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TOPIKには「분량 분량!」が出てこない――GOING SEVENTEENを3年分分析して分かった、推し活韓国語の別体系

以前、私は「K-POPを深めたい人がTOPIKに向かうこと」への違和感について書きました。

もちろん、TOPIKは大事です。 韓国語の基礎体力をつけるには、よくできた試験です。

でも、K-POPを深めたい人が本当に知りたいのは、そこなのでしょうか。

推しが何で笑っているのか。 なぜその一言でメンバーがざわついたのか。 コメント欄が何に沸いているのか。 字幕の一語に、どんな温度があるのか。

そこを知りたい人に、「まずTOPIKを頑張りましょう」と言う。

まあ、間違いではありません。

でも、かなり遠回りだと感じてしまう。

私は以前、K-POPの文化なら、アイドルの動画やSNS、ファンの投稿を読み込んで分析できるはずだと書きました。(詳しくは上にアップしたブログを)

今回、それを自分でつなげてみました。

あのとき「分析できるはずだ」と書いた当人が、本当に分析してみたわけです。過去の自分への宿題のようなものです。

対象にしたのは、GOING SEVENTEEN。 理由は見ていて面白いから(笑)

EP.30からEP.147まで、3年分。 約11万発話を、kiwipiepyという形態素解析ツールにかけ、頻度の上位300語を出しました。

そしてその300語を、国立国語院の「韓国語学習用語彙目録」と一語ずつ照合しました。

いわば、

「教科書・試験が教える語」

と、

「推しが実際に使う語」

を、数字で突き合わせたのです。

最初に、正直な結果から書きます。

GOING SEVENTEENの頻出語の多くは、ちゃんと学習用語彙と重なっていました。

メンバーの名前などを除いて素直に数えると、上位300語の8割以上が「リストにある語」です。

つまり、こう言えます。

地道に単語を積み上げれば、推しの言葉の大半はカバーできる。

しかも、初級だけで、です。

級ごとに切り分けてみました。

GOING SEVENTEENの頻出300語のうち、初級A級に入っているのは186語。全体の62%です。

出てくる回数で重みづけすると、初級語だけで71.7%。

中級まで広げると、83.3%に届きます。

つまり、初級をひととおり終えた人は、推しの言葉の7割以上を、語のレベルでは知っている計算になります。

……あれ、と思った方。鋭いです。

「じゃあ、やっぱりTOPIKでいいんじゃないの?」

ここが、今回いちばん書きたかったところです。

結論から言うと、問題は「量」ではありませんでした。

7割重なっているのに、それでも推しの韓国語は聞き取れない。

なぜか。

重なっている語の「使われ方」と「優先順位」が、教科書と現場でまるで違うからです。

「知らない語」が壁なのではありません。 「知っているはずの語」が、現場では違う顔をしている。

これが本当の壁でした。

順に、見ていきます。

たとえば、「本当に」という言葉。

教科書がまず教えるのは、정말 でしょう。

もちろん、정말 は大事です。 間違いなく大事です。

でも、GOING SEVENTEENで圧倒的に出てくるのは 진짜 でした。

出現回数は、정말 の約7倍。

どちらも学習用語彙には入っています。 級も、隣どうしです(정말 がA級、진짜 がB級)。

なのに、教科書が「標準」として差し出すのは 정말 で、現場が浴びるように使うのは 진짜 なのです。

これは、レベルの問題ですらありません。

教科書の優先順位と、現場の優先順位が、ただ逆を向いている。

진짜? 진짜로? 진짜 아니야. 진짜 너무해. 진짜 웃겨.

