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第290話 【絶望】いい感じだったのに「彼氏いる?」で即死

【もとしの爆笑日記 第290話】

――27歳男の赤っ恥すぎる“日常トラブル”体験談


導入:その質問、人生を終わらせる力がある

人の人生は、たった五文字で終わる。

「彼氏いる?」

この質問ほど、
希望と地獄を同時に内包している言葉を、俺は他に知らない。

27歳、独身。
名前はもとし。
読書と朝散歩とプラモデルが趣味の、
いわゆる“普通の男”だ。

……少なくとも、あの日の夕方まではそう思っていた。

あれは、
「今日は何も起きない、平和な一日」
のはずだった。

なのに、あの一言で
俺の精神は静かに崩壊を始めた。

そして――
最初の違和感は、あまりにも小さかった。


第一章:たまたま入っただけのカフェ

土曜日の16時12分。

散歩帰り、喉が乾いて、
駅前の小さなカフェに入った。

混雑はしていない。
客はまばら。
BGMは静かなピアノ。

(完璧だな……)

俺は窓際の席に座り、アイスコーヒーを注文した。
すると店員の女性が、伝票を置きながら言った。

「ごゆっくりどうぞ」

――ここまでは普通だった。

ただ、そのとき。

隣の席に座っていた女性が、
ちらっと俺を見た。

一瞬。
本当に一瞬だけ。

(いや、偶然だろ)

人はカフェで周りを見るものだ。
そう思って本を開いた。

だが、5分後。

また、視線を感じた。

……いや、気のせいじゃない。

ページをめくるフリをしながら、
視界の端で確認する。

女性はスマホを見ている。
だが、たまに顔を上げる。

そのタイミングが、
なぜか毎回、俺の動きと被る。

(え、なにこれ)


第二章:小さな会話

17分後。

女性が席を立った。

(あ、帰るのか)

なぜか、少しだけ残念に感じた。
自分でも意味が分からない。

だが次の瞬間、
彼女はレジに向かわず、俺の横で止まった。

「すみません」

心臓が一度、強く跳ねた。

「はい?」

「この席、コンセント使えます?」

(話しかけられた)

俺は慌てて足元を見た。

「あ、使えますよ」

「ありがとうございます」

小さく笑った。

……柔らかい笑顔だった。

そのあと彼女は、俺の隣の席に座った。

(いや待て)

さっきまで空いていた席は他にもある。
なのに、なぜここ?

頭の中で、妙な期待が芽生える。

(落ち着け。偶然だ。偶然)

俺は本を読むフリをした。
しかし、1行も読めていない。

ページをめくる速度だけが異常に速かった。


第三章:沈黙の時間

カフェの空気は、妙に静かだった。

コーヒーカップを置く音。
キーボードを打つ音。
氷が溶ける音。

すべてがやけに鮮明に聞こえる。

彼女はノートPCを開き、
時々、ため息をつく。

「はぁ…」

(仕事か?)

数分後。

「すみません」

また声がかかった。

「このWi-Fi、遅くないですか?」

「え、あ…そうかもしれませんね」

短い会話。
だが、そのあと――

沈黙。

……なのに、気まずくない。

むしろ、
妙に落ち着く。

(これ、もしかして…)

期待が膨らむ。

27歳、人生経験の少ない男が
一番危険な状態に入った瞬間だった。


第四章:妙な安心感

18時03分。

俺たちは、
いつの間にか普通に会話していた。

仕事の話。
休日の過ごし方。
好きな食べ物。

「散歩好きなんですか?」

「はい、朝に歩くと頭がスッキリして」

「わかります。私もです」

笑う。

(合うな…)

会話は自然だった。
沈黙も苦じゃない。

スマホを確認すると、
入店から1時間以上経っていた。

(いや待て、これ)

完全に、
いい感じの空気じゃないか?

俺の中の警報装置は、
この時すでに壊れていた。

そして――
俺は一つの決意をする。


第五章:やめておけばよかった質問

カフェの外は、すでに暗くなっていた。

「そろそろ出ます?」

彼女が言った。

「そうですね」

会計を済ませ、店の前に出る。

冬の空気が冷たい。
少しだけ、沈黙。

(今だろ)

頭の中で、
何度も練習した言葉が回る。

・自然に
・軽く
・重くならないように

俺は平静を装いながら、口を開いた。

「…あの、ちょっと聞いてもいいですか?」

「はい?」

心臓の音がうるさい。

逃げ道はもうない。

そして、俺は言った。

「彼氏、いるんですか?」

――次の瞬間。

彼女の表情が、
ほんの一瞬だけ止まった。

そして、
なぜか後ろから足音が近づいてきた。

その瞬間、
空気が完全に死んだ。





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