉するミームの逆……つまり認識できない、見えない、わからない、といった不可知の阻害をしてくる輩のことを言っている。「こちらの知らんうちに勝手に問題を起こし それがどういう問題かすらも認識できない何か」と説明するのが適当だろう。
 というわけで大変喜ばしいことに 作中世界にはびこる大量のアンノウンに比例して、この反ミーム的脅威を持つアンノウンも掃いて捨てるほど存在する。そのなかには人類を滅ぼそうとか手当たり次第にブッ殺そうとしているバケモノも含まれているぞ。う~ん、一言で表現するなら最悪だ。
 そして本作の主人公ことマリー・クイルはこの反ミーム部門の部門長であり、隙あらば見えない死角から自分たちを殺そうとしてくるこれら最悪のクソッタレをふん縛って隔離室にぶち込むエキスパートである。一手間違えればポロリと人の命が失われる、あまりにも特殊な彼女の業務や秘密結社の職場風景を堪能しよう。実に楽しいお仕事小説だな!


 さて、ざっくりどんな作品か説明してきたが……ここまでを一望して 既にピンときていた人もいることだろう。実は本作、元はSCP財団(SCP Foundation)を題材とした二次創作小説である。
 もともと小説を書いていた作家のqntmクォンタムがネット上で私的に連載し 同人版を出版したりしたものだったが、商業化するにあたり財団そのままでは権利的にマズいといった事情や SCPを知らない読者層にもわかりやすくするため、大幅に改稿して再編したのが当作品となっている。そのため、四六時中得体の知れない物体の報告書を読むのが好きな諸氏にとっては 大変馴染み深い世界が広がっていることだろう。

 一方でその改稿も見事なもので、「SCPなんて聞いたこともないよ」といった人々にもわかるよう非常に丁寧な導入をやっており それでいてクドさがない自然な展開に落とし込んでいてこのあたりとても上手だった。
 冒頭で 反ミームを食らって記憶障害を起こし、状況をうまく認識できていない職員に改めて説明する…という格好で《機関》(まあ財団のことだ)の解説を盛り込んでいる。反ミームという作品の主題を関連付けながら鮮やかに世界観へと引き込んでおり、実にスマートで無駄がない。

 少し脇道に逸れた話をするが、この手のSCPを題材にした作品は なかなか舵取りが難しく……たとえばCONTROLというゲームなんかは非常に面白いんだがリスペクトしながら独自性を出そうとした結果わりかし難解な世界観になってしまっている。あれは原典風に言い換えると 財団に攫われた弟を探しに来た現実改変能力者が 財団のお家騒動に巻き込まれたついでに上位存在(ボードとヒス)の代理戦争をやらされるって感じの話なんだが、事情が込み入っているうえに用語が多すぎて SCPに置き換えながら解読しないとたぶん全くわからんと思う。
 二次創作でやっとるうちはSCPの基盤に乗っかれるので世界観の説明もいらないし 非営利なのでCCライセンスに準ずる限り権利的な問題もないが、商業でやる場合はCONTROLのようにうまく独自色を出して 財団から"離れる"ことが必要とされる。これがなかなか難しいのだが、本作は一般的なSF小説の枠組みに流し込んでおり 秀逸な換骨奪胎をやってのけたな…と思った。

 SCPを知らない人にも楽しめて、知ってる人にも「ここのこれはアレだな」とニヤリとできる いい塩梅の作品だ。賞をいくつか取っているのも頷ける。
 個人的には…自分の仕事もある種の悪いインシデントを食い止め続ける「門番」的なところがあるので、スケールは全く違うものの 身を削って邪悪と人類社会の間に立ち塞がり続けるマリーに感情移入するところもあった。あと 職場環境が終わってるところも。

 読後にはきっと おれたちの世界にはKクラスシナリオがなくて良かったな、と当たり前の幸せを再確認できるステキな小説だ。あるいはもうすでにおれたちは…ドス黒い太陽の下 臓器むき出しで硫黄を吸ったり吐いたりしている怪生物なんかに変異していて……認識阻害でまだ気がついていないだけなのかもしれないが。


マンガ

こんづくし

 傾城高等女学校。化け狐たちが通うケモケモしい女子校にめでたく入学した主人公・逆茂木いばらが キツネ高校ライフを謳歌しようとする物語。いたずら好きの枯尾花ススキを筆頭にクラスメイトの友達も増えていくが、ただひとつ問題があり……



