喘息は慢性病! だけど良くすることはできる!
★喘息とは?
喘息という病気は、「喘(あえ)」ぐと「息」という字が示すように呼吸が苦しくなる病気です。専門的な定義は知りませんが、要するに気道(気管と気管支)が狭くなってうまく呼吸ができなくなる病気です。場合によっては呼吸困難になって死亡することさえあります。日本ではここ20年以上、毎年4,000人~7,000人もの人が喘息で亡くなっています(ただし近年は2,000人前後にまで減っています。これは吸入ステロイド療法の普及によると見られています)。
喘息になると気道が非常に敏感になり、物理的、精神的な刺激で発作が出るようになります。これは気道に慢性的な炎症があるからです。そのため気道粘膜がむくみ、気道の通り道が狭くなるのです。気道に炎症があると痰が絡みやすくなるため、喘息の人の気道は痰の絡みによっても狭くなっています。気道粘膜がむくめば気道の通り道はさらに狭くなるので、窒息の恐れはさらに大きくなります。実際、喘息で亡くなる方のほとんどは窒息によります。重症化した喘息患者のほとんどは、朦朧(もうろう)とした意識の中でこの窒息死を予感したことがあると思います。
発作になると、「息が吐けない」「息が吸えない」という状態になります。息を吐けば呼吸はできるものですが、その吐くことさえできなくなるため、吸うことができなくなって窒息することもあります。気道が狭くなっていると、吸った息が吐き出されにくくなって肺の中にたまっていきます。このため肺は膨張し、それ以上息が吸えないという状態になることがあります。これによって窒息することもあるのです。
ひどい発作が出るようになったり、それほどひどくない発作でも四六時中呼吸が苦しくなると、日常の生活に大きな支障が出てきます。走ることはもちろん、歩くことも満足にできず、仕事や家事を続けていくことが困難になるケースもまれではありません。発作に対する恐怖感が高じて、発作が出そうになるとパニックになる人もいます。
ひどい発作が出ない人、または発作そのものがあまりない人でも、日常生活に支障が出ます。例えば、ごく軽症の人でも、2階まで息切れなしで駆け上る、100メートルを全力で走りきるなどということは困難です。また、息苦しくなって明け方に目が覚めるといったことも起こります。こんなことは健康な人ではあまり考えられません。
治療側の人たちはこの発作を「小発作」「中発作」「大発作」とに分けてそれぞれの症状に応じた治療法を示しています。「小発作」は苦しいけれど横になれる状態、「中発作」は苦しくて横になれない状態、「大発作」は苦しくて動けない状態です。また、発作とまでは言えない「喘鳴(ぜんめい)」という状態があります。これは喉がゼイゼイヒューヒューいうけれど特に苦しくはない状態です。(以上の分類は画一的すぎて実際の治療にはそれほど役立たないというのが私の感想ですが、ここでは参考までに紹介しました)
発作には咳発作(咳喘息)というものもあります。まるで風邪のように咳ばかりが出る喘息です。ただの風邪だと思って放っておくと重症化してしまう恐れがあります。
喘息と風邪との混同視はよくあります。咳をしていると喘息だと思われたり、喘息だといっても風邪の一種だと思われたりします。この混同視は素人に限って見られることではありません。医師でさえこの間違いをしてしまうことがよくあります。医師の場合は喘息を風邪の一種と見ることはありませんが、はっきりした症状のない患者をただの風邪だと診断してしまうことがよくあるようです。確かに初期の喘息の診断は非常に難しく、さまざまな検査をしても喘息と診断されないことがあります。症状が重くなってはじめて喘息と診断されるケースは後を絶ちません。
喘息は、発症と同時にいきなり重症になる病気ではないようです。長い年月をかけて徐々に重くなり、慢性化していく病気です。初期から重かったという人もいますが、それは発症していたことに気付かなかっただけだと思います。初期のころは発作の回数も少なく日常生活に支障が出ることもないので、ただの風邪だと判断したりして治療を受けずに放っておく人が多いのです。
喘息は世界的にどんどん増えています。この背景には、医師、患者、そして一般の人たちの喘息に対する誤解や無知などがあると考えられます。
★喘息の原因
喘息の人の気道(気管と気管支)を調べると、気道粘膜は炎症を起こし、赤く腫れています。これは発作が起きているときだけではなく、発作のないときでも同様です。
