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ComfyUI「Video Stabilizer」に"わざと手ブレを加える"新機能――AI動画のCG感を消す実践ガイド

本記事の対象

  • 主な対象者:ComfyUIで動画生成・動画編集を行っており、「AI動画がなめらかすぎてCGっぽく見える」という悩みを持つ読者を想定しています。

  • 技術レベル:初級/中級/上級のうち、主に初級〜中級を想定しています。

  • 前提知識:ComfyUIの基本操作(ノードの接続、ComfyUI Managerでのカスタムノード導入)と、fpsやフレームといった動画の基礎用語を理解していることを前提とします。

  • この記事で得られるもの:手ブレを「消す」「戻す」「わざと足す」という3つの操作を使い分けられるようになり、自分の映像に合ったパラメータを選ぶ判断材料を得られます。

要約

本記事では、ComfyUIのカスタムノード「Video Stabilizer」を、公式のワークフロー画像とデモ動画つきで解説します。手ブレ補正・復元という基本機能に加え、2026年7月2日に追加されたばかりの「人工的に手ブレを加える」新機能まで扱います。前半で機能の全体像とパラメータの意味を押さえ、後半で「どの設定を選ぶべきか」という実務的な判断軸を示します。読了後は、自分の動画に合わせて手ブレを操作できるようになるはずです。

AIで動画を書き出してみて、「なんとなくCGっぽいな」と感じたことはないだろうか。カメラワークがなめらかすぎて、逆に嘘くさく見える現象だ。人間が手に持ったカメラは多かれ少なかれ揺れるし、その揺れこそが映像に"生っぽさ"を与えている。

ComfyUIのカスタムノード「Video Stabilizer」は、もともと逆の目的――手ブレを消すためのツールだった。ところが2026年7月2日、そこに「わざと手ブレを加える」機能が追加された。手ブレを消す道具が、手ブレを作る道具にもなったわけだ。この記事では、開発者nomadoor氏の公式ドキュメントとGitHub上の実装をもとに、3つの機能を順番に見ていく。

まず、全体像を図で押さえておきたい。このノード群は5つのノードで構成されているが、実際にやっていることは大きく2系統に分かれ、両者はmotion_metaという共通のデータ形式でつながっている。

図1. カメラの動き情報(meta / motion_meta)を介して、解析系と生成系がMotion Applyで合流する構造。

Video Stabilizerとは何か

ComfyUI Video Stabilizer」は、nomadoor氏が公開しているMITライセンスのカスタムノードだ。執筆時点(2026年7月4日)でGitHub上のスター数は70、開発は今も活発に続いている。インストールはComfyUI Managerで検索するだけで完了する。

開発元は、ComfyUIの日本語ドキュメントサイト「Comfyに使う ComfyUI」も運営している人物で、Flux.1やWan、Qwen-Imageなど幅広いモデルの解説を継続的に公開している。今回のノードも、その一部としてかなり丁寧にドキュメント化されている。

地味に嬉しいのが、依存ライブラリがOpenCVだけという点だ。動画生成モデルのようにVRAMを奪い合うことがないので、生成用のモデルをロードしたままでも気にせず使える。

主な機能は次の3つ。

  • 動画の手ブレを補正する

  • 手ブレ補正した動画から、元の手ブレを復元する

  • 人工的な手ブレを加える

このうち3つ目が、2026年7月2日のアップデート(v1.3.0)で加わった最新機能だ。裏側では、補正時に取り除いたカメラの動きを表すmetaと、人工的に生成したmotion_metaが、まったく同じ形式のデータとして扱われている。だからこそ「補正で得た動きの記録」と「生成した揺れの記録」を、同じVideo Stabilizer Motion Applyノードに流し込める。個人的には、ここがこのツールでいちばん面白い設計だと思う。

手ブレを補正する:Classic / Flow

手ブレ補正を担当するのはVideo Stabilizer ClassicとVideo Stabilizer Flowの2ノードだ。機能は同じで、内部の計算方法が違う。