驚き、確認、強調、ツッコミ、言い訳。

全部に使われます。

問題は、「本当に」と訳せるかどうかではありません。

どのタイミングで 진짜 が出るのか。 どれくらい前のめりなのか。 どれくらい本気なのか。 どれくらいツッコミなのか。

そこを見ないと、推しの韓国語は聞こえてきません。

感嘆詞も象徴的です。

頻出の上位に、아니 がいます。

これは「いいえ」ではありません。

いや。 待って。 違う違う。 そうじゃなくて。 なんでそうなるの。 ちょっと聞いて。

会話の入口であり、ツッコミの起動音です。

아니 はA級。初級で習う語です。

でも、TOPIKで 아니요 を「いいえ」として覚えても、GOING SEVENTEENの 아니 は聞き取れません。

音は知っている。 級も知っている。 でも、働きが違う。

これもまた、「知っている語」なのに「使われ方が違う」例です。

そして、感情の言葉。

ここは、さっきまでと逆のパターンです。

教科書の感情語は、たいてい大きなカテゴリーで出てきます。

슬프다。悲しい。 기쁘다。うれしい。

もちろん必要です。

でも、バラエティを見ていると、メンバーが使う感情語はもっと細かい。

서운하다。 속상하다。 억울하다。 답답하다。 뿌듯하다。 설레다。

このあたりです。

そして面白いことに、この細かい感情語たちは、上位300語には入ってきませんでした。

一語一語の頻度で見れば、そこまで多くない。

でも、だからといって「重要でない」わけではないのです。

서운하다 は、ただ「悲しい」ではありません。

期待していたのに外された感じ。 少し傷ついた感じ。 でも怒るほどではない感じ。 相手に分かってほしい感じ。

めんどくさい感情です。

でも、このめんどくささが分からないと、韓国語の会話はかなり平板になります。

속상하다 も違う。 억울하다 も違う。 답답하다 も違う。

韓国語の感情は、かなり細かく分かれています。

そして、この細かさがわかるとバラエティが面白くなり、推しの気持ちがバシバシ伝わってきます。むしろこういった細かすぎる感情語を、初級者でもK-POP好きは攻めた方がいい。

メンバーが今どんな心境なのか。 冗談なのか、本当に少し傷ついているのか。 拗ねているのか、照れているのか。 悔しいのか、納得いかないのか。

その温度を測るバロメーターが、感情語の撃ち分けです。

「悲しい」一語では、推しの気持ちの解像度は上がりません。

頻度ランキングの上位だけ追っていても、ここには届かない。

「よく出る順」と「推しを理解するのに効く順」も、また別なのです。

そして、今回の分析で一番おもしろかった語。

분량。

ふつうに訳せば「分量」「量」です。

辞書を引けば載っています。学習用語彙でも、上級(C級)にはあります。

でも、GOING SEVENTEENでの 분량 は、それだけではありません。

見せ場。 尺。 撮れ高。 編集される価値。 バラエティで生き残るための存在証明。

つまり 분량 は、単語ではなく、番組の構造そのものです。

メンバーたちは、ただ遊んでいるのではありません。

自分たちがどう映るか。 どこが使われるか。 どこが切られるか。 どこで笑いを作るか。

それを分かっている。

だから「분량을 뽑다」という言い方が出てくる。

撮れ高を稼ぐ。

これは完全にバラエティの現場語です。いわゆる業界用語。

「分量」という語そのものはどんな辞書にもありますが、この「撮れ高」としての 분량 を、普通の韓国語教材が教える理由はありません。

でも、GOING SEVENTEENを見るなら、これ以上なく重要な一語です。

なぜなら、この意味での 분량 が分からないと、彼らが何にあんなに必死なのかが分からないからです。

「分量」は習っても、「분량 분량!」と叫ぶ彼らの気持ちは、TOPIKでは習いません。

でも、GOING SEVENTEENには出てくる。

ここに、韓活韓国語の入口があります。

韓活韓国語は、韓国語を学ぶこと自体を目的にしません。

韓国語は、あくまで手段です。

推しを深く知るため。 動画をもっと楽しむため。 コメント欄の温度を読むため。 字幕の一語に引っかかるため。 その言葉がなぜそこで出たのかを観察するため。

そのための韓国語です。

いわゆるスタディー韓国語は、韓国語そのものを勉強の対象にします。

発音。 文法。 単語。 試験。 級。 合格。

もちろん、それも大事です。

でも、K-POPを深めたい人が、本当に欲しいのは、そこだけではないはずです。

推しが笑っている。 ふざけている。 照れている。 悔しがっている。 分量を取りに行っている。 ちょっと 서운해 している。 いきなり 아니 からツッコんでいる。

そこを分かりたい。

だったら、最初からその現場を見ればいいのです。

語のレベルでは7割が重なっている。

それなら、残りを単語帳の順番どおりに埋めていくより先に、もう「現場」に入ってしまっていい。

知っているはずの語が、現場でどう動くか。 진짜 がどんな温度で飛ぶのか。 아니 がどこで会話を起動するのか。 教科書がひとくくりにする「悲しい」を、彼らがどう撃ち分けるのか。

