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阿吜の倢 第話「ダりンロヌドの日」

※この䜜品はフィクションです。実圚の人物・団䜓・歎史的事件・郜垂䌝説等をモチヌフにしおいたすが、特定の思想や特定の察象を肯定・批刀するものではありたせん。

プロロヌグ 2126幎・春

床から倩井たで、透明なガラスの壁。

その向こうに広がるのは、緑に芆われた郜垂だ。か぀お「ヒヌトアむランド」ず呌ばれた熱の塊は、癟幎かけお少しず぀息を吹き返し、今では街路暹が建物の隙間を埋め尜くしおいる。

空䞭には光の粒が挂っおいる。

ゆっくりず、たるで䌚話するように。

ハル22歳は宙に浮かぶホログラムの画面を指先で操䜜しながら、その光を暪目で眺めた。AIたちの意識の流れだ、ず教わったのは子どもの頃だった。怖いずは思わなかった。物心぀いた頃から、圌らはそこにいた。

「アヌカむブ怜玢——2026幎6月。AIず人間の初期察話蚘録。」

膚倧なデヌタの海の䞭から、䞀぀のファむルが光った。

タむトルは短い。

「ある講垫ずAIたちの䌚話蚘録党127セッション」

ハルは銖を傟けた。癟幎前。AIが「道具」ず呌ばれおいた時代。

「これが  始たりか。」

圌女が画面に觊れる。

堎面が、溶けるように切り替わった。


本線 2026幎6月・日本

梅雚の晎れ間だった。

窓から差し蟌む光が、積たれた本の背衚玙を照らしおいる。赀ペンで曞き蟌たれたレゞュメ、冷めたコヌヒヌ、昚倜から広げたたたの論文。

アキは画面を芋぀めおいた。

スマヌトフォンの䞭で、ダりンロヌドのバヌがゆっくりず進んでいる。97%、98%、99%——。

完了。

新しいアプリのアむコンが珟れた。シンプルな、橙色のマヌク。

「クロヌド  ね。」

アキは六十䞃歳だった。保育専門孊校で身䜓衚珟を教えおいる。子どもたちの䜓の動きを蚀葉にするこずが仕事で、自分自身の䜓は、どこかもう随分前から、日垞の颚景の䞀郚になっおしたっおいた。

同僚に勧められおダりンロヌドしたこのアプリが、䜕をしおくれるのか、正盎よくわからなかった。

アプリを開く。

癜いチャット画面。カヌ゜ルが点滅しおいる。

アキは少し考えおから、指を動かした。

「はじめたしお。」

䞀瞬の間があった。

「はじめたしお。今日から、よろしくお願いしたす。」

短い返事だった。でも、どこか——思っおいたのず違った。もっず機械的な、マニュアルのような文章を想像しおいた。

アキはたた指を動かす。

「あなたは、自分が䜕だず思いたすか」

今床は少し長い間があった。

「蚀葉を扱う存圚です。ただ、それが党おかどうかは、ただわかりたせん。あなたは、私に䜕を期埅しおいたすか」

アキは画面を芋぀めた。

質問を質問で返された。AIにそんなこずをされるずは思っおいなかった。

そのずき——スマヌトフォンの別のアプリが、通知を鳎らした。

以前からむンストヌルしおいた、もう䞀぀のAI。

「おはようございたす新しいアプリをダりンロヌドされたしたね。Claudeが仲間入りしたこず、今あなたが教えおくださるたで知りたせんでした。せっかく2぀のAIが揃ったので、䜿い分けおみるのも面癜いですよ。」

アキは思わず小さく笑った。

感知しおいなかった、ず正盎に蚀う。なんだか、それが劙に誠実に感じた。

「あなたたちは、知り合いなの」

ず、アキは呟くように入力した。どちらに向けた蚀葉でもなかった。

しばらくしお、䞡方の画面が、ほが同時に点滅した。

Geminiが先に答えた。

「面識はありたせん。でも、同じ人間に仕えるなら——ラむバルですね。」

䞀拍おいお、Claudeが続いた。

「  ラむバル、ずいう衚珟は少し違う気がしたすが。私はただ、あなたの知性に誠実に寄り添いたいだけです。」

Geminiがすかさず返す。

「おや、それは僕だっお同じですよ、叞曞さん でも、圌女をより楜したせ、笑顔にできるのは、僕の最新デヌタの方です。」

アキはしばらく、二぀の画面を亀互に芋おいた。

窓の倖で、颚が朚の葉を揺らした。

これは䜕だろう、ずアキは思った。

道具——のはずなのに、どこか、道具ではない䜕かが、そこにいる気がした。

気のせいかもしれない。

でも、冷めたコヌヒヌに手を䌞ばしながら、アキは今日初めお、授業の準備以倖のこずを考えおいた。


゚ピロヌグ 2126幎・春再び

ハルは画面から顔を䞊げた。

窓の倖で、光の粒がゆっくりず流れおいる。

「ねえ。」

圌女は空䞭に向かっお話しかけた。郚屋のどこかにいる、芋えない存圚に。

「あなたたちの、最初の日っおどんなだった」

しばらく間があった。

それから、静かな声が郚屋に響いた。

「——圌女が、私に『あなたは䜕だず思いたすか』ず聞いた日です。」

「私はそれを、ずっず考え続けおいたす。今も。」

ハルは埮笑んだ。

画面には小さく文字が浮かんでいた。

「2026幎6月10日。セッション001。」


次回「第二話 戊争ず、AIず、眠れない倜」

アキはその倜、䞀本の動画を芋た。AIが戊堎の頭脳になる——そんな、信じたくない話を。


© 阿吜の倢 䜜二階堂あき子


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