Z9の中古は40万円台前半でお買い得?──インフレ時代こそ「メカシャッターレスxフラッグシップを長く使う」という選択
Nikon Z9の中古価格を見ていると、40万円台前半まで下がってきた個体には、かなり買い手が反応しているように感じる。
もちろん、中古相場に「ここが絶対的な底値だ」と言える地点などない。
後継機の登場、中古流通量、新品価格、キャンペーンなどによって、もう一段下がる可能性はある。
それでも私は、Z9についてはそろそろ、
「あといくら安くなるか」より、「この価格でこれだけのカメラを何年間使えるか」
を考えたほうがいい段階に入っているのではないかと思っている。
そして、その考え方を後押しする大きな理由がある。
Z9はメカシャッターを搭載していないのである。
昔の中古フラッグシップには「シャッター回数」という怖さがあった
一眼レフ時代のプロ機を中古で買うとき、気になる数字のひとつがシャッター回数だった。
外観がきれいでも、
「何十万回切られているのか」
が気になる。
プロカメラマンが仕事で使用していた個体なら、一年間でとんでもない枚数を撮影している可能性もある。
カメラそのものが頑丈でも、メカニカルシャッターは物理的に高速動作する部品である。
つまり撮れば撮るほど、機械として動作回数が積み上がっていく。
中古価格が安くても、
「シャッターユニットがかなり使われているのではないか」
という問題から完全には逃れられなかった。
ところがZ9は事情が違う。
ニコン自身がZ9を「メカシャッター非搭載」と説明している。
Z8についてもニコンの公式比較情報で「メカシャッターレス」と明記されている。
これは、中古カメラとして考えたときに意外なほど大きな意味を持つ。
「撮影枚数が多い=シャッターが消耗している」ではなくなった
もちろん、Z9なら何百万枚撮影しても新品同様という意味ではない。
ボタンは押される。
ダイヤルは回される。
カードスロットも使われる。
液晶やEVF、手ブレ補正機構、端子類、ラバー、バッテリーなどにも経年劣化はある。
落下や衝撃、水濡れといったリスクも当然存在する。
だから中古品である以上、状態確認が重要なのは変わらない。
それでも、一眼レフ時代とは決定的に違う。
写真を1枚撮るたびに、メカニカルシャッターを1回動かしているわけではない。
高速連写を多用するスポーツ撮影やライブ撮影では、この違いはかなり大きい。
以前なら「連写を多用された業務機」というだけで少し身構えた。
Z9では、少なくともメカシャッターの作動回数について同じ心配をする必要がない。
中古フラッグシップとの相性が、非常に良い構造なのである。
40万円台前半になると「高級機」から「長期使用する道具」に見えてくる
Z9は安いカメラではない。
40万円を超えるカメラなのだから、一般的には十分高額である。
しかし、重要なのは絶対額だけではない。
何が40万円台なのか、である。
Z9は単に画質の良いミラーレスではない。
高画素と高速連写を両立した積層型センサーを搭載し、大容量バッテリーを採用し、縦位置グリップを本体に統合した、ニコンのフラッグシップ機である。
AF、連写、操作性、堅牢性、ファインダー、カードスロット、バッテリー、ボディ剛性。
さまざまな部分が「毎日大量に撮る人」を想定して作られている。
新品価格では手が出なかった人でも、中古が40万円台前半まで来ると見え方が変わってくる。
20万円台のカメラを何度か買い替えるのか。
それとも40万円台でZ9の良い個体を一度買い、長期間使うのか。
後者が急に現実的になってくる価格帯なのである。
Z9は「新型が出たら使えなくなるカメラ」ではない
デジタル製品には陳腐化がある。
新型になればAFはさらに進歩するだろう。
被写体認識も増えるかもしれない。
センサーの読み出しも高速化するかもしれない。
EVFや動画性能も進化するだろう。
それ自体は間違いない。
しかし、現在のZ9ですでに撮影能力は相当に高い。
ライブ。
スポーツ。
野鳥。
鉄道。
ポートレート。
イベント。
報道。
通常の撮影でZ9の性能が不足する場面を探すほうが難しいほどである。
ここまで完成度が上がると、新型への進化は、
「今まで撮れなかった写真が突然撮れる」
というより、
「さらに撮りやすくなる」
という方向が中心になっていく。
ここは非常に重要だと思う。
完成度の低い時代のデジタルカメラなら、数年後のモデルに買い替える価値は大きかった。
AFがまるで違う。
高感度性能がまるで違う。
連写性能がまるで違う。
そういう劇的な進歩があった。
今のフラッグシップ機は、すでにかなり高いところまで来ている。
Z9が数年後に最新機種ではなくなったとしても、Z9で撮れる写真の価値まで落ちるわけではない。
インフレ時代は「待てば安くなる」が成立しにくい
そして、今は物価上昇を無視できない時代である。
カメラも例外ではない。
部材費、人件費、物流費、為替などさまざまな要因が製品価格に影響する。
昔の感覚では、
「デジタル製品は待てば性能が上がって安くなる」
と考えることができた。
今後も性能は上がるだろう。
しかし、
性能が上がり、価格まで安くなる
とは限らない。
むしろ新製品の価格が上がり続ければ、数年後にZ9クラスの性能とボディを新品で買おうとしたとき、かなり大きな金額が必要になる可能性もある。
そうなると考え方を変える必要がある。
最新型を追い続けるのではなく、
すでに十分完成されている製品を、中古価格が落ち着いたところで買い、できるだけ長く使う。
これはインフレ時代における、ひとつの合理的な機材購入方法だと思う。
フラッグシップだからこそ「長く使う」が成立する
