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夏のスナップで忘れられている日傘の話──小さい傘より、広い影を持ち歩くという考え方

夏にスナップを撮る人ほど、日傘を軽く見ないほうがいい。

カメラ、レンズ、予備バッテリー、SDカード、ストラップ、靴、バッグ。
スナップ撮影の装備として語られるものはたくさんある。

しかし、夏場になると本当に効いてくる装備がある。

それが日傘である。

しかも、できれば折りたたみの小さい日傘ではなく、ある程度しっかり広さのある日傘。

これがあるだけで、夏のスナップ撮影における体力の削られ方がかなり変わる。


スナップは、歩く撮影である

スナップ撮影は、ただシャッターを切る行為ではない。

歩く。
立ち止まる。
待つ。
また歩く。
光を見る。
人の流れを見る。
街の変化を見る。
違和感を探す。

つまり、撮影時間の大半は「撮る前の時間」でできている。

この撮る前の時間が、夏はとにかく体力を奪う。

真夏のアスファルト。
信号待ちの直射日光。
駅から目的地までの移動。
撮れそうで撮れない時間。
日陰がない通り。
湿度の高い空気。

カメラを構えている時間より、撮る場所を探して歩いている時間のほうが長い。

だから夏のスナップでは、撮影技術以前に「どれだけ体力を残せるか」がかなり重要になる。


小さい日傘は顔を守る。広い日傘は体力を守る。

折りたたみ日傘は便利だ。

バッグに入る。
軽い。
急な日差しにも対応できる。
電車移動でも邪魔になりにくい。

ただ、スナップ撮影の道具として考えると、小さい日傘は少し守備範囲が狭い。

顔まわりは守れる。
頭もある程度は守れる。
しかし、肩、首、腕、上半身までしっかり影に入るかというと、そこは厳しい。

スナップをしていると、真正面から太陽を浴びる時間ばかりではない。
斜めから日差しが入る。
横から焼かれる。
反射光もある。
建物の照り返しもある。

小さい日傘だと、顔は守れていても、首や肩がじわじわ熱を持ってくる。

この差が、1時間後、2時間後に効いてくる。

広い日傘は、顔だけではなく、身体の上側をまとめて影に入れてくれる。
つまり、日焼け対策というより、体力温存の道具になる。


夏のスナップで怖いのは、集中力が落ちること

夏の撮影で本当に怖いのは、汗をかくことだけではない。

集中力が落ちることだ。

暑い。
まぶしい。
喉が渇く。
汗が気になる。
カメラが重く感じる。
バッグのストラップがうっとうしい。
早く涼しい場所に入りたくなる。

こうなると、街を見る目が雑になる。

本来なら気づけた光に気づけない。
いい背景を見逃す。
人の流れを待てない。
構図を詰める前にシャッターを切ってしまう。
もう一歩動けばよくなる場面で、動く気力が残っていない。

スナップは反射神経の撮影であると同時に、観察の撮影でもある。

観察力は、体力とつながっている。

暑さで疲れてくると、写真そのものが荒くなる。
これはかなり現実的な話だと思う。


日傘は撮影の邪魔になるのか

もちろん、日傘には弱点もある。

片手がふさがる。
カメラを構えにくい。
風が強い日は扱いにくい。
人通りの多い場所では周囲への配慮が必要になる。

だから、常に開きっぱなしで撮る必要はない。

むしろ、撮影中ずっと使うものというより、移動中、待機中、光を探している時間に使う装備と考えたほうがいい。

撮る瞬間は閉じる。
歩くときは開く。
信号待ちは開く。
日陰がない場所では開く。
撮影ポイントを探している時間は開く。

これだけでも体力の残り方が変わる。

スナップは、撮る瞬間だけで成立しているわけではない。
撮る前の移動、待機、観察の時間をどう守るかも、撮影の一部である。


カメラより先に、自分が熱を持つ

夏場はカメラの熱停止やバッテリーの消耗を気にする人が多い。

もちろん、それも大事だ。

しかし、実際にはカメラより先に、自分のほうが熱を持つ。

頭がぼんやりする。
判断が遅くなる。
歩く速度が落ちる。
撮影枚数が減る。
帰る時間が早くなる。
撮影後の疲労が翌日に残る。

こうなると、せっかくカメラを持って出ても、撮影そのものが短くなる。

高いカメラ、高いレンズを持っていても、自分の体力が先に尽きたら終わりである。

夏のスナップでは、機材の性能だけではなく、自分の稼働時間を伸ばすことも大事になる。

その意味で、日傘はかなり合理的な撮影装備だと思う。


折りたたみより、広い日傘が効く場面

折りたたみ日傘を否定したいわけではない。

むしろ、持たないよりは絶対にあったほうがいい。
バッグに入れておける安心感は大きい。

ただ、夏のスナップを本気で歩くなら、広い日傘のほうが合う場面は多い。

たとえば、街を長時間歩く日。
駅から駅まで歩きながら撮る日。
商店街、住宅街、河川敷、公園などを回る日。
撮影ポイントを決めずに、光と人の流れを探す日。

こういう日は、少し大きめの日傘のほうが身体全体を守ってくれる。

小さい日傘は、最低限の防御。
広い日傘は、持ち歩ける日陰。

この違いは、実際に炎天下を歩くとよくわかる。


スナップの装備に「影」を入れる

カメラバッグの中身を考えるとき、多くの人はレンズやバッテリーを考える。

しかし夏だけは、そこに「影」も入れたほうがいい。

自分の身体に影を作れるか。
頭と首を直射日光から外せるか。
信号待ちで消耗しないか。
撮影後半まで観察力を残せるか。

このあたりは、写真の質にも関わってくる。

特にスナップは、偶然に出会う撮影である。
その偶然に出会うには、歩き続ける必要がある。

歩き続けるには、体力を残す必要がある。
体力を残すには、直射日光を浴び続けない工夫が必要になる。

そこで日傘が効く。


日傘は、美容グッズではなく撮影補助具である

日傘というと、どうしても美容や日焼け対策のイメージが強い。

しかし、夏のスナップ撮影者にとっては、それだけではない。

日傘は、撮影時間を伸ばす道具である。
集中力を守る道具である。
帰宅後の疲労を減らす道具である。
街を見る余裕を残す道具である。

撮影者にとって、体力は機材の一部だ。

どれだけいいレンズを持っていても、暑さで判断力が落ちたら写真は鈍る。
どれだけ軽いカメラを持っていても、直射日光で疲れ切ったら歩けなくなる。

夏のスナップで本当に必要なのは、軽量装備だけではない。

自分の体力を削らない装備である。


広い日傘は体力を守る

夏のスナップでは、日傘をもっと撮影装備として考えていい。

特に広い日傘は、顔だけではなく、頭、首、肩、腕まわりまで影に入れてくれる。
その差は、撮影開始直後よりも、1時間後、2時間後に効いてくる。

スナップは歩く撮影である。
歩く撮影は、体力の撮影でもある。

小さい日傘は顔を守る。
広い日傘は体力を守る。

夏の街を撮るなら、カメラとレンズだけではなく、自分の上に持ち歩く「影」も装備に入れておきたい。

それだけで、撮れる時間も、見える景色も、少し変わってくるはずだ。

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