いばらちゃんは人間なのだった。

 ここはキツネオンリーの化け学校、人間であることがバレたら即退学!!はたして逆茂木いばらは 卒業までバレずに通い通せるのか!?!?という青春ギャグコメディ。

 次にくるマンガ大賞の候補にもノミネートされており 安定した面白さを誇る作品だ。前から追っていたがぜひ皆さんにも読んでほしいので紹介しておく。



目立ちたくない本人には切実な問題

 この作品は前述の通り キツネを化かして生きていく作品なのでハッタリとブラフを求められることになるのだが、いばらちゃんが異常なほどに逞しく器用で機転が利くため 毎回うまく捌いていくのが面白い。う~ん まあ ふつうは女子校にハッタリとブラフに長けた人材 いらねえんだけどな。
 作者さんが描いていた前身的な作品、ぶんぶくティーポットもなかなかに治安が悪かったが 今作もガラが悪くて最高だ。なんでケモ少女のマンガなのにこんなに魁!!クロマティ高校の読み味がするんだろう。よく考えたらワギモコとかメカ沢くんじゃねえか?なんで女子校が舞台のマンガにメカ沢くん枠があるんだ????


 おれの中の女子校概念が激しく揺らいでいるのは置いておくとして、本作はシュールなギャグではありつつも ちゃんと女子同士が仲良かったりやんややんややっている癒しもあってかわいらしい。内容のハードさ(?)に反して絵柄が丸みを帯びてキュートなので ちょっと少女漫画っぽさもある。登場人物の倫理観がめちゃくちゃ変という一点を除けば りぼんとかまんがタイムきららでワンチャン通せるかもしれない。
 森長あやみという作者名からはわかりにくいが、原作担当と作画担当のチームで制作しているので かわいい絵柄からヤバい発言がまろびでるのだと思われる。こんなに常時作画貫通してるマンガは淫獄団地くらいしか知らねえよ。

 笑えてかわいい ケモ要素もあるキツネ漫画として非常にオススメな作品だ。逆茂木いばらという益荒女ますらめが征く覇道を しかと見届けよう。



オススメしといてなんだけど
やっぱ このマンガやばいかもしんない



ゲーム

The Case of the Golden Idol


オマエの一族 呪われすぎだろ。


 タイトルを訳すと「黄金像事件」。その名の通り 黄金像を巡る殺人事件の数々をたどり、何が起きたか推理しながら クラウズレー家にまつわる数奇な運命を目撃しよう。


 本作は現場の証拠を調べていくことにより "ワード"を入手し、虫食いになった謎解きボードに当てはめていくことで 事件の真相解明を目指していくゲームだ。外見や行動の特徴を見ながら人物の名前を並べ、誰と誰がどうなった?凶器や死因は?とひとつずつ整理していくことで 一本の線が浮かび上がってくる。
 各事件の難易度も凝っていて、序盤の事件はかなり単純で 見ればすぐにわかる殺人現場だが、だんだん殺人の手口が巧妙になってきたり……あるいは 犯人がやりたかったことに対して計画外の事故が起こり 玉突き式に変なところで人が死んでいたりする。絡まり合った因果関係の糸をほどいていくうちに「殺人なんてものをやらかすのは 隠し通す自信のある奴か、あるいはとくに後のことを何も考えていないアホかの二択なんだな…」という真理がヒシヒシと伝わってきて学びがあるぞ。

 作品を貫く一本のシナリオもまた面白い。作中では 黄金の像を発掘して手に入れたクラウズレーという氏族の人々が「呪われてんじゃねえか?」と思うほどに殺人事件に見舞われまくる様が描かれているのだが、なぜ黄金像の周りでこんなに殺人事件が起こるのか?というそれら全体への謎にもきちんと答えが設けられており お話が非常によく出来ている。
 一件一件の事件だけを見ているうちは 不可解な部分が残るが、プレイを通して全体を俯瞰すると 意味のわからなかった証拠や何気ないサインの意味が符合し、巨大な悪意のタペストリーが織り上がる。


そのカツラの造形もなかなかの事件だろ

 殺人事件を取り扱うミステリではあるが、妙にユーモラスで笑えるシーンも多く シリアス一辺倒にはなっていないのが小粋だ。当人らはいたって真面目な話をしているのだが 登場人物のツラが軒並み濃いせいでオモシロが生まれてしまう。おろくさんが転がっとる現場には違いないのだが、変な緊張感がないので重くなりすぎずに遊べる間口の広い設計だ。


 おれは本編をクリアしてDLCを触っているところだが……そうだな……ネタバレがないように感想を言うとすると アイツが大金星挙げてる事件でバカ笑った。酔っ払い大砲ブッパ男、お前がMVPや。
 最後の最後で物語の最大のピースを埋める殺人事件の推理があるのだが そこも風刺的で好きなところだ。とある人物が高邁で徳の高い理想を掲げながら、掲げたその手でひねりつぶすように弱者を殺している。痛烈に矛盾を指摘するシーンで、ただのミステリに留まらないメッセージ性を感じた。


