1人で始めた会社を、どう信用してもらうか
弁理士の大倉昭人です。2014年に、1人で知財管理システムの会社root ipを作りました。
知財管理システムは、会社の大切な知財情報を預かるシステムです。案件情報が入り、期限が入り、出願書類が入る。
そんな重要なシステムとして、できたばかりの会社の、それも1人で作っているサービスと契約する。
今考えても、なかなか勇気のいることです。
自分が逆の立場なら、「この会社、大丈夫かな」と思うはずです。
なので、会社を始めたころから、どうすれば信用してもらえるのか、ずっと考えていました。
今は、いろいろ公開している
root ipのホームページには、私自身の経歴や導入実績、許可をいただいたクライアントのお名前を載せています。売上高も公開し、決算公告も見られるようにしています。
社長がどんな人なのか。
どんな会社が使っているのか。
この先も安心して使い続けられそうか。
自分がサービスを検討する側なら気になることを、できるだけ見えるようにしています。
特に数字を公開すると、自分たちにも緊張感が生まれます。一度出した以上、来年も見られます。
会社を経営する上でも、いいプレッシャーになっています。
でも、最初から公開していたわけではない
こう書くと、「最初から透明性を重視して、積極的に情報公開してきました」という立派な話に見えます。
実際は、そんなことはありません。
むしろ、怖くて出せませんでした。
導入件数をホームページに出し始めたのは、20〜30社になったころだったと思います。
それより少ないころは、「導入実績を出した方が信用されるかな」と思う一方で、「いや、逆に少ないと思われるのでは?」とも思っていました。
数社でも、選んでもらえたことはありがたい。
でも、その数字を見た人がどう受け取るのかと思うと、公開する勇気が出ませんでした。
決算情報も同じです。売上高や決算公告をホームページに載せ始めたのは、売上が1億円を超えてからでした。
小さい数字を公開した結果、「この会社に重要なシステムを任せて大丈夫かな」と思われるのが怖かったのです。
信用を得るために情報を公開したい。
でも、公開に踏み切る自信がない。
当時は、そんな考えが行ったり来たりしていました。
それでも、最初に選んでくれた人がいた
当然ですが、20〜30社になるためには、その前に1社目があります。
実績を公開できるようになる前から、root ipを選んでくれたクライアントがいました。
では、何を信用してもらったのか。
振り返ると、大きかったのは、独立前からの仕事を通じたつながりです。
私は弁理士として仕事をしてから独立しました。その間に一緒に仕事をした人がいて、自分がどういう仕事をする人間なのかを知ってくれていました。
会社の実績はゼロから始まります。
でも、自分自身まで完全にゼロから始まるわけではありません。
目の前の仕事にきちんと取り組むことが、結果として、独立後にも仕事をいただけることにつながりました。
システムのことを発信していた
もう一つ、やっていて良かったと思うのが、システムに関する情報発信です。
私はもともとプログラミングが好きだったので、こんなシステムを作っている、こういうことができる、知財業務のこんなところを効率化できる。そんな情報を少しずつ発信していました。
ものすごく多くの人に読まれていたわけではありません。バズったわけでもありません。
それでも、読んで興味を持ってくれた人から、問い合わせをいただくことがありました。
知財管理システムは、誰もが興味を持つものではありません。でも、日々の知財管理に困っている人にとっては、かなり重要なものです。
たくさんの人に知られなくても、必要としている人に知ってもらえたことが、創業期の仕事につながりました。
派手さはありませんが、刺さる人には刺さる。
root ipは、そんなところから始まりました。
静かなスタートでよかった
少しずつクライアントが増えて、導入件数を公開できるようになり、その後、売上高や決算情報も載せられるようになりました。
今は、そんな情報が、新しくroot ipを検討する人の判断材料になっています。
振り返ると、まだそんな情報を出せない時、
1人で黙々とシステムを作っていました。
知っている人に説明して、使ってもらう。
発信したものを読んだ人から、問い合わせが来る。
静かなスタートでしたが、自分には合っていました。
会社を始めて12年。今でも情報を公開するときには、少し緊張します。
ただ、数字が小さくて出せなかったころにも、選んでくれた人たちがいました。
そのことに、いつも、勇気づけられます。