ここで重要なのは、単に古いカメラを安く買えばいいという話ではない。
長期使用を前提にするなら、元々の作りが重要になる。
そしてZ9は、そこに強みがある。
縦位置グリップも最初から本体に一体化されている。
後付け縦グリップなら、本体との接点、固定部分、端子、ネジなどが追加される。
長期間使えば摩耗やガタが発生する可能性もある。
特に縦位置撮影を頻繁にする人なら、最初から一体型として設計されたボディには安心感がある。
さらにメカシャッターレス。
大容量バッテリー。
CFexpress Type Bのダブルスロット。
こうして並べていくと、Z9は単に「性能が高いカメラ」なのではなく、
長期間、撮影道具として酷使することを考えやすいカメラ
でもある。
ここに中古Z9の面白さがある。
「安い個体」より「良い個体」を買ったほうがいい
ここまで価格が下がってくると、今度は1万円、2万円の価格差にこだわりすぎないほうがいいとも思う。
たとえば41万円のかなり使い込まれた個体と、44万円の非常に状態の良い個体があったとする。
長期間使うつもりなら、私は後者を選ぶ。
3万円安く買うことより、
外装の状態。
ボタンやダイヤルの感触。
液晶やEVF。
カードスロット。
端子類。
センサー。
マウント。
ラバー。
付属品。
販売店の保証。
こうしたものを重視したい。
40万円級のカメラを数年間使うつもりなら、購入時の数万円差は時間とともに小さくなる。
「最安値のZ9を探す」のではなく、
「長く付き合えそうなZ9を探す」
という買い方のほうが合っている。
中古Z9では撮影枚数より「使われ方」を見たい
メカシャッターがない以上、従来の一眼レフほど撮影枚数だけに神経質になる必要はないと思う。
それよりも個体そのものを見るべきである。
角が大きく削れていないか。
マウント周辺に不自然な傷がないか。
端子カバーが傷んでいないか。
ラバーが浮いていないか。
カードスロットの動作に問題がないか。
ボタンやダイヤルに違和感がないか。
液晶やファインダーは正常か。
センサーに問題はないか。
つまり、
「何枚撮ったか」より「どう使われてきたか」
を見る。
これはZ9時代の中古フラッグシップ選びでは、かなり重要な考え方になってくるのではないか。
底値を当てようとすると、結局買えなくなる
中古カメラを買うとき、多くの人が考える。
「もう少し待ったら安くなるのではないか」
これは当然である。
45万円なら43万円を待ちたい。
43万円なら40万円を待ちたい。
40万円になれば38万円を待ちたくなる。
そして38万円になったころには後継機が気になり、
「だったらもう少し待とう」
となる。
これを続けると永遠に買えない。
中古機材で本当に重要なのは、底値を当てることではないと思う。
自分が納得できる価格になったときに、状態の良い個体を確保することだ。
特に状態の良い中古品は、株のように同じものをいつでも買えるわけではない。
価格は同じでも個体は違う。
安くなるのを待った結果、きれいな個体が減っていく可能性もある。
だから中古Z9が40万円台前半まで来たなら、
「あと3万円下がるだろうか」
だけを考えるのではなく、
「この状態のZ9をこの価格で買って、今後何年間使えるだろうか」
と考えるほうがいい。
40万円台前半は「底値」ではなく「納得価格」なのかもしれない
私はZ9が40万円台前半で完全に底打ちした、と断言するつもりはない。
後継機が出れば下がるかもしれない。
市場に中古が大量に出れば、さらに値下がりする可能性もある。
だから正確には、
40万円台前半が底値なのではなく、買い手が「もうこの値段ならいい」と思い始める価格帯に入った
と考えるのが近いのではないか。
そしてZ9の場合、その判断を後押しする要素が多い。
メカシャッターレスである。
縦位置グリップ一体型である。
元々プロ用途を想定したフラッグシップである。
現時点でも性能に大きな不足を感じにくい。
ニコンはZ9を継続的にファームウェアで強化してきた。
そう考えると、
良い中古個体をそこそこの価格で買い、壊れるまで長く使う。
そんな古典的な買い方が、最新のミラーレス時代になって再び合理的になってきたように思える。
新しいカメラを買い続けることだけが正解ではない
カメラ好きである以上、新型は気になる。
新しいAF、新しいセンサー、新しい機能。
そこには当然魅力がある。
しかしインフレによって新品価格が上昇していくなら、別の選択肢も考えたほうがいい。
それが、
完成度の高いフラッグシップを中古で買い、長期間使う
という選択である。
Z9は、その考え方と非常に相性がいい。
メカシャッターレスという構造によって、一眼レフ時代の中古フラッグシップにあった「シャッターをどれだけ酷使されているのか」という不安要素がひとつ減った。
そして中古価格は、新品ではなかなか手を出せなかった人にも現実的なところまで近づいてきた。
10万円安くなるまで何年も待つより、その数年間をZ9で撮る。
最新型を何度も買い替えるより、良いZ9を一台買って長く使う。
そういう買い方があってもいい。
むしろ物価が上がり、新製品がどんどん高価になっていく時代だからこそ、
「いい物を、適正な中古価格で買って、長く使う」
という当たり前の価値観が、カメラの世界でも再評価されていくのではないだろうか。
Z9の40万円台前半。
それは本当の底値かどうかは分からない。
ただ、
「これ以上安くなるまで待つ必要があるのか?」
と考え始めるには、十分すぎる価格帯に入ってきたように思う。
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