 日本語への翻訳についても触れておくが、本作は若干ややこしいことになっており オリジナル版とNetflixが出資して再編したリダックス版が収録されている。
 オリジナル版には日本語訳がないが、リダックス版には入ってるので リダックス版を遊ぼう……と言いたいところだが、ハッキリ言って安い仕事をやってるタイプの翻訳であり 途中からゲームの理解が不可能になる(※)。
(※…まあしょうがない部分もある。ゲームの翻訳の仕事は基本的に台本やテキストだけ書面で渡されてゲーム画面の資料を見せてもらえないことが多い。私費と時間を投じて遊びながら訳せというのも酷だ)

 その点において 非常に気前のいい有志の方が オリジナル版をDLCまで含めて謎解きを考慮しつつ翻訳しているMODがあるので、それを導入して遊ぶことをおすすめしておく。
 個人的にこの翻訳の力の入りようにもビックリした。単純なテキストの書き換えだけでなく一部イラストも描き下ろしで差し替えられていたり、暗号文を日本語でも成立するように工夫するなどマジで気合が入っている。執念を感じる。


罪状の8割くらい「別にいいだろそんなの」な人

 難易度については おれはわざわざ縛ってノーヒントで頑張ったので「何が起きてるかわかってるんだけどどこにワード入れるかがわからない…」と詰まる部分があったが、ゲーム内のヒントシステムを使えばいくらか解きやすくなるので そこも気が利いてるなと思う。

 クスッと笑えるユーモアがありつつ、ダークなところも見え隠れし、かなり骨のある推理もありで 総じて面白いゲームだった。評価が高いのも納得する。


活俠傳


唐門の者は、全身どこもかしこも凶器である。

 すさまじい容姿に生まれてしまった男、趙活。生きるために貧しい生家を出て唐門という武道一門に入り、外弟子として小間使いにされながらも 戦いの道を極めた武侠として名を馳せることを夢見てきた。そんないまいちパッとしない彼だがある日 転機が訪れ……?という 武道家育成シミュレーションゲーム。
 趙活を育てて様々な人生を過ごしてみよう。知能と弁論を磨いてコスい悪事を働き フィクサーになるもよし、頑強で勇猛な闘士となるもよし。温和で人徳に優れた君子として振る舞ってもよしだ。


立ち絵差分がひたすら面白い主人公

 本作は先述の通り 顔で人生を凄まじく損している趙活くんが、頑張ったり…あるいは頑張らなかったり…顔芸を披露したりして唐門で過ごしていく。いわゆるパワプロのサクセス方式のゲームであり、「今週はこれをする」という行動を決めることで パラメーターが上下したりイベントが起こっていくぞ。

 趙活も愉快な奴だが、個性豊かな登場人物がイベントで物語に彩りを添える。
 このイベントがまた秀逸で…ものすごく細かくこれまでの選択やパラメーター値を参照して差分が発生するようになっている。たとえば先輩をコテンパンにボコったり、あるいは「まあイヤな人じゃないし今回ばっかりは顔を立ててやるか…」と勝ちを譲ってやったりするなど そんな感じの行動のひとつひとつが趙活くんの人生を変えていく。それが吉と出るか凶と出るか?周囲に好かれたり嫌われたり、先の予測がつかないのも面白いところだ。


卑屈だが気のきく奴でもある

 個人的にこのゲームの好きな部分は 趙活くんのバイタリティと性格が絶妙なところにある。
 人生が多難すぎてやさぐれてはいるが、一度頑張ろうと決めて奮起すると趙活くんは持ち前の雑草魂で誰よりも食らいつく。そのさまが見ていてアツく、行動をもって言葉や外見よりも雄弁に人間の真価を証明してくれる。なんだかんだ言っても実際に手を差し伸べて人を助けたり 芸を磨く実行力のある人間には惹かれてしまうものだ。
 プレイスタイルにもよるが、趙活くんはわりと周囲のことをよく観察しており たとえば料理番をやるときは「みんな消化が悪いから食べやすいものを作ってやろう」と気を利かせるなど内面の素地が良いことが窺える。しかも考え方が柔軟で覚えが良く、雑務を長年こなし続けたせいで炊事洗濯に鍛冶掃除・食料調達とだいたい一人で生きていけそうな技能が備わっている。…こいつ武道家以外を目指したほうが大成するんじゃないか?
 周囲もそんな趙活くんの行動を見ており、短慮な小人物は彼を侮るが、外見で判断しない聡い人物ほど 趙活くんを高く評価するなど人間関係の作り込みも精緻だ。

