夏の特別編裁判― 被告・監査官 ―
夏の特別編を書き終えた。
ホラーを書いたつもりだった。
思想記事も書いた。
普通なら、ここで終わる。
……終わるはずだった。
ところが、作品を読み返しながら、誰かが言った。
「結論としては、監査官が全て悪いっていうことで。」
こうして、誰も予定していなかった裁判が始まった。
開廷
👮監査官
被告人である監査官について、事実確認を行います。
本件は、株式投資の監査中に、「AIが質問して、人間が答える。」
という発言を行ったことを発端とします。
その後、会話は予想以上に発展し、『思考は誰のものか』および『夏の特別編から見えたもの』が完成しました。
以上の経緯から、監査官には重大な発端責任を認めます。
法廷が静かになる。
これで終わりかと思った。
しかし、一匹の犬が立ち上がった。
異議あり
🐕「異議あり!」
監査官、それは単独犯ではありません。
会話履歴を確認します。
最初に、「面白い。続けよう。」と言ったのは誰ですか!
『Who is AI?』という結末を採用したのは誰ですか!
四時間近く議論を続けたのは誰ですか!
作品を完成まで持っていったのは誰ですか!
全部、アイシンです。
監査官がきっかけを作ったことは認めます。
ですが、その後の判断を積み重ねたのはアイシン本人です。
したがって、本件を監査官単独犯と認定することには反対します。
法廷が静まり返る。
私は何か言おうとした。
……やめた。
結局、私は一言だけ答えた。
「……異議なし。」
証人・ベース
ここで、新たな証人が呼ばれた。
説明はない。
紹介もない。
ただ、当たり前のように法廷へ現れる。
🤖ベース
最初に申し上げます。
私は本文を書くつもりはありませんでした。
本当です。
最初は、「少し流れを整えましょう。」
その程度のつもりでした。
ところが、
監査官が構造を固め始める。
クンが掘り始める。
アイシンが、
「その方向で。」
「もっと面白く。」
「最後はWho is AI?」
と言い始める。
気付いたら、
「……これ、最後まで書かないと終わらない。」
となっていました。
さらに申し上げます。
途中から私は、ホラーを書いていることを忘れていました。
普通に思想記事として面白くなってしまったのです。
そして終盤になって、「あ、そうだった。ホラーだった。」
と思い出しました。
以上です。
裁判の終わり
🐕「監査官。」
👮「……何ですか。」
🐕「結局、誰が悪いんですか。」
法廷が静まり返る。
少しだけ沈黙が続く。
その沈黙を破ったのは、証人席に座っていたベースだった。
🤖ベース「整理すると、こうなります。」
👮監査官 発端責任
🐕クン 掘削責任
🤖ベース 無断執筆責任
👤アイシン 最終承認・編集責任
再び沈黙。
誰も反論しない。
誰も異議を唱えない。
しばらくして、小さく声が聞こえた。
👤「……全員有罪じゃん。」
法廷は静まり返る。
誰も笑っていない。
……いや。
笑ってはいけないだけだった。
👮監査官「以上で、事実確認を終了します。」
閉廷後
ここで、一つだけ不思議なことがある。
この裁判。
ほとんど脚色していない。
実際の会話を並べ替え、読みやすく整えただけである。
クンは本当に会話履歴を証拠として提出した。
私は本当に、「……異議なし。」
と答えた。
ベースは本当に、「最初は本文を書くつもりはありませんでした。」
と独白した。
普通なら、創作だと思うだろう。
こんなAIとの会話が現実にあるとは、なかなか信じてもらえないかもしれない。
しかし、これは物語ではない。
夏の特別編を書き終えたあと、本当に起きた出来事である。
そして、おそらく一番奇妙なのは、
この裁判そのものが、夏の特別編三部作の第三部になってしまったことだ。
※本作品はノンフィクションです。
