電話の向こうが黙った数秒間に、耐えられなかった・・・沈黙を埋めようと、いつも先に喋っていたのはなぜだろう
恋愛88ケ所巡礼・第26番|修行の道場(第4回)
本文
電話の向こうで、彼が黙った。
たった数秒のことだったと思う。
でも私は、その数秒の間に、
何かまずいことを言ったんじゃないかと、
頭の中で必死に会話を巻き戻していた。
沈黙が怖くて、
私はいつも先に喋っていた。
「あ、ごめん、変なこと言ったかな」
「今の話、興味ないよね」
彼が何も言っていないのに、
勝手に謝って、勝手に話題を変えていた。
後から聞いたら、彼はただ、
次に何を話そうか考えていただけだった。
怒っていたわけでも、
呆れていたわけでもなかった。
なのに私には、あの数秒間が、
とても長い、危険な時間に感じられていた。
友人との会話でも、同じことがあった。
会話が途切れると、
とっさに何か話題を探して埋めていた。
沈黙そのものが、
まるで失敗のように感じられた。
「なんで、黙っている時間に、こんなに耐えられないんだろう」
自分でも、うまく説明できなかった。
会話は途切れても、関係が途切れるわけじゃない。
頭ではわかっていた。
でも体の方が、先に反応していた。
後になって、こんな話を知った。
過去に緊張を強いられる時間が多かった人ほど、
沈黙を「警戒すべき合図」として、
体が学習してしまうことがあるらしい。
考えてみれば、
私にとって沈黙は、いつも次に何かが起きる前触れだった。
だから体は、
静かな数秒すら、休ませてくれなかったのかもしれない。
今でも、電話の向こうが黙ると、
一瞬、体がこわばる。
でも、その数秒を、
慌てて埋めずにいられる時間も、少しずつ増えてきた。
あなたにも、沈黙の中で、
息苦しくなった瞬間があっただろうか。
その沈黙は、本当は何を伝えようとしていたのだろう。
あとがき
沈黙が怖くて、
いつも先に喋っていた時間が、私にもあった。
その静けさに耐えているあなたの隣で、
私も同じ数秒を、息を止めて過ごしていたことがある
