彼の返信が早いと嬉しくて、遅いと不機嫌になった・・・私は、自分の機嫌を、いつのまにか誰かに預けていた
恋愛88ケ所巡礼・第25番|修行の道場(第3回)
本文
朝、目が覚めてまず見るのは、時計じゃなくてスマホだった。
未読が一件でもあると、
その日一日の気分が、少しだけ上向いた。
未読がゼロだと、
理由もなく、胸のあたりが重かった。
不思議なのは、内容じゃなかった。
「おはよう」の一言でも、
「今日は早く起きたね」の一言でも、
何でもよかった。
大事だったのは、届いているかどうか。
早いか、遅いか。
彼の返信が早い日は、
コーヒーの味まで美味しく感じた。
彼の返信が遅い日は、
同じコーヒーが、なんだか苦く感じた。
飲み物の味なんて、変わるはずがないのに。
友人とランチをしていても、
頭のどこかで、スマホの通知を待っていた。
「今、楽しい」はずなのに、
本当に楽しいのかどうか、自分でもよくわからなかった。
目の前の時間より、
届くかもしれない通知の方が、私には大事だった気がする。
「彼の返信ペースに、私の機嫌が左右されている」
そう気づいたのは、ずいぶん後になってからだった。
気づいた時、少し怖くなった。
自分の一日の明るさを、
自分以外の誰かに、丸ごと預けていたことに。
後から知ったのだけれど、心理学には「統制の所在」という考え方があるらしい。
自分の機嫌や人生の舵を、自分の内側に持っているか、外側に委ねているか、という違いだという。
私の舵は、いつのまにか、
彼のスマホの中に置いてきてしまっていたのかもしれない。
今は、通知を見る前に、
少しだけ深呼吸をするようにしている。
それでも、返信が来ると、ほっとする自分は変わらない。
ただ、その前の自分の機嫌は、
自分で決めておきたいと思うようになった。
あなたの一日の明るさは、今、誰の手の中にあるだろうか。
あとがき
自分の機嫌の舵を、
気づかないうちに誰かに預けていた時期が、私にもあった。
その舵を取り戻そうとしているあなたの隣で、
私も同じ場所から、少しずつ歩き直している
