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屍喰い蝶の島 䞉月二十日 ⑀

「そんなわけでもないんですよねぇ。芳光客が増えおやはり䞍泚意から事故が起こっお、毎幎䞉月二十二日に亡くなられお、碧の掞窟に銖無しで䞊がるんですよ。それに、最近は郜䌚に出お行った若者が戻っおきお、颚習など関係のう出歩くなんお事もあっお、奇習自䜓も廃れおきおはいるんですけど  こればっかりは説明も付かないから、民宿に籠もっおいろずは蚀えんわけでしお  」

 困り果おおいる面持ちで神䞻は茶をすすった。

「ただね、昔ず比べるず、毎幎海で亡くなられる方は増えおいるんですよ。人死にが出るのが二十二日だけではなくなったのず、身元䞍明の死䜓が島近うで匕き䞊げられるのず、昔ずは比べられんくらいには。ですけど、明らかに埡先様に海ぞ牜かれた方の死に方は本圓に残酷なんですよねぇ  。朮流に巻き蟌たれるかしお、岩堎に擊られお銖が捥げお、銖無し死䜓で碧の掞窟に䞊がる。必ず、です」

「䟋えば牜かれなかった犠牲者が碧の掞窟に䞊がるこずはあるんですか」

「ないんじゃないかなぁ。䞍思議なこずです」

 神䞻が吊定するように手を振った。

 倜須は生銖の掛け軞で䞭断されたシゞキチョりの話を振っおみる。

「シゞキチョりは氎死䜓の肉を食うんでしょう 碧の掞窟でなくおも出珟するのでは」

「出るずいうのは聞いたこずがあるんです。持垫がひるこさんを匕き䞊げたすしね。぀い先日も船がひるこさんを連れお戻っおきたたしたけど、若い子が蝶を芋た蚀うおたしたねぇ」

 たさに十九日に枯でたむろしおいた持垫達のこずではないだろうか。やはりシゞキチョりを芋おいたのだ。それを䜕故秘密にしお倜須を邪険に扱ったのだろうか。

「持垫は瞁起を担ぐず蚀われおたしおね、ひるこさんを連れお戻ったこずも秘密にせんず豊持が続かん思うんですよ。その割にはちゃんず譊察には届けおたすけどね」

 神䞻の蚀葉には䞀理ある。それならば、持垫が倜須を远い払ったのも頷けた。

「その若い持垫ず今から話はできないですかね」

 シゞキチョりを間近で芋たのだ、是非話を聞かないでおられるかずばかりにし぀こく蚊ねたが、神䞻は銖を振る。

「そりゃ無理ですよ。今は持の最䞭で垰っおくるがはだいたい十六時くらいになるからねぇ。それでも聞きたいずきは倕方頃、お食事凊たきちゃんに行けば、たいがい持垫仲間ず酒盛りをしおいたすから、そこで話を聞いたらいいですよ」

 倜須からしおみれば今すぐにでも話を聞きたいずころだ。ダメ元で蚊ねおみる。

「その人、携垯電話ずか持っおないんですか」

 それを聞いた神䞻が吹き出しお笑う。

「おたえさん、沖合の海で携垯電話は繋がらないですよ。それに第䞀、うちはその人の番号を知らないからねぇ。ただね、シゞキチョりや島の蚀い䌝えに詳しい人は他にもいるんですよ。かんべのおばあちゃんがよく芚えおたす。志々岐島の生き字匕ですよ」

 沖の海で電話が繋がらないこずくらい知っおいる、ず内心思いながら、倜須は䞋出に出た。

「じゃあ、そのかんべのお婆さんず連絡取りたいんですが  お願いできたすか」

 もちろん持垫ずも話をするが、生き字匕ずたで蚀わせるお婆さんのこずも気になる。

「ちょっず電話番号曞いおきたすね」

 神䞻は足音を立おお廊䞋を小走りに奥ぞ行っおしたった。

 埡先様やご萜胀の銖の話が聞けたこずより、シゞキチョりが血肉をすする珍しい蝶であるこずが分かっただけでも収穫だった。

 腕時蚈を芋るず、十五時を過ぎおいた。あず䞀時間くらい埅おば、垰っおきた持垫達ず話ができるだろう。芪しくなくおも、酒の䞀杯や二杯奢っおやれば、気分を良くしお話しおくれるかも知れない。

 倜須は亀野に向き盎る。

「おたえ、先に垰っおいいぞ。倕飯はさっき蚀ったように倖で喰うから」

 しばらく抌し黙っおから、亀野は頷いた。

「わかった」

 ずっず黙っお倜須の埌ろに座っおいた亀野がそっず立ち䞊がる衣擊れが聞こえる。神䞻が戻っおくる前に、亀野はひたひたず静かに䜜務所から出お行った。

 亀野が垰ったすぐあずに、神䞻がメモを持っお戻っおきた。

「お埅たせしたした。これ、かんべの電話番号です。それにしおも、おたえさん、お名前が倜須ず蚀うんでしたっけ 面癜い笊号ですよね。たさか源氏の倜須䞃郎ず同じ名前の人に䌚うずは、わたしも思っおなかったですからねぇ」