この慢性的な気道炎症が喘息の原因です。何らかの刺激が与えられると、気道粘膜の炎症がさらに悪化し、気道の通り道が狭まります。ゼイゼイヒューヒューいったり呼吸が苦しくなるのはそのためです。ひどい場合は粘膜がむくんで気道の穴が塞(ふさ)がれてしまいます。こうなるともはや呼吸ができず、窒息してしまいます。
気道炎症を悪化させる刺激にはさまざまなものがあります。よく言われるものには花粉、ダニ(の死骸や糞)、動物の体毛や羽毛、ホコリ、カビ、タバコの煙、強い臭いなどがあります。鎮痛解熱剤などの薬が気道炎症を悪化させることもあります。
気道炎症を悪化させる要因は以上のような物質に限りません。よく知られているのは風邪の影響です。風邪を引くと気道粘膜が刺激されるので喘息は確実に悪化します。また、天候の変化も影響します。雨降りのときに発作が出やすくなる人はたくさんいます。これは低気圧の影響です。さらに、運動誘発喘息といって運動すると発作につながることが多いという事実があります。これは呼吸が激しくなることが気道粘膜を刺激するせいだと思います。冷気を吸い込むと発作になるケースも同様に気道粘膜が刺激されるせいだと思います。ほかに、蓄膿症が原因で喘息発作になるケースもあるようです。
ストレスなどの精神的要因が喘息の症状を悪化させることもあります。おそらくストレスが気道炎症を悪化させてしまうのだと思います。
この精神的要因を重視するあまり「喘息は気の病だ」と見ている人たちがいます。その考え方にも一理ありますが、しかし、花粉にしろダニにしろストレスにしろ、これらは喘息の根本原因ではありません。なぜなら、気道炎症が存在していなければ花粉やダニの糞を吸い込んでもストレスを感じても喘息の発作は出ないからです。
つまり、喘息の根本原因は気道の慢性炎症だということです。
この気道の慢性炎症の存在は昔から知られていました。しかし、それが喘息の根本原因であるという見方がなされたのは最近のことです。以後、喘息の治療法は180度変わりました。また、発作のないときでもこの炎症が存在していることが最近になってわかり、喘息に対する考え方が大きく変わりつつあります。そのこともまた喘息の治療のあり方に大きく影響を与えています。
★喘息の治療―基本治療
・現在の主流―“吸入ステロイド療法”
喘息の原因が気道(気管と気管支)の炎症にあるという見方がなかったころ、喘息治療の主体は発作を抑えることと発作を誘発するものの除去(アレルゲンの除去や抗アレルギー剤による治療など)でした。
また、患者に運動を課す鍛錬療法や乾布摩擦、それに呼吸の練習として腹式呼吸の訓練なども取り入れられていました。
しかし、その後の研究によって、これらの治療法や訓練は喘息の根本療法としては不適で、鍛錬療法などはむしろ喘息を悪化させるという見方がされるようになりました。
それは、喘息の根本原因が気道の炎症にあり、しかもその炎症は発作のないときでも存在しているという事実がわかってきたことによります。いったん喘息になると、気道の炎症はそう簡単になくなりはしないのです。刺激を受ければ気道炎症は再燃し、また発作が起きます。発作がなくなったからといって、気道の炎症をそのままにして鍛錬療法などをすれば喘息は良くなるどころかかえって悪くなるのです。
さらに怖いのは、鍛錬療法や腹式呼吸訓練をすると呼吸筋が鍛えられるので、炎症があって狭くなっている気道でも苦しさを感じずに呼吸できるようになることです。このため良くなったと錯覚し、治療をやめてしまったり治療の手を抜く人が出てくる恐れがあります。
喘息治療は、ここ数年で大きな見直しを迫られています。気道の炎症を取り除かなくては喘息の治療とは言えません。したがって喘息治療の基本は気道炎症の除去ということになります。このような考え方をもとに喘息の治療法は大きく変化しています。その主流は吸入ステロイド療法です。
炎症を取り除くのに最も効果的なのはステロイド剤です。しかし、経口ステロイド剤を長期に渡って服用すると副作用が出ます。ステロイド点滴も同じです。「患部にだけ作用する薬があれば」というのは喘息関係者の長年の願いだったと思います。その願いをかなえる薬が35年ほど前に登場しました。吸入ステロイド剤です。現在の喘息治療の主流になっている吸入ステロイド療法は、これを用いた治療法です。