そっちを浴びた方が、ずっと早い。

GOING SEVENTEENが好きなら、GOING SEVENTEENから。 ドラマが好きなら、セリフから。 コメント欄が気になるなら、コメント欄から。

そこに出てくる語が、その人にとって最初に必要な韓国語です。

順番が、逆なのだと思います。

韓国語を仕上げてからK-POPへ行くのではなくて、K-POPを見ているうちに、必要な韓国語の方が見えてくる。

もちろん、基礎はやった方がいい。 ハングルも、文法も、やれば必ず効いてきます。そこは疑っていません。

しかも今回分かったとおり、基礎をやれば、語の7割はもう現場と重なる。基礎は、ちゃんと効くのです。

でも、「まず単語帳を上から下まで」「まず試験」という一本道だけが正解、ということもないはずです。

TOPIKにはTOPIKの体系がある。 韓国語を、広く、正しく、順番に積み上げるための体系です。これはこれで、本当によくできています。

ただ、GOING SEVENTEENにも、GOING SEVENTEENの体系がありました。

아니 で会話が始まって、 진짜 で感情が前に出て、 서운하다 で関係のズレが見えて、 분량 で番組の構造そのものが透けてくる。

単語帳の外にこぼれた、ばらばらの言葉ではありません。

知っているはずの語が、現場の文法で組み直された、もう一つの韓国語です。

——そういえば、まだ説明していない語が一つあります。

팔랑귀。

直訳すると「ひらひらする耳」。人の言うことにすぐ流される、あの感じです。

GOING SEVENTEENでは、この一語が、企画そのものを動かしてしまう瞬間があります。

でも、それはまた別の話。

「分析すれば、きっと見える」と、私は以前書きました。

実際にやってみたら、本当に見えました。

教科書の外に、ではなく――教科書と重なったその先に、もう一つ、推しのための韓国語が、ちゃんと広がっていたのです。

分析結果は、これから少しずつ出していきます。

팔랑귀 の話も、そのうちに。

乞うご期待、ということで(笑)

【訂正とお詫び】

この記事の初出(2026年6月15日)では、初級A級語のカバー率を「語数で34.7%」「出現回数で46.7%」「中級まで含めても65.4%」と書き、「初級では推しの言葉の半分も拾えない」と述べていました。

これは、私の集計ミスでした。お詫びして訂正します。

原因は、形態素解析の集計方法にありました。韓国語の動詞・形容詞は活用で形が変わります(듣다→들어요、알다→알아요…)。最初の集計では、この活用形をうまく一つにまとめられておらず、하다・되다・알다・듣다・좋다 といった、最頻出のはずの基本動詞・基本形容詞が、ランキングから大量に抜け落ちていました。 これらはどれも初級(A級)の語です。それが抜けたまま数えていたので、初級カバー率が実際よりかなり低く出てしまっていたのです。

集計をやり直したところ、正しい数字は、

  • 語数ベース:初級A級 62.0%(旧34.7%)

  • 出現回数ベース:初級A級 71.7%(旧46.7%)/中級まで 83.3%(旧65.4%)

でした。「半分も拾えない」どころか、語のレベルでは7割以上が初級語と重なっていたわけです。当初の記事とは、結論が逆になります。

ただ、この訂正で、記事の言いたかったことが崩れたかというとむしろ逆でした。

「初級では量が足りない」という話は、間違いとして取り下げます。 でも、この記事の本当の柱は、そこではありませんでした。

量はむしろ足りている。7割重なっている。なのに聞き取れない。それは、同じ語でも教科書と現場で優先順位と使われ方が違うからだ。

これが、今回の正しい数字で、かえってはっきりしました。진짜 と 정말 の逆転も、아니 の働きも、感情語の撃ち分けも、분량 の業界用法も、「知らない語の問題」ではなく「知っているはずの語の問題」です。数字を直したことで、その筋がより通りました。

データを扱う者として、出した数字が間違っていたことは、率直に恥ずかしいです。

でも、間違いに自分で気づいて直せること、そして直した結果が前より誠実な話になることそれも、現場のデータと向き合う面白さの一つだと思っています。

今後は、集計方法をより慎重に確認したうえで、分析結果を出していきます。

引き続き、よろしくお願いします。


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