 さらには、修練を積めばその苦手な武道をすら身につけてみせる。唐門の武人は全身が暗器、何を使っても敵を死に至らしめるのだという。遊び方次第では 鎧袖一触とばかりに敵を蹴散らす趙活くんを目にすることも可能かもしれないぞ。


 コメディ風味の強い作品で やる夫のあんこスレから影響を受けているなどインターネッツの風味がする作品だが、それはそれとして文章力が激烈に高いところもまた凄い。漢詩的な言い回しや比喩を駆使し、絶望の底を生きてきた趙活くんの胸中や 時代に翻弄される人々を活写している。こんな作品をスタートアップ時には2人、現在は4人のコアメンバーで作っているってんだから驚きだ。
 そうした原文を殺さず 日本語化している有志の翻訳力も恐ろしいの域に到っている。最近は日本人メンバーも増えたらしいが、中華圏の武侠小説に詳しい人々が自然な言い回しで読める日本語に落とし込んでおり 遊んでいてなんら違和感がない。


本当にかわいそうとしか言えない

 少人数や長期間にわたる開発ゆえか、UIが多少ごちゃついており 導線がわかりづらく気づきにくい部分もあるが……笑えて燃えてなおかつ詩才に感じ入らせる余地もありと、読み物の質としては極めて高い部類に入る。

 まあ、論より証拠だろう。触れてみればその面白さがわかる。多少の読み物が苦でない人には是非オススメしておく。


メンヘラリウム

※諸注意
以下、メンタルヘルスに関する誇張した表現がある。筆者はあくまでフィクション上のジョークとして現実の精神疾患とは分けて考えている。差別を助長する意図はなく、現実の病態とは違うものとして留意してほしい。現実で周りの人にそういう事をやったり言っちゃダメだぞ。
また、そういった内容に敏感な方は読まずに飛ばしてくれ



暗黒ギャンブル再来!!


 いろいろあって乱杭歯のショットガンおじさんとの死闘、借金返済スロッカスなどなどに続き 今度はチンチロにタマを張る鉄火場に放り込まれた。帝愛の債務者かよ。
 情緒不安定な女の子に血液をチューチュー吸われつつ、なんとか7日間チンチロ勝負を制して生き残ろう。賭ける血が尽きたり彼女の不興を買えば、待っているのは…死だ。


 CV.夏吉ゆうこのメンヘラちゃんに攫われたプレイヤーは 己の血を賭けながら規定スコアまで点数を勝ち取ることで死線を越えてゆく。
 使うことで効果をもたらすアイテム、特定条件ではたらくお守り、勝負をやり直すリロールを駆使して立ち向かおう。ただし1勝負に勝っても負けてもBETしたぶんの血はショバ代として吸われてしまう。くたばるまえに勝ち抜けろ!


 チンチロ勝負というと賭け事としては若干マイナーで、他人のベンツのエンブレムをもぐ暗い趣味の人間くらいしかルールを知らない可能性があるが そこんとこメンヘラリウムは出目表をいつでも見られるようにしてくれている。メンヘラちゃんは情緒不安定なだけで結構親切にゲームを設計してくれているぞ。親切ついでに他人の血を吸ったりしない常識を持ってくれていたら文句ナシだったかもしれない。……オマエって不思議ちゃん?

 そうして実際に遊んでいくので ギャンブル漫画でいまいちピンとこない人にとっては手を動かしてルールを覚えられる面もある。チンチロの解像度が上がり、ハンチョウたちのシゴロ賽がいかに許されざる行為なのかよくわかったりするぞ。ただ、スポーツ遊戯性が高い麻雀などと異なり チンチロをやるときはだいたい違法賭博がセットになっているのでおれたちの人生で実際に役立つ場面があってはいけない。


オイ……


オイッ!!!!!!!!!!!

 さて、当然暗黒ギャンブルゲーの御多分に漏れず 本作もアイテムを使ったりお守りを集めることでデッキをビルドし悪さをすることができる。特定の役で勝ったときの得点に集中してみたり、まんべんなく勝てるよう効果を散らすのもいいだろう。
 まあそのお守りってのが知らない人の手足とかなのだが…。ちゃんと全身ぶんあるから「これ5パーツ手札に揃ったらゲーム勝ちになったりとかする?」と思ったカードゲーマーは 揃えてみるのもいいだろう。某所で引き出しから出てきた血まみれの人骨をスロットに飾り付けていたおれが言えたもんではないが、常識的に考えると 知らん人の死体が揃ってほしくはない。

 さらには持っている3つのサイコロの出目に細工して出たときに特殊効果を発生させることもできる。血液量の回復効果があるお守りや出目効果もあるため、そのへんを揃えるとなんか……サイコロを振るほど異常に造血されていく邪樹右龍みたいな骨太人間になっていったりもするぞ。超高血圧状態で勝負に挑んだアカギよりも人体構造がおかしい。オレって不思議ちゃん?



