【特別編】しらふ日常のリアル・お酒で麻痺していた私が、平気で大切な時間を搾取されていた話
連載の最終回で、「お酒を完全に断ち切ってから、それまでの飲み友達の何割かが疎遠になった」というお話をしました。
あのときは「潮が引くようにスーッと消え去っていった」と綺麗にまとめましたが、実はしらふになって脳の霧が晴れたとき、それまで「良き友人」だと思っていた関係の歪(いびつ)さに、ハッとさせられる瞬間が何度もあったのです。
今回は、連載の特別編として、お酒をやめて初めて見えてきた「人間関係の断捨離」のリアルな舞台裏について書きたいと思います。
ビール片手に「ふーん」と聞き流していた、あの時間の正体
かつてお酒を飲んでいた頃、週に何度もかかってくる友人からの長電話を、私は「ふーん」とビールを片手に聞き流していました。当時はそれも一種の暇つぶしであり、付き合いだと思っていたのです。
けれど、しらふのクリアな頭でその電話に向き合ったとき、ある事実に気がつきました。それは「相談」ではなく、ただただ自分の承認欲求やストレスをぶつけたいだけの、終わりのない時間搾取だったのです。
(と言っても、当時は話半分に酔って聞いていたので、その時の私にとって実害はなかったのですが。笑)
友達からの相談は、主に以下のような内容で構成されていました。
ある狭いコミュニティでのママ友トラブル
子どもの習い事の人間関係の愚痴や、その相談
自分の病気の話
旦那さんの愚痴
しらふになってからようやく気がついたのですが、私が用事があって電話をかけたとしても、彼女は開口一番「ちょうど良かったー!聞きたいことあったの!」と、平気で自分の話を丸々1時間マシンガントーク。
そして散々喋り倒した最後に、「あ、そういえば電話もらってたね、なんの話だった? ごめん、あと5分しかないんだけど」と言い放たれる。そんなことが毎回、当たり前でした。
極めつけは、いきなり写真だけが送りつけられてきて「スマホの画面がテレビに映らないんだけど、何が違うかアダプターを確認して」という連絡でした。
私はわざわざAIで調べ、通販で購入できるサイトを確認し、リンク先も付け加えて丁寧に連絡をしてあげたのです。すると返ってきたのは、「あ、もうお姉ちゃんに調べてもらって解決したから大丈夫」という軽い一言でした。
お酒で麻痺していた頃の私は、自分の大切な時間やエネルギーが、そんな風に雑に、都合よく消費されていることにすら気づけずにいました。
相手は私という人間を見ていたのではなく、ただ「自分の話を何でも都合よく受け止めてくれる、酔っ払いの無料相談室」を求めていただけだったのです。
AIが教えてくれた、依存関係の終わり
さすがに私の時間も有限です。しらふの私は、自分の人生の手綱を握っています。
ある時、何度も繰り返される彼女からの似たような質問に対して、私はこう優しく勧めました。 「そういうことは、AIに聞いた方がすぐに正確な答えを教えてくれるよ」 そう言って、使い方のリンクを数回送ったのです。
時間を搾取されるのはもちろんのこと、彼女の話は自分にとってプラス(楽しい話)ではありませんでした。それに、相談内容への回答はあくまで私の意見であって、彼女が仮にその意見に基づいて行動したとしても、私は責任を取れないーーそう思ったのも、AIを勧めた大きな理由です。
再三勧めた甲斐があり、彼女がようやくAIを使いこなせるようになった途端、驚くほどパタリと、毎日の依存的な連絡は止まりました。
私の代わりに、いつでも文句を言わずに話を聞いて、調べてくれるAIという便利な器を見つけたのでしょう。その代わりに、今ではなぜか、かなり偏った思想の政治や動画のリンクだけが、LINEでポツリポツリと送られてくるようになりました。
もし、今も私が毎晩お酒に溺れていたら、今頃その偏った動画を一緒に見ながら、深夜までダラダラと意味のない電話につき合い、自分の貴重な人生の時間をドブに捨て続けていたに違いありません。
あのときの経験があるから、今の尊さがわかる
あのとき消えてしまった、あるいは私から距離を置いた人間関係は、決して無駄ではなかったと思っています。あのときの苦い経験があるからこそ、今の自分の時間を大切にできるし、今、周りにいてくれる人たちの尊さを心の底から理解できるからです。
今の私の手元には、頻繁にべったりと連絡を取り合うわけではないけれど、お互いの人生に環境の変化があった時には自然と連絡を取り合い、一瞬にして昔のように心から盛り上がれる、自立した本当の友人たちしかいません。
見せかけの賑やかさや、エネルギーを吸い取られるだけの関係を手放した私の世界は、驚くほど静かで、そして、驚くほど本当に大切な人たちの愛で満ち溢れています。
お酒をやめて、時間を取り戻すということは、自分の人生を守るということ。 ささやかで愛おしいこのしらふの日常を、私はこれからも全力で、丁寧に守っていこうと思います。