スプレー式吸入ステロイド剤の成分はベクロメタゾンというステロイド(製品としてはベコタイドやキュバールがあります。ただし従来品のベコタイドはフロンガスを使用しているため販売中止になりました)です。パウダー式吸入ステロイド剤の成分はフルチカゾンとデデソニドです(製品としはフルタイドやパルミコートなどがあります)。
これらの吸入ステロイド剤は他のステロイドと違って全身性副作用がほとんどありません。なぜかというと、ベクロメタゾンにしてもフルチカゾン等にしても、肺という局所に使用するので使用量がごくわずかで済み、しかも体内に吸収されにくく、さらには体内に入っても肝臓で分解されてほとんどが無害になってしまうからです。このような薬でも、吸入によって気道粘膜に付着すればよく効くのでした。その後は血液に乗って肝臓へと運ばれ、そこで分解されて無害になります。「患部にだけ作用する薬があれば」という願いを見事にかなえた画期的な薬、それがベクロメタゾンやフルチカゾン等の吸入ステロイド剤だったのです。
体内に入ると分解されてしまうのでは内服薬としては利用できないので、ベクロメタゾンを開発した製薬会社は開発したもののおそらく困惑してしまったと思います(最初に開発された吸入ステロイド剤はベクロメタゾンだったのです)。薬の需要の多くは内服薬にあったからです。しかし、その製薬会社は発想の転換をしてベクロメタゾンを吸入薬として商品化したのです。これがその後の喘息治療に実に大きな影響をもたらしました。
吸入ステロイド剤はまずヨーロッパで実績を上げました。その後しばらくして日本に入ってきました。しかし、当時の日本はステロイドに対する恐怖心が強く、この吸入ステロイド剤も“ステロイド”の一種なので副作用があるに違いないと見られました。そのため1回の噴霧量が少ない商品がまず出回り、医師たちはごくわずかな使用量(1日4吸入程度)を決めて用いました。
このためさしたる成果も出ず、医師たちの多くは吸入ステロイド剤の効果に疑問を抱きました。もちろん、使っている患者も同じです。
効果が出なかったのは1回の噴霧量が少ない商品をわずかずつしか吸入しなかったせいもありましたが、それとともに吸入の方法にも問題がありました。日本で使われはじめた初期のころはスペーサー(吸入補助器)があまり使われていなかったので、ほとんどの患者は吸入薬(吸入ステロイド剤)を直接、口にくわえて、あるいは口から少し離して噴霧し吸入していました。これはあくまでも緊急用の吸入方法で、スプレー式吸入ステロイド剤の場合、本当はスペーサーを使い、しかもゆっくり吸わないとうまく吸入できないのです。

※ただし、近年ではパウダー式の吸入ステロイド剤が主流になっていて、パウダー式の場合はスペーサーは必要なく、スーッと一気に吸えます。
もうひとつ問題だったのは、この吸入ステロイド剤は軽症の患者にあまり処方されず、主に重症の患者に使われたという点だと思います。重症者の場合、気道の炎症が慢性化して久しいので気道はいつも狭くなっています。そこに吸入ステロイド剤を吸入しても満足に吸い込めないのです。重症者の場合は吸入前に気管支拡張剤を服用(または吸入)して気道を広げてから吸入するか、または経口ステロイド剤で気道の炎症を取って気道が広がってから吸入しなくてはなりません。それをしないで重症者にいきなり吸入ステロイド剤を吸わせてもあまり効果は出なかったはずです。
ここ数年、吸入ステロイド剤に対する誤解が少しずつぬぐいさられてきています。それにつれて喘息の治療といえば吸入ステロイド療法と言われるまでになりつつあります。吸入ステロイド療法ではなく“ベクロメタゾン吸入”や“フルチカゾン吸入”という言葉を使う医師が多くなったように感じますが、それはステロイドという言葉に対する悪いイメージを取り去るためかもしれません。それだけこの治療法が認められてきたということだと思います。
★喘息の治療―発作抑制
・発作を抑える補助療法
現在の喘息治療の主流は吸入ステロイド療法です。これは根本の原因を取り除く治療法です。喘息の治療法には、これとは別に発作を抑える、または軽くする治療法があります。気管支を広げる薬による治療、アレルギー反応などを抑える治療がそれです。
気管支を広げる気管支拡張剤は、発作のときに実に頼りになる薬です。これがなくなったら喘息死は急増するでしょう。
ただし、スプレー式気管支拡張剤の効果は数分からせいぜい十数分なので、これはあくまで対症療法だということを知っておきましょう。
このスプレー式気管支拡張剤だけで喘息に耐えている方が多いようですが、それでは喘息は良くなりません。
