夏のピーカンでF1.4を使うなら、NDフィルターはほぼ必須
7月、8月の真昼。雲ひとつない青空の下でポートレートを撮ろうとすると、とにかく光が強い。
こんな状況でも、せっかくF1.4の明るい単焦点レンズを持っているなら、絞り開放で撮りたくなる。背景を大きくぼかし、人物だけを浮かび上がらせたい。夏の光と浅い被写界深度を組み合わせれば、現実感の薄い、どこか夢のようなポートレートにもなる。
しかし、真夏のピーカンでF1.4を使うと、カメラが受け取る光の量が多すぎる。
ISO100まで下げても、適正露出に必要なシャッタースピードが1/8000秒を超えることがある。条件によっては1/16000秒前後が必要になる。メカシャッターの上限が1/4000秒や1/8000秒のカメラでは、完全に露出オーバーである。
そこで必要になるのがNDフィルターだ。
NDフィルターはレンズのサングラス
NDフィルターは、色味を大きく変えずに光の量だけを減らすフィルターである。
人間が真夏の日差しの中でサングラスをかけるように、レンズにもサングラスをかける。そうすることで、明るすぎる場所でもF1.4の絞り開放を維持できる。
たとえば、フィルターなしではF1.4、ISO100で1/16000秒が必要な場面を考える。
ND4は2段分の減光なので、シャッタースピードを1/4000秒まで下げられる。ND8なら3段分なので、1/2000秒まで下げられる。
真夏の屋外ポートレートで普通にF1.4を使うだけなら、ND4からND8あたりが扱いやすい。光の強さやカメラの最高シャッタースピードによって使い分けることになる。
電子シャッターに頼ればいいとは限らない
最近のミラーレスカメラには、電子シャッターで1/16000秒や1/32000秒まで使える機種もある。
そのため、NDフィルターがなくても撮影自体は可能な場合がある。しかし、電子シャッターにはローリングシャッター歪みや人工光による縞、動く被写体の変形などの弱点がある。
ポートレートでも、モデルが歩いたり、髪が風で動いたり、カメラを振りながら撮ったりすれば、影響が出る可能性はある。
NDフィルターを使ってメカシャッターの範囲に収めれば、こうした問題を避けやすい。撮れるかどうかだけではなく、安心して撮れる状態をつくるための道具でもある。
ストロボを使う場合は、さらに重要になる
日中シンクロでストロボを使う場合、NDフィルターの意味はさらに大きくなる。
ピーカンの逆光では、人物の顔が暗くなりやすい。そこでストロボを当てて顔を起こしたい。しかしF1.4のままではシャッタースピードが高くなりすぎ、ハイスピードシンクロが必要になる。
ハイスピードシンクロは便利だが、シャッタースピードを上げるほどストロボの光量が大きく落ちる。真夏の日差しに負けない光を出そうとすると、大型のストロボや強力なバッテリーが必要になる。
NDフィルターで環境光を減らし、シャッタースピードを同調速度に近づければ、ストロボの光を効率よく使える。
つまりNDフィルターは、背景をぼかすためだけの道具ではない。自然光とストロボ光のバランスを整えるための道具でもある。
ND1000は通常の開放撮影には強すぎる
NDフィルターは数字が大きいほど減光量が多い。
ND4は2段、ND8は3段、ND16は4段、ND1000は約10段である。
夏のピーカンでF1.4を使いたいだけなら、ND1000は基本的に強すぎる。ファインダーが暗くなり、オートフォーカスにも不利になる可能性がある。
ただし、ND1000を使って日中に意図的なスローシャッターを行うなら話は別だ。
人物を止めながら、周囲の人や水、木々の揺れだけを流す。あるいはモデルにもわずかに動いてもらい、輪郭を曖昧にする。ND1000は通常のポートレート用品というより、真昼を非現実的な世界に変える表現用フィルターである。
普通のF1.4開放ポートレートならND4やND8。スローシャッターで「夏の夢」のような作品を狙うならND1000。この二つは目的を分けて考えたほうがよい。
真夏に明るいレンズを生かすためのNDフィルター
明るいレンズは、暗い場所だけで役立つものではない。
真夏の強烈な光の中でF1.4を使うからこそ、背景が溶け、被写体だけが光の中に浮かび上がる。絞れば簡単に適正露出にはなる。しかし、それではF1.4というレンズの特徴を自分から手放すことになる。
ピーカンだから絞るのではなく、ピーカンでも開放で撮れる環境をつくる。
7月、8月のポートレートにおいて、NDフィルターは特殊効果のためのアクセサリーではない。明るい単焦点レンズを、真夏でも本来の絞りで使うための必需品なのである。
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