夜風丨風まかせ文芸部
夜風というのは、姿を持たない訪問者だと思っています。
昼の風は物を動かしますが、夜の風は記憶を動かす。
カーテンの裾、水面のさざなみ、頬に触れて去っていく微かな冷たさ——それらはすべて風そのものではなく、風が『いた』という痕跡にすぎません。
人は夜風に吹かれるとき、無意識に誰かを思い出すものです。
もう会えない人か、まだ会っていない人か。
つまり夜風を描くことは、不在を描くことです。
見えないものの輪郭を、見えるものの揺らぎで縁取る。
それができれば、絵の中に風が通うはずです。

上記のツールを使用しました
上記企画に参加させていただきました
元画像

風そのものは描かず、髪と裾と水面の揺らぎ、その痕跡だけで夜風を表しました。冷たい月光と温かい街灯を重ね、去っていった何かの余韻を観測した一枚です。