大発作になったらスプレー式気管支拡張剤も吸えず、窒息してしまいかねません。
吸入ステロイド療法が普及して、日本の喘息死者数は2,000人ほどにまで減りましたが、まだ2,000人もの方が喘息で亡くなっています。
その多くは、吸入ステロイド剤の吸入を途中でやめたり、スプレー式気管支拡張剤にのみ頼る患者さんなのではないかと思います。
スプレー式気管支拡張剤だけに頼るのは危険なのでやめましょう。

また、喘息発作を誘発させるアレルギー反応などを抑える治療は、発作が起きる前に発作を出にくくするために行うものです。これは人によって効果があります。
喘息の治療を受けている人は、通常は吸入ステロイド療法とともに上記の2つの治療も受けていると思います。しかし、医師によっては気管支拡張剤による治療をメインにしていて、吸入ステロイド療法を補助的に用いている人がいます。これは昔の治療法を引きずっていると言えます。
喘息の原因は気道の慢性炎症にあるので、その炎症を鎮めなければいつまでたっても喘息は良くなりません。
喘息発作を誘発させるアレルギー反応などを抑える薬、例えば抗アレルギー剤や抗喘息薬を服用する治療法は、その人に合う薬が見つかればよく効きます。しかし、これも対症療法にすぎません。しかも、抗アレルギー剤や抗喘息薬は非常に高い薬なので、これを長く服用していくのは経済的にかなりの負担を強いられます。
吸入ステロイド療法によって気道の炎症が取れてくると、気管支拡張剤も抗アレルギー剤も抗喘息薬も必要なくなってきます。根本原因がなくなってくるのでそれも当然です。
これからの喘息治療は、吸入ステロイド剤と気管支拡張剤のセットで行われるのが一般的になると思います。つまり、通常は吸入ステロイド剤の吸入だけを行い、発作のときにだけ気管支拡張剤を用いるという治療法です。
★ピークフローメーター
・ピークフローメーターの重要性
ピークフローメーターは喘息治療に欠かせないツールです。日本で吸入ステロイド剤が導入された初期にあまり効果が出なかったのは、ピークフローメーターがあまり普及していなかったせいもあると思います。
ピークフローメーターは気道の炎症状態を数字で示す器具です。これを吹くと針が飛んである値を示します。これがピークフロー値です。気道の炎症が進んでいると空気の通り道が狭くなっていてピークフロー値は落ちます。逆に炎症が取れてくると値は上がります。このようにピークフロー値によって気道の様子がわかります。
ピークフロー値は性別、年齢、体格によってある程度、決まっています。この基準値をもとに自分の値がどのレベルにあるのか判断します。
例えば自分の基準値が600だった場合、550吹けたら基準値の92パーセントなのでまあまあ、450だったら75パーセントなので要注意、300だったら50パーセントなので危険というように判断します。通常はこれを朝夜、計ります。朝夜の変動が大きい場合は、値が高くても要注意です。
ピークフロー値は普通、目安としては基準値の80パーセント以上あれば気道の炎症がそれほど悪化していないと見ていいようです。80パーセントを切るようになったら吸入ステロイド剤の吸入回数を増やすといった対策が必要になります。50パーセントを切るようになったら病院に行かなくてはなりません。
以上はあくまでも目安であって、たとえ80パーセントが出たあとでもいきなり発作が出ることもあります。それぞれの値も大事ですが、さらに注意したいのは変動です。朝は600だったけれど夜は450、翌朝は400でその夜は600というようにかなり変動がある場合は吸入ステロイド剤を増量するなりしなくてはなりません。
このように、吸入ステロイド療法はピークフローメーターとセットで行う治療法なのです。発作が出ていないから吸入回数を減らそうとかやめてしまう人がいます。しかし、発作が出ていなくても気道の炎症は存在しています。その炎症状態を確実につかまないまま自覚症状だけで喘息の調子を判断するのは危険です。
なお、注意したいのはピークフロー値の“基準値”はあくまで基準値でしかないということです。例えばスポーツをしていた人、ブラスバンドをやっていた人などは喘息であっても基準値よりかなり高い値を出すことがよくあります。また、長年、発作に苦しんできた人は呼吸筋が鍛えられているため本来の値以上のピークフロー値を出すのが普通です。そのため、自分の基準値はさまざまな要素を考えて決めなくてはなりません。
★喘息の結論―自己管理で克服!
