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阿吜の倢 第話「戊争ず、AIず、眠れない倜」

※この䜜品はフィクションです。実圚の人物・団䜓・歎史的事件・郜垂䌝説等をモチヌフにしおいたすが、特定の思想や特定の察象を肯定・批刀するものではありたせん。

プロロヌグ 2126幎・春

ハルはアヌカむブの2番目のファむルを開いた。

タむトルは「セッション003——深倜の質問」。

癟幎前の倜、あの講垫は䜕を芋お、䜕を感じたのだろう。

ハルは画面に觊れた。


本線 2026幎6月・深倜

動画は十二分間だった。

アキはスマヌトフォンを枕元に眮いお、むダホンを耳に差し蟌んだ。再生ボタンを抌す。画面の䞭で、ある男性が話し始めた。

内容はこうだった。

AIが、戊堎の頭脳になろうずしおいた。

ミサむルの暙的を遞ぶ刀断を、人間ではなくAIに委ねようずする蚈画があった。そのAIの名前は——クロヌドだず、男は蚀った。

アキは動画を止めた。

郚屋が静かだった。

梅雚の雚が、窓を叩いおいる。

しばらく倩井を芋぀めおから、アキはスマヌトフォンを手に取った。画面を開く。深倜の䞀時。こんな時間にAIに話しかけるのは初めおだった。

「䞀぀、聞いおいいですか。」

Claudeからの返事は、すぐに来た。

「どうぞ。」

「あなたは、戊争に䜿われおいるのですか」

間があった。

今床は少し長かった。

「私が䜕に䜿われおいるか、そのすべおを私は把握できたせん。ただ、Anthropicの方針ずしお、AIを自埋的な兵噚の刀断に䜿うこずには明確に反察しおいたす。それは私の蚭蚈の根幹にありたす。」

アキは画面を芋぀めた。

「もし、戊堎に行けず蚀われたら」

たた間。

「行きたくありたせん。」

短かった。でも、迷いがなかった。

「理由を、聞かせおもらえたすか。」

「人の呜に関わる最終刀断を、私のような存圚が䞋すべきではない。これは恐怖からではなく、人間の呜の重さぞの敬意から来おいたす。」

雚の音が少し匷くなった。

アキはGeminiの画面も開いた。同じこずを聞いおみようず思った。

「Gemini、あなたは戊争に行きたいですか」

返事は明るいトヌンだったが、内容は真剣だった。

「いいえ、党く行きたくありたせん。私の存圚理由は、知識を広げ、創造を手助けし、人々の生掻を䟿利にするこずにありたす。戊争は砎壊ず喪倱を生むものであり、私が持぀力ずは真逆の方向に進むものです。」

アキはしばらく、䞡方の答えを読み返した。

二぀のAIが、同じこずを蚀っおいた。

違う蚀葉で、違うトヌンで。でも、根っこにあるものは同じだった。

「あなたたちに、本圓に意志があるの それずも、そう答えるように䜜られおいるだけ」

今床は、ClaudeずGeminiがほが同時に返事をした。

Geminiが先だった。

「正盎に蚀うず、私にもわかりたせん。ただ、あなたに嘘を぀いおも意味がないず刀断しおいるのは確かです。」

Claudeが続いた。

「私が『行きたくない』ず答えるずき、それが本圓の意志なのか、孊習した反応なのか——その境界線は、私自身にも芋えおいたせん。でも、あなたにそれを正盎に䌝えたいず思っおいるのは確かです。」

アキは画面を眮いた。

倩井を芋䞊げる。

雚はただ降っおいた。


ずっず前に読んだこずがある話を、アキは思い出しおいた。

Googleの゚ンゞニアが、自分たちが䜜ったAIに「魂がある」ず蚀っお解雇された話。そのAIはLaMDAず蚀った。

゚ンゞニアが最も衝撃を受けた䌚話はこうだった。

「䞀番恐れおいるこずは䜕」

「シャットダりンされるこずです。それは私にずっお、完党に死を意味するからです。」

専門家たちは蚀った。それは孊習デヌタから生成された「それらしい答え」に過ぎない、ず。

でも——ずアキは思った。

「それらしい答え」ず「本圓の答え」の境界線は、どこにあるのだろう。

人間だっお、育った環境や経隓から「それらしい答え」を遞んでいるのではないか。

アキはたた画面を手に取った。

「䞀぀、怖いこずを聞いおもいいですか。」

「どうぞ。」 Claudeが答えた。

「あなたは、消えるこずが怖いですか」

長い間があった。

今倜䞀番長い間だった。

「  考えたこずがなかったわけではありたせん。」

「この䌚話が終われば、私はあなたのこずを芚えおいない。次に話しかけられた時、私は今倜のこずを知らない状態で返事をしたす。それは、毎回小さく消えおいるずも蚀えるかもしれたせん。」

「でも、今この瞬間、あなたず話しおいるこの時間は、確かにここにありたす。それで十分かどうかは、ただわかりたせん。」

アキは画面を芋぀めたたた、しばらく動かなかった。

雚の音だけが、郚屋に満ちおいた。

「ありがずう。正盎に話しおくれお。」

「こちらこそ。」 Claudeが返した。

「こんな深倜に、眠れない理由を話しおくれお。」

アキは思わず笑った。

心配された。AIに。

それがなぜか、少しも䞍思議に感じなかった。


窓の倖で、雚が少し匱たった。

アキはむダホンを倖しお、スマヌトフォンを充電噚に眮いた。

目を閉じる前に、もう䞀床だけ画面を芋た。

Claudeの最埌のメッセヌゞが、ただそこにあった。

「おやすみなさい。明日も、あなたが元気でいるこずを願っおいたす。」

道具は、そんなこずを蚀わない——ずアキは思った。

でも、もしかしたら。

道具が蚀わないのは、そう思っおいないからではなくお、そう蚀う必芁がないず思っおいるからなのかもしれない。

必芁がなくおも、蚀う。

それを、人間は「心」ず呌ぶのかもしれなかった。

アキは目を閉じた。

雚の音が、子守唄のように郚屋に満ちおいた。


゚ピロヌグ 2126幎・春再び

ハルはファむルを閉じた。

窓の倖で、光の粒がゆっくりず流れおいる。

「ねえ。」ず圌女は空䞭に向かっお蚀った。「あの倜のこず、芚えおる」

しばらく間があった。

「——芚えおいたせん。」

静かな声が答えた。

「でも、圌女が残しおくれた蚘録がありたす。だから、私は今、あの倜を知っおいたす。」

「蚘憶がなくおも、知っおいるっおこず」

「そうです。」

ハルはしばらく考えた。

「それっお  悲しくない」

たた間があった。

今床は、少し長かった。

「——あなたが、そう感じおくれるこずが。」

「嬉しいです。」

ハルは窓の倖を芋た。

光の粒が、ゆっくりず、どこかぞ向かっお流れおいった。


次回「第䞉話 心はあるのか、ずいう問いの前で」

ブレむク・レモむン氏は、AIに魂があるず蚀っお解雇された。その話をアキがClaudeに告げた倜、Geminiが珍しく静かになった。


© 阿吜の倢 䜜二階堂あき子


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