Classicは特徴点トラッキング(Lucas-Kanade法)を使う軽量な方式、Flowはdense optical flow(DIS Optical Flow)を使う高精度な方式である。ざっくり言えば、Classicは映像の中の「目印になりそうな点」だけを追いかけて動きを推定する方式、Flowは画面全体のピクセルの動きをまるごと計算する方式だ。当然、後者のほうが手間はかかるが、細かい動きまで正確に捉えやすい。GitHubのREADMEによれば、Flowのほうが計算コストは高いが精度で勝るとされていて、処理速度に大きな不満がないならFlowを選んでおけばまず間違いない。

図2. 動画を読み込んでVideo Stabilizer Flowノードに通すだけ、というシンプルな最小構成。出典: Comfyに使う ComfyUI

パラメータで特に迷いやすいのがframing_modeだ。手ブレを取り除くと、画面の端に映像が存在しないコマが生まれる。それをどう処理するかを決めるのがこのパラメータで、3つの選択肢がある。

  • crop:はみ出た部分が見えないようズーム・クロップする。揺れが大きいほど画角が狭くなる。

  • crop_and_pad:ズームは最小限に抑え、足りない部分をパディングで埋める。

  • expand:一切クロップせず、必要な分だけキャンバスを広げる。

文章だけでは違いが伝わりにくいので、実際の映像を見比べてほしい。まず、補正前の元映像はこちら。

▶ 元動画(手ブレのある入力)を見る 動画1. 補正前の入力映像。手ブレが乗っている状態。出典: 同上

crop_and_padで補正すると、こうなる。

▶ crop_and_padモードの補正結果を見る 動画2. 画角をできるだけ保ちながら、足りない部分をパディングで埋めている。出典: 同上

expandまで振り切ると、キャンバス自体が広がる。

▶ expandモードの補正結果を見る 動画3. クロップを一切せず、揺れの分だけキャンバスが拡張されている。出典: 同上

正直なところ、crop_and_padやexpandで生まれるパディング部分は、それ単体では灰色の余白でしかない。ただしここに面白い使い道があって、このパディングはpadding_maskとしてマスク出力される。つまりWan2.1やWan2.2のVACEのような、outpainting(はみ出た領域を生成AIで描き足す処理)に対応した動画生成モデルへ渡せば、余白を"描き足す"ことで画角を犠牲にせず手ブレ補正ができる。GitHubのサンプルworkflowにも、この組み合わせがそのまま用意されている。

消した手ブレを"戻す":Motion Apply

手ブレを消してから動画生成AIで編集し、最後に元のカメラワークを戻したい――という場面は意外とある。手ブレを消した状態のほうが生成AIの出力は安定しやすいが、そのままだと最初の臨場感が失われてしまうからだ。

Video Stabilizer Motion Applyは、ClassicかFlowが出力したmetaを受け取り、いったん取り除いたカメラの動きを再現する。

図3. Video StabilizerからMotion Applyへmetaを渡すだけのシンプルな構成。出典: Comfyに使う ComfyUI

注意点が一つある。cropやcrop_and_padで補正した場合、すでに切り落とした画素は復元できない。復元まで見据えているなら、最初の補正段階でexpandを選んでおくのが安全だ。

【新機能】わざと手ブレを加える:Shake Generator

ここからが本題だ。冒頭で触れた通り、v1.3.0でこのノード群に加わったのがVideo Stabilizer Shake Generatorである。名前の通り、手ブレの"生成"を担当するノードだ。

役割はシンプルで、フレームには一切手を加えず、揺れの情報だけをmotion_metaとして作り出す。これをVideo Stabilizer Motion Applyに渡せば、静止した映像にも揺れを乗せられる。

図4. Shake Generatorが作ったmotion_metaをMotion Applyに渡すだけで、手ブレを"生成"できる。出典: Comfyに使う ComfyUI

