【第17章】オンボロバイクで、灼熱のトレドへ
スペインで出会った日本人たちが、
何度も口にしていた街があった。
トレド。
マドリッドから約71キロ。
買ったばかりのバイクの試運転には、
ちょうどいい距離だと思った。
8日間世話になったホテルのおばさんに、
絵ハガキと折り紙の鶴、
残っていたインスタントコーヒーを渡して出発した。
道は広く、
バイクは思ったより走りやすい。
ただし、肝心のバイクは、
やはりあまり調子が良くない。
スピードは出ない。
音はうるさい。
それでも走っている間は風が気持ちよかった。
途中のバルで休憩して、
再び出発しようとすると――
エンジンがかからない。
何度キックしてもダメ。
炎天下で何度もキックしているうちに、
汗がダラダラ流れてきた。
早くも、
このバイクを買ったことを少し不安に思い始める。
そこへ、
バルにやって来た男性が助けてくれた。
どうやらプラグが原因らしい。
教えてもらった通りにすると、
なんとかエンジンがかかった。
一件落着。
とはいえ、
「この先も、いろいろありそうだな……」
そんな予感はした。
その後は順調に走り、
約2時間半でトレドへ到着。
城壁に囲まれた旧市街は、
聞いていた通り美しかった。
ユースホステルも、
まるで小さな城のような建物だった。
午後3時頃に着いたものの、
部屋に入れるのは5時から。
この暑さの中、
どうしようかと思っていると、
受付の青年が教えてくれた。
「ここにはプールがあるよ。」
ユースホステルにプール?
そんな所は初めてだった。
この日は、とにかく暑かった。
結局、
夕方までプールで泳いで過ごした。
オンボロバイクで走った、
灼熱の71キロ。
トレド最初の思い出は、
歴史ある城壁でも教会でもなく、
ユースホステルのプールになった。
—
この旅の断片を、静かに綴っています。

