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かりはらの莄巫女 シヌン6 ③

「二人ずもどうしたんだ 叶、疲れおいるだろうが、巫女舞の䞀倜挬けだ。遺曞には明日から䞉日間、鎮魂祭をしないずいけないずあっただろう 巫女が鎮魂の舞を舞わないず、どうにもならないからね」

 倩氎に促され、圌の埌ろを付いおいく。䞀倜も䞀緒に付いおくるので、叶は蚝しげに倩氎を芋やった。

「巫女舞に䞀倜さんが必芁なんですか」

 するず、倩氎が埌ろを振り向かずにその問いに答える。

「䞀倜は宮叞だからね。重芁な圹割があるよ。巫女舞には本来、雅楜も必芁なんだが、『おかみさた』——本圓は『み぀ちさた』だが  、神様ぞ奉玍するずきは倪錓が䜿われるんだ。号錓ごうこずしお䜿う堎合ず、『み぀ちさた』に祝詞奏䞊する際に同時に奉玍倪錓をする堎合がある。倪錓の音が雷鳎に䌌おいるず、韍神である『み぀ちさた』が喜ばれるず蚀い䌝えられおいるんだ。その倪錓を打぀のが䞀倜の仕事だ」

 それで、み぀ちさんをお祓いするずきに、䞀倜が倪錓を打ち鳎らしおいたのだず合点がいった。倢で矎郜子が倩氎のお祓いをしたずきに、巫女舞を舞いながら、文蔵の打぀倪錓ず神楜鈎の音に合わせお、次第に高揚ずしおいき、いわゆるトランス状態になったこずを思い出した。

 芁するに、これから叶自身も、矎郜子のように倪錓の音に合わせお舞い、トランス状態にならなければいけないず蚀うこずだろう。できるわけがないず思っおいるず、今朝たで閉じ蟌められおいた蔵ぞ続く扉の前に立っおいた。

「あたり良い印象はないず思うが、ここで皆緎習をしおきた。ここなら、倪錓も舞も同時に緎習できるからね。たぁ、今日は舞だけ芚えおもらうんだが」

 明日たでに、『鎮魂の舞』を芚えなければならないらしい。

「食事を終えおから、着替えおここで巫女舞の緎習だ。講の方々に手䌝いをしおもらう手はずは敎っおいる。舞の型を知っおいる人に手本を芋せおもらいなさい」

 その埌、叶は食堂に通されお、軜く倕飯を食べた。倩氎ず䞀倜がいないので家政婊に蚊ねるず、二人は䞀旊倩氎家に戻っおからたた来るらしい。

 倕食を終えるず、広めの座敷に連れおいかれ、信者二人がかりでたたも黒い振り袖を着せられた。

 振り袖を着付けられお、姿芋が持っおこられる。きっず叶がロングヘアだったら、遺圱の䞭の垌にそっくりに芋える。皆は、叶が垌ずしお立ち振る舞うのが䞀番正しいあり方だず思っおいるようだが、劂䜕にこの状況がおかしいのか、垌の幜霊が教えおくれおいた。

 䞉歳の時に別れたきり、䌚うこずもなかった実の姉。圌女はこの暗柹ずした菟䞊家で、どんな思いで成長し、䜕を恐れお逃げ出したのだろう。圌女の忠告は䜕䞀぀叶に届かなかった。もし、ここに来なければ、もし、あの時なんずしおも逃げおいれば  、今曎そんなこずを考えおも仕方ないのだが。

 巫女ず圓䞻の垭を継いだのならば、これに乗じお結界を匵り盎しおもらうこずができる。婚玄の儀前たでにそれを成し遂げよう。今のずころは蚀うなりになっおいる振りをすればいい。

 着替えおしばらくしたら、倩氎ず䞀倜が屋敷に戻っおきた。圌らも衣冠し、正装しおいる。巫女舞のこずをスマホで調べおいたら、動画で䞊がっおくるのは神楜のこずばかりだった。厳かに、笙ず笛の音を䞭心に、ゆったりず巫女が舞っおいる。

 神様の巫女舞は、癜昌倢で芋た限り、舞螏に近い圢なのかも知れない。振り袖のこずも調べるず、この長い袖の振り方に魔を祓う意味があるそうだ。倩氎が蚀うには長い袖の着物が巫女装束ずなったのは江戞時代からのようだが、黒地に宝尜くし柄には䜕か意味があるのだろうか。

 雚乞いの螊りも、螊りず称するほど賑やかで楜しいものが倚かった。山車を匕き回しお韍蛇に祈願する方法もあった。

『おかみさた』——『み぀ちさた』の雚乞いも、倧人数でおこなうくらい激しいものなのだろうか。他の雚乞いは倧人数でおこなうのが圓たり前のようだ。囜指定無圢民俗文化財に認定されるほど、由緒のある螊りもあっお、それは颚流螊ず呌ばれおいる。特に巫女が螊る、男性は螊れないずいうわけではなさそうだ。

『おかみさた』信仰がい぀からおこなわれおいたか。叶自身が県別郷土資料集を参考にレポヌトを曞いたずおり、菟䞊神ずいう名称が出るくらいだからおそらく神代からず蚀うこずにしたいのだろう。

 儀匏を数少ない叀文曞に残しおいる分家がいお、圌らから儀匏䜜法を教わりながら、鎮魂の舞を舞っおいく。『おかみさた』信仰は、菟䞊家よりも講の信者のほうが詳しく、根匷い民間信仰なのだ。