初回プレイはなんか終始すごく気に入られていた

 シナリオも凝っていて、メンヘラを称するゲームだけあり メンヘラちゃんの情緒がものすごい乱高下する。「気分のムラは仕方ないね」で片付くレベルを超越!
 メンヘラちゃんが質問してきたり会話を投げかけてくるので 選択肢から返事をすることになるが、受け答えによってはしょうもないことを曲解していきなりトップスピードでマジギレし チンチロ勝負に不利なお守りを投げつけてくることなどもあるぞ。こっちの血圧上がるからマジでやめてほしい。あ、いま抜かれてるから大丈夫か……。

 そのへんに関連して一日終了ごとにプレイスタイルやメンヘラちゃんからの印象を教えてくれる評価システムがあるのもユニークだ。
 おれはなぜか知らんが強制イベントを除いてずっとメンヘラちゃんの好感度が高かったため「資格取れなかったけど臨床心理の学部を出ててよかったな…」と思った。芸は身を助くとはこのことなんだろうか。素の自分は壊滅的に女心がわからない人間なので アタシを花にたとえてみて?なんて質問に「クプアス」とか答え 秒で刺し殺されていた可能性もある。
 みんなもカウンセリングや社会心理学の勉強をすると イカれた犯罪者に拉致監禁されて暗黒チンチロやらされたときに役立つかもしれないよ。役立ってたまるか アホタレ!!!!!!!


…過去最悪な態度だぞ オマエ!

 ちなみに拉致監禁といえば おれはついてっきりメンヘラちゃんが一方的にプレイヤーに恋して執着した結果 連れ去られたもんだと思っていたが、会話していくうちにどうやら……ピンときた通行人を適当に攫っていたらしいということが明かされる。あまりに無差別すぎるだろ。口も利いたことない奴を「なんかチンチロ強そう!!」の一点全ツッパでデスゲームへと誘拐するのは メンヘラというよりジグソウ賭郎鷲巣巌の素質が強ぇんじゃねえか。オマエに必要なのはたぶん向精神薬とかしゅきピじゃなくて アカギ真経津斑目貘。


 ひとまずそんなところだ。

 ほか、難易度的な話をすると ロケテストのフィードバックを通して当初より遊びやすく調整してあるらしい。実際おれも通常モードは一発でクリアすることができたので インチキトランプデッキを作ったことがなかったり異常者と暗黒賭博をさせられたことがない人にも広くオススメできる。
 一方で、メンヘラちゃんとの受け答え次第でエンディングが複数あったり、やり込みモードもあるので 熱を感じたい博徒にも配慮されている。


 どうでもいいが、実際にこの状況になった場合 おれは持病のせいで激烈に胃の調子が悪くなる注射薬を打っているので、1日程度耐えて飲ませ続ければメンヘラちゃんを毒血でノックアウトできる可能性がある。唐門の者は、全身どこもかしこも凶器である。



そのほか

UNBEATABLEが日本語化

 UNBEATABLEがついに日本語化された!!

 日本のアニメスタイルに影響を受けた、ストーリードリブンのリズムゲーム。音楽が禁じられた世界でギターをかき鳴らし ポリ公にファックサインを掲げて走り回ってやろう。
 WHITE LABELのときからやりたいやりたいと思って我慢していたが、公式日本語化がついにきた。しかも和訳はこういったストリートスタイルや砕けた言い回しの活かし方に定評のあるnicolith氏。期待が膨らんでいる。



 なにしろ英語版でもこのファンキー具合である。これは初回起動時に難易度設定などをするためにプレイヤーへと質問が投げかけられるシーンなのだが 「リズムゲームやったことある?」に対して「やったことないやつなんか存在すんの?」と返答できる。そもそもビートを刻む音楽ゲームでUNBEATABLE(不敗の無敵)なんてタイトルしてる時点で 相当ゴキゲンだと思わないか?
 和訳リリースが7月の29日だったため、まだ遊んで感想を書けるわけではない…ということでここに隔離していたが 来月にはしっかり紹介できるだろう。皆さんも手にとってみてくれ。


 そんなところだ。
 8月はお盆に連休があるので サマーセールのゲームをさらに崩せると思う。よろしくな。



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