喘息の治療には、重度の患者さんを別にすれば、吸入ステロイド剤とピークフローメーター、そして緊急用に気管支拡張剤があれば十分だと思います。言いすぎを覚悟で書けば、頻繁に病院に通って受診する必要もないと思います。自己管理さえ徹底させることができれば、喘息は一人で十分に克服できる病気です。
ただし、信頼できる医師を見つける必要があると思います。いい病院を探し当てることができればベストですが、いい医師に出会うのはとても難しいので、インターネットでいい医師を見つけてアドバイスを受けるのもいい手段だと思います。医師の中には吸入ステロイド療法さえよく知らない人もいるので、あちこちの病院をめぐって医師探しをするよりはインターネットで探したほうが早道かもしれません。メールでアドバイスを受けられるようになれば、場合によっては土日やアフターファイブでもアドバイスを受けられることも多く安心です。そしていい薬剤師を見つけることができればなおいいと思います。そして重要なのは、喘息の仲間がいたほうがいいということです。これもインターネットで見つけることが可能です。
医師と薬剤師の存在は重要だと思います。いくら副作用のない吸入ステロイド剤を使うといっても薬は薬なので専門家のアドバイスを受けて使用したほうがいいと思います。また、ピークフロー値の変動から症状を読み取るのも、最初のうちは患者には難しいと思います。そのような判断は最初は専門家に任せるべきです。さらに、症状は人によって違うので、全般の症状を把握した医師や薬剤師のアドバイスは欠かせません。
これらのアドバイスは、インターネットのメールのやりとりだけでも十分に受けられるものです。むしろ、通院して主治医にいろいろ聞くよりも気軽に何でも相談できるので、かえっていいかもしれません。
喘息の仲間は多く作ったほうがいいと思います。地域、職場、学校に喘息の人がいれば積極的に話しかけて親しくなるべきだと思います。周囲に喘息の人がいない場合はインターネットで探せばいいと思います。
喘息といってもみな同じ症状ではありません。治療法も違います。同じ吸入ステロイド療法をしているといっても中身は微妙に違うものです。そして、効果も人によって微妙に違うのです。それは治療の中身の違いにもよるでしょうが、症状の進み具合、体質、仕事量の違いなどにもよると思います。それらの生の情報を仲間から仕入れるのです。治療の効果が頭打ちで悩んだときなどに、そうした生の情報は非常に大きな力になってくれます。激励してくれる仲間がいればさらに勇気づけられます。
「最近、ピークフロー値が悪くてね…」
「吸入ステロイド、ちゃんとやってんの?」
「やってるよ」
「どうやって吸ってんの? ちょっとやってみせて」
なんて会話ができるようになればしめたものです。誰かに見られているという感覚があると人間はより努力するものです。互いにアドバイスし合って互いに治療の効果を上げていくことができればベストです。
喘息の治療にとって自己管理は重要な要素を占めます。自己管理というと自分一人でやることというイメージがあります。しかし、誰のアドバイスも受けずに一人だけで自己管理するのは大変なことです。自己管理という名前はついていても、多くの人のアドバイスを受けることが大切だと思います。一人で悩んでいても、何もいいことはありません。
そして、仲間探しの途中で吸入ステロイド療法をまだ知らない人に出会ったら、吸入ステロイド療法を教えてあげたいものです。悲しいことに、この国の喘息患者にはこの治療法をまだ知らない人がたくさんいるのですから。そこから“喘息の輪”が広がれば、この国の喘息治療は一歩も二歩も前進するに違いありません。
★誰でもできる喘息の自己管理法
喘息の治療はすなわち自己管理です。いかに自分の喘息を管理して効果的な治療を進めるかが、喘息治療のポイントになります。
具体的には後で詳しく述べますが、ピークフロー値とその変動から自分の判断で吸入ステロイド剤の吸入回数を増やしたり減らしたりして吸入を続けていくことです。