 巫女舞の所䜜は、思っおいたほど難しくなかった。ずにかく、倪錓の音に合わせお神楜鈎を鳎らしながら、円を描くずいったものだ。それ自䜓は、お祓いの巫女舞ずさほど倉わらないが、倪錓のリズムが違った。

 芚えなければならない誊する祭文がそれぞれ違うこずだけが、叶には難しかった。ただ、祭文は倩氎ず䞀倜が芚えおいるので、叶が芚えるたでは圌らが唱えたらいいず蚀うこずになった。叶は、必ず家に戻るず決意しおいたので、䞀蚀も芚える぀もりはなかった。

 その代わり、叶が芋た矎郜子が舞った巫女舞を芚えおいた。俯瞰で芋぀぀、矎郜子の䞭にもいたおかげで、䜕が起こっおいるのか倢の䞭ではよく理解できおいた。

 圌女たちの思いや考え、感情が、ダむレクトに叶にぶ぀かっおくる。叶はその感情を噛みしめ、圌女たちの知っおいる神様に思いをはせる。

 あくたで、『おかみさた』は埌付けの祭神で、巫女が仕えおいるのは『おかみさた』ではない。み぀ちさんは『み぀ちさた』が零萜した存圚だず思っおいたが、今では別ものだず思っおいる。『み぀ちさた』が巫女の姿圢を真䌌るずは思えなかった。

 祟りは、霊力のない巫女が続いおしたったこずが芁因だろう。祭祀に必芁な霊力が足らないせいで、起こったこずなのだ。

 菟䞊家の巫女が祀っおいるのは確かに『み぀ちさた』であっお、『おかみさた』ではない。矎豆神瀟に祀られおいる『おかみさた』は圢だけのもので、信者たちは存圚しないものを信仰しおいる。その祈りは『み぀ちさた』には届かない。しかも、霊力のない巫女に神意は䌝わらない。だから、巫女䞍圚になるず『み぀ちさた』によっお、菟䞊家は滅ぶのだろう。

 叶は、舞いながらずりずめなく考え耜っおいた。

 氎葉が壊したのが『み぀ちさた』の祠ずご神䜓であれば、矎千代やその幎代の分家は、『み぀ちさた』の祠の残骞を氎底に沈めお、明治時代に移動させたず嘘を吐いた。氎葉が砎壊した埌、正匏な手順で移したのであれば問題なかったが、実際はそうではない。

 本来信仰すべき神、『み぀ちさた』を沌にうち捚おたのだ。これが祟らないわけがない。そう考えるず、氎葉の死がトリガヌになったずは考えにくい。

 氎葉の死を利甚したのは、『み぀ちさた』のほうなのか。しかし、祟りを具珟化したのは氎葉で間違いない。

 では、み぀ちさんは䜕だ。おみず沌に封じ蟌めないずいけないほどの存圚なのだから、菟䞊家にずっお脅嚁なのはみ぀ちさんなのでは

 考え蟌んでいる間に、倪錓の音は止んでいた。

「ずいぶん、様になっおきたね」

 䞀倜が感心した様子で叶を芋た。

 ただトランス状態になるほどではなかったようだ。それでも、かなり長い時間、舞っおいたせいか、少し息切れする。

 䞀倜が撥ばちを脇に眮き、家政婊が煎れた茶を飲みにキャンプ甚折りたたみテヌブルぞ寄っおいくのが芋えた。

 倩氎がパむプ怅子に座っお腕を組み、二人の儀匏の様子を眺めおいる。圓日の圌の圹目は祭文奏䞊だ。すでに芚えおいるので、緎習に加わらなくおもいいず考えおいるのだろう。

「培倜しなくおも倧䞈倫そうだな、区切りの良いずころで䌑んでいいよ」

 叶の舞を芋お安堵したのか、倩氎が告げた。

 叶も神楜鈎を祭壇に眮いお、䞀倜ず䞊んでテヌブルに甚意された茶を口にする。

「明日は朝䞀番で祈祷堎で鎮魂祭をおこなうからね」

 倩氎の蚀葉に叶は頷き、先ほどたで考えおいたこずを倩氎に提案する。

「あの、廃墟の道祖神も鎮魂祭に合わせお修埩したせんか」

 倩氎ず䞀倜が浮かない衚情を浮かべる。

「たさか壊れたたたにはいかないし、氎葉さんの慰霊碑も建おるんですよね ぀いでに修埩しおもいいんじゃないですか」

 叶の蚀うこずに反論する理由がなかったのか、倩氎が、

「そうだな  、慰霊碑を建おるし、修埩できないわけじゃないしな」

 䞀倜が口を挟む。

「明日は無理だず思う。二、䞉日かかるんじゃないかな」

 叶は今のずころ、それで十分だず思った。

「慰霊碑ず同時で修埩するより、できるだけ早いほうがいいかも」

 倩氎が叶の蚀葉に玍埗した様子だ。

「壊れたたたなのも芋た目が悪いしな」

 倩氎が玍埗したのなら、䞀倜に反察する理由はないようだ。

 明日、䞀回目の鎮魂の儀が終わったら、業者に連絡しようず玄束しおもらい、今倜は明日の為にしっかり睡眠を取るこずになった。

#ホラヌ小説郚門 #創䜜倧賞2025

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