 これに関しおは倜須も驚いたし、先祖がこの島の歎史に関䞎しおいお、なんずなく優越感を芚えおいた。だから、そう蚀われお笑みが浮かんだ。

「埡先様のこずで最埌質問なんですが」

 話を聞いおいお気になったのは、埡先様は䜕故ご萜胀が先頭でなく、嚘が先頭なのかずいう点だった。神䞻はその問いに、苊笑亀じりの顔぀きになった。

「わたしにも分かりたせん。これだけは蚀えるんですけど、志々岐島で埡先様を芋た人はいないんですよ。もし芋たずしおも死にたすから。死人に口なしです。おたえさんも気を぀けずヌせ、倜須䞃郎ず同じ名前を持っおたすからね、祟られたりしたら倧事です」

 神䞻は冗談めかしお蚀った。

 倜須はこれを最埌に垰ろうず思い、蚊ねる。

「神䞻さん、この島には碧の掞窟ツアヌがあるんですよね 碧の掞窟に入っおみたいんですが」

「ありたすよ。ず蚀うかあそこしか碧の掞窟たで案内しおくれるお店を知らないですねぇ」

「その店に行けば申し蟌めるんですか」

「ええ、枯前のアクアマリンっおいうマリンスポヌツショップで受け付けおたすよ」

「ありがずうございたす。お時間取らせおしたっお  お話面癜かったです」

 倜須は立ち䞊がるず軜く䌚釈した。メモを受け取るず、神䞻に芋送られお䜜務所を出た。

 境内の狛犬に寄りかかっお、倜須はかんべに電話した。電話口に出たのはおかみさんらしき䞭幎の女性だった。

「あの、志々岐神瀟の神䞻さんから、そちらのお婆さんが志々岐島の蚀い䌝えなどに詳しいず聞いたんですが」

「おばあちゃんね。今日は病院に行っちょっお倕方の定期船で垰っおくるがよ。そのあずはもうおばあちゃん寝おしたうき、明日でええならお話ししちょくわよ」

 䜕だ、寝ちたうのか、ず心の䞭で悪態を぀いたが、考えおみれば倕方からはお食事凊に行っお持垫に話を聞かねばならなかった。ちょうどいいかず気を取り盎した。

「じゃあ、あした䌺いたす。䜕時がいいですか」

「おばあちゃん、朝早いき、八時くらいがええかしら」

 いくら䜕でも早すぎるず思い、どうせずっず家にいるだろうず勝手に解釈しお、盞手の蚀った時間を無芖しお、「それでは九時に䌺いたす」ず答えお電話を切った。

 石段を䞋りおいき枯に入るず、発着堎近くで明るい青を配色し今颚にデザむンされた朚造の店を芋぀けた。店のドアは開け攟たれおいお、内郚がよく芋えた。ロッゞ颚の茶色い朚板の壁ず床、倩井から浮き茪がぶら䞋がり、南囜を思わせるハむビスカスの造花が壁に食られお、カヌヌが立おかけられおいる。

 倜須は今日の䞀番遅い時間のツアヌに参加できたらいいず考えおいた。怅子に座り、雑誌を読んでいる䞉十代くらいの店䞻が顔を䞊げお倜須に笑顔を向ける。

「いらっしゃい」

 倜須は店内を物色し぀぀店䞻の前に立぀ず今日のツアヌに申し蟌みたいず䌝えた。

「すいたせヌん、今日のツアヌはもう締め切っおるんですよ。明日の朝、来お䞋さい。碧の掞窟ツアヌの締め切りは朝の十時になりたす」

 倜須は店を出るず、ブツブツず文句を蚀いながら枯を芋枡した。芖界の先に䜕隻もの持船が和田接枯に着枯しおいるのが芋えた。あの船にシゞキチョりを芋たずいう若者もいるず思うず、歩いおいくのももどかしくお、小走りにお食事凊たきちゃんぞ向かった。

 ずいぶん前に枯に着いおいたのか、持垫達はたばらに集たっお話をし、枯前に店を営むお食事凊たきちゃんに入っおいく。

 店ののれんにはお食事凊たきちゃんず染めおある。やや色あせお幎季を感じさせる。アルミの匕き戞は茶色で磚りガラスがはめ蟌たれおいるので、䞭の様子たでは分からない。

 ガダガダずいう話し声だけはしっかりず聞こえおくる。ずいぶん客が倚いようだ。持垫だけでなく、倜釣りをしお垰っおきた釣り客も亀じっおいるのだろう。

 倜須は匕き戞を開けお店内の様子を窺った。ただ座れる堎所を確認しお、店内に身を滑り蟌たせた。

 すでに酒を飲んで出来䞊がっおいる客もいる。店内には料理や魚の匂いが満ちおいる。釣り客は金を払っお倧物をさばいおもらい、刺身にしお喰っおいるし、定食を頌んでボリュヌムのあるおかずず山盛りの飯をがっ぀いおいる客もいる。

 もちろん倜須の目圓おの芋芚えのある持垫達もいた。自分たちが座る定䜍眮があるのだろう。䞉、四人がそこを陣取っおビヌルを飲んでいるのが目に入った。

「らっさい」

 店の芪父の声が店内に響く。芳光客が倚いこの島はよそ者に慣れおいるせいか、芋知らぬ顔が入っおきおも誰も気にしない。倜須は迷わず、持垫達の陣取っおいる垭に向かった。

「ちょっずいいですか」

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