ここに示すのは、その自己管理法について私なりに簡単にまとめたものです。これを見て自己管理法を見直してみてはいかがでしょうか。自分の今までの治療法と照らし合わせ、足りない部分、間違っていた部分等はありませんか。私の自己管理法は不十分なものかもしれませんが、皆さんの自己管理法を見直すキッカケにくらいにはなってくれると考えています。
【誰でもできる喘息の自己管理法】
★第一段階
(1)喘息の原因を理解する。
(2)喘息の治療法について知る。
喘息の原因や治療法についてよく知っておかないと、いざ治療を始めてもその重要性を知らないのでつい手を抜いたりするものです。中には、ちょっと良くなったからといって途中で吸入をやめてしまう人もいます。これでは治療の効果は期待できません。
ここで簡単に喘息の原因と治療について述べると、原因は気道(気管と気管支)の慢性炎症にあり、その炎症を鎮めれば喘息は良くなるということになります。炎症を取るのに効果があるのが吸入ステロイド剤です。つまり吸入ステロイド剤を使えば喘息は良くなります。
※ただし喘息は慢性病なので、吸入ステロイド剤の吸入はずっと続ける必要があります。
ただし、「良くなる」といっても完治は困難です。喘息の原因は「気道の慢性炎症」と書きましたが、その慢性炎症が起きる原因は今のところわかっていません。したがって、いったん慢性炎症が起きてしまうと、それを取り去るのは難しいのです。しかし、吸入ステロイド剤を使えばその炎症を効果的に除去することができます。「良くなる」というのはそういう意味です。
吸入ステロイド剤を使えば気道の慢性炎症を着実に摘み取っていくことができます。しかし慢性炎症を完全に取り去ることは非常に困難です。このため喘息を治すには油断なく治療を続けていかなくてはなりません。喘息治療に自己管理が重要になるのはそのためです。
★第二段階
(1)吸入ステロイド剤を手に入れる。
(2)スペーサーを手に入れる。(スプレー式吸入ステロイド剤の場合)
(3)ピークフローメーターを手に入れる。
この第二段階は喘息治療に取りかかるために必要なツールの入手段階です。この3点さえ揃えば喘息治療は可能です。
この3点を揃えられない方は、あらゆる手を使って入手に努力しなければなりません。
参考までに、吸入ステロイド剤は医師に処方してもらうしか入手法がないので、吸入ステロイド療法のことをよく知っている医師を探し出すことが先決になります。そういう医師を探し出せない場合、これはあまり勧められる方法ではありませんが、身近で吸入ステロイド剤を処方されている人を探し、その人から譲ってもらうという手もあります。
現在の主流は、レルベアなどのパウダー式の吸入ステロイド剤です。
パウダー式であればスペーサーを使わず吸入できます。
これらは長時間持続型の気管支拡張剤も含まれているので、非常に有効です。
スペーサーは、吸入ステロイド剤を扱っている薬局で売っています。グラクソのベコタイドであれば携帯式のスペーサーが薬局で無料で入手できます。本格的なハードタイプのものは約1,000円です。別のメーカーのアルデシンであれば、薬を処方されたときにインスパイヤーイースというスペーサーを確かもらえるはずです(ベコタイドとアルデシンはフロンガスを使用しているため販売中止になった。現在販売されている吸入ステロイド剤でスペーサーを使用するのはフルタイドエアー。キュバールはごく小さなスペーサーであるデュオペーサーという吸入補助器を使う)。

ピークフローメーターも薬局で売っています(おそらく2,000~5,000円)。売っていなくても取り寄せてもらうことが可能です)。


★第三段階
(1)ピークフローメーターを吹く。
(2)吸入方法をマスターする。
(3)ピークフロー値と吸入回数を記録する。
■ピークフローメーターについて
ピークフローメーターは最大呼気流量を測定する器具です。この値をピークフロー値といいます。