パラメータは5つ。GitHub上のソースコードを確認すると、公式ドキュメントには書かれていない数値範囲まで分かったので、あわせて載せておく。

  • frame_rate:入力側にfps情報がないときのフォールバック値。

  • style:揺れの種類。5種類のプリセットから選ぶ。

  • amount(0.0〜3.0、デフォルト1.0):揺れの強さ。

  • speed(0.1〜3.0、デフォルト1.0):揺れの速さ。

  • seed:揺れ方の乱数シード。同じ値なら毎回同じ揺れになる。

肝心のstyleは、実際に見比べるのが一番早い。まずは基準となるhandheldから。

▶ handheldスタイルの揺れを見る 動画4. 自然な手持ち感の揺れ。迷ったらまずこれを試すといい。出典: 同上

歩きながら撮った雰囲気を出したいならwalking。

▶ walkingスタイルの揺れを見る 動画5. 上下方向の周期的な揺れが加わり、足取りの気配が出る。出典: 同上

もっと荒々しくしたいならactionだ。

▶ actionスタイルの揺れを見る 動画6. 大きく荒い動き。緊迫したシーンに向く。出典: 同上

実は、GitHubに公開されているソースコードを覗くと、5つのスタイルはpan(左右の首振り)・tilt(上下の首振り)・roll(傾き)・tremor(細かい微振動)など十数個の数値パラメータの組み合わせに過ぎないと分かる。actionだけが大きなpan/tilt/rollに加えてjitter_rate(不規則な小刻みの揺れ)を持ち、逆にvibrationは首振り自体は控えめなのにtremorの値が全プリセット中もっとも大きい。walkingだけがstepという値を持っていて、これはおそらく歩行時の上下バウンドの表現だろう。プリセットの中身が単純な数値レシピだと分かれば、Shake Generator Manualで自分好みに調整するときの見通しも立てやすくなる。

5つのスタイルをまとめると、こうなる。

$$
\begin{array}{|l|l|l|}
\hline
\textbf{style} & \textbf{揺れの質感} & \textbf{向いている場面} \\
\hline
\text{tripod} & \text{ごく弱い、ほぼ固定} & \text{三脚に寄せたい静的なカット} \\
\hline
\text{handheld} & \text{自然な手持ち感} & \text{迷ったらまずこれ、汎用的な"生っぽさ"} \\
\hline
\text{walking} & \text{上下左右の周期的な揺れ} & \text{歩きながら撮った主観ショット} \\
\hline
\text{action} & \text{荒く大きい動き} & \text{アクションや緊迫感の演出} \\
\hline
\text{vibration} & \text{細かい機械的振動} & \text{車内や乗り物越しの映像} \\
\hline
\end{array}
$$

さらにVideo Stabilizer Motion Applyには、モーションブラーを足すオプションもある。パラメータ名はmotion_blurで、シャッターが開いている時間の割合を意味し、0で無効になる。ほんの少し足すだけで、映像がぐっとカメラらしくなるので侮れない。

▶ motion_blur = 0の場合を見る 動画7. ブラーなし。揺れてはいるが、映像自体はくっきりしたまま。出典: Comfyに使う ComfyUI

▶ motion_blur = 1.00の場合を見る 動画8. ブラーを最大にすると、動いた瞬間に自然な滲みが出る。出典: 同上

実務でどう使うか

ここまでの内容を、実際の判断に落とし込んでおきたい。

Wan2.2やLTX-2のようにカメラワークを指定できる動画生成モデルを使っていて、出力が"完璧すぎる"と感じるなら、まずhandheldをamount低めで試すのがいい。上げすぎると普通に酔う映像になるので、そこだけは注意したい。逆に実写素材の手ブレがひどくて見るに耐えないなら、Flowでframing_mode=crop_and_padから始め、画角の犠牲が気になったらexpandに切り替える、という順番が無難だろう。

すでに手ブレ補正した映像を動画生成AIで編集し直す予定があるなら、metaの保存を忘れないでほしい。あとからMotion Applyで元のカメラワークに戻せるかどうかは、このmetaを保持しているかどうかで決まる。

もう一つ、地味に刺さりそうな使い方がある。商品紹介やVlog風の動画をAIで一括生成すると、カット全部のカメラワークが均質になりがちだ。そこでカットごとにstyleやseedを変えてShake Generatorを通しておくと、まるで別のカメラマンが撮ったかのようなばらつきが出る。全カット同じ設定を使い回さない、というのがコツだ。

まとめ

「Video Stabilizer」は、もう手ブレを消すだけのツールではない。補正・復元・生成という3つの操作がmotion_metaという共通のデータ形式でつながっている設計は、ノードベースのComfyUIらしい発想だと感じる。

とくに今回加わったShake Generatorは、AI動画のクオリティを底上げする実用的な機能だ。書き出した映像が"なめらかすぎる"と感じたことがあるなら、一度触ってみる価値はある。ComfyUI Managerで検索すればすぐに導入できる