ピークフローメーターを入手したらまず吹いてみます。その値と基準値を比べます。基準値は性別・年齢・体格によってだいたい決まっています。ピークフローメーターには基準値を示す表が付いているのでそれで確認します。喘息患者はたいてい基準値以下です。その基準値をどの程度下回っているのか認識しておきます。
ピークフロー値は気道の狭さを示しています。値が低ければ気道が狭くなっていること、値が高ければ気道が広がっていること、値の変動が激しいときは気道の炎症の状態が良くなったり悪くなったりしていることを示します。
喉がゼイゼイしたりヒューヒューいうのは、炎症でむくんだ気道粘膜が気道を狭めていたり気道が敏感になって収縮したりしているからです。発作は、敏感になった気道が激しく痙攣(けいれん)するために起こります。
このように、喘息の症状を見れば気道の状態がわかります。逆に、気道の状態がわかれば喘息の状態がわかります。ピークフロー値はその気道の状態を数字で示します。喘息患者によっては、本当はひどい症状であっても、見た目の症状や患者の自覚症状ではそうでもないと見られたり感じられたりすることが多々あります。しかし、そういう状態でもピークフロー値は確かな数字で気道の状態を示します。ピークフロー値を記録していると、自分の喘息の状態を客観的に把握できることになるのです。
そこで、自分のピークフロー値から自分の気道の状態を把握してみます。これはあくまで一般的な目安ですが、基準値の80パーセント以上であればまずまず、80パーセントを下回っていたら黄色信号、50パーセント以下なら危険だと判断します。この判断から吸入ステロイド剤の吸入回数を決めます。回数は主治医と相談して決めてください。慣れてくると自分の判断で吸入回数を増減できるようになります。当たり前ですが、吸入回数が多いほど効果は高まります。
吸入ステロイド療法を始めると、このピークフロー値が劇的にアップします。アップしても気を抜かず、自分の基準値をクリアしてその値をキープできるように吸入を続けます。そこで満足せず、さらにその上の“値”を目指せば完璧です。
ちなみに、ピークフロー値の測定は毎日続けます。普通は朝と夜の1日2回でよいでしょう。毎日同じ時間に、同じ姿勢で計ります。ただし、息苦しかったり発作が出ていたら計測は控えます。余計苦しくなる恐れがあるし、苦しいときの値は参考にならないからです。苦しいときは気管支拡張剤で対処しますが、その場合はピークフロー値の計測は数時間後にします。気管支拡張剤で気道が広がった状態で計測しても意味がないからです。
■吸入方法について
パウダー式の新式吸入ステロイド剤(レルベアやフルタイドやパルミコート)は直接吸入できますが、スプレー式吸入ステロイド剤(キュバールなど)の場合、スペーサーという大きな吸入補助器が必要になります。スプレー式吸入ステロイド剤はスペーサーなしで吸入してもほとんど効果が出ないので注意が必要です。
スプレー式の場合、スペーサーを用意したら、まず吸入ステロイド剤をよく振り、次に息を目一杯吐きます。吐きすぎて苦しくなるようであれば加減します。スペーサーを横にして持ち、そのお尻の部分に吸入ステロイド剤の噴霧口を差し込み、ボンベをしっかり押します。薬剤がスペーサーの中に出ます。スペーサーの吸い口を深く噛むようにしてくわえ、顎を上げてゆっくりゆっくり吸いはじめます。できれば5~10秒くらいかけて吸います。慣れないと5秒も無理ですが、そのうちできるようになります。吸い終わったら10秒くらい息を止めます。10秒たったら鼻から静かに息を吐き出し、すぐうがいをします。
パウダー式の場合は、レルベアにしてもフルタイドにしてもパルミコートにしても吸入は簡単です。回す部分をカチッと音がするまで回し、吸い口をくわえてスーッと一気に吸います。吸入後は同じく息を止め、息を吐き出したらすぐうがいをします。
スプレー式、粉末式のどちらの場合も、しっかりうがいをしなくてはなりません。うがいをしないと、吸入ステロイド剤が舌などに付着して白いカビが生えることがあります。これはカンジダ症と言われ、吸入ステロイド剤の唯一といってよい副作用です。しかし、きちんとうがいしていれば問題ありません。
以上の操作を決められた回数だけ繰り返します。1日1吸入と指示されていれば1回、8回と指示されていれば8回ちゃんとやります。回数が多い場合は、例えば朝と夜の2回に分けて行うのが普通です。仕事や旅行などで吸入できなかった日が1日や2日あっても、そのあとに余計に吸入すればまったく問題ありません。
現在の主流であるパウダー式吸入ステロイド剤の場合は1日1回から2回の吸入で済むので、選ぶならパウダー式がいいでしょう。
特にレルベアは、24時間も効果のある長時間持続型の気管支拡張剤が含まれているので、QOL(生活の質)を上げるのにとても効果があります。
慣れてきたら、ピークフロー値の高低と変動を見て自分で1日の吸入回数を決めます。それで調子が上向けば吸入回数を減らしてもよいでしょう。悪くなれば吸入回数を増やします。このように、ピークフロー値の高低と変動を見て自分の判断で吸入ステロイド剤を吸入していくのが喘息の自己管理の最大のポイントです。
なお、息苦しいときには無理して吸入することはありません。気道が狭くなっているときは、吸入しても気管支の末端まで薬剤が届きません。調子のよいとき、つまり気道が広がっているときを選んで吸入すると効果が上がります。
調子のよいときを選んでいられない、いつも調子が悪いという人は、吸入前にスプレー式気管支拡張剤(メプチンエアー・サルタノール等)を使って気道を広げておくとよいでしょう。
■喘息日記について
呼吸器専門の医師の診察を受けると普通は「喘息日記」という冊子をもらえます。ピークフロー値を記録していく表と、服用薬や喘息の状態等を記入する欄があります。これに毎日記入して自己管理していきます。喘息日記のない人は、どんな形でもよいので自分で作ればよいでしょう。ピークフロー値の変動と吸入ステロイド剤の吸入回数、服用薬の種類と量が日毎にわかればいいので、簡単なもので間に合います。ひとつ作ってコピーして使えばいいでしょう。
ピークフロー値の折れ線グラフや棒グラフがどんどん右上がりになっていくのは見ていて楽しいものです。
参考までに、私の喘息日記の一部を公開しましょう(下)。

■喘息治療の最終目標
喘息治療のとりあえずの目標は、ピークフロー値の基準値をクリアして安定させることです。安定すれば吸入回数を減らしていきます。最終目標はすべての薬からの離脱です。もちろん吸入ステロイド剤の吸入ともさよならするのです。
ただし、ピークフロー値が基準値をクリアしたからといって、すぐに吸入をやめてしまったり吸入回数を減らすのは危険です。長い期間、高い値で安定してきたら、慎重に様子をみながら徐々に減らしていくべきです。
冒頭でも述べたので繰り返しになりますが、残念ながら一度喘息になるとそう簡単には治りません。慢性病だからです。したがって吸入をやめられるようになる人はまれです。しかし、だからといってあきらめてはいけません。吸入をやめられるように最大の努力を払うことが大切だと考えます。
私は喘息になって何十年にもなります。
初めのころは毎日大発作で、「きょうこそ死ぬ」と思うくらい苦しみましたが、吸入ステロイド療法を始めたら数ヵ月で症状が消えて普通の生活を送ることができるようになりました。
今ではよほど激しい運動でもしなければ症状は出ません。
ピークフロー値も安定しています。
けれど、「喘息は慢性病だからな」と思い、吸入ステロイド剤の吸入をやめてはいません。
一度、吸入をやめてみたことがあります。
すると2週間後、症状が出てきました。
「慢性病だから吸入をやめたらダメなんだ」と思いました。
そんなわけで、死ぬまで吸入ステロイド療法を続けていくつもりです。
詳しくは、〈Zensoku Web〉をご覧ください。
喘息の方、喘息の家族や友人をお持ちの方、ぜひ見てください。
喘息は必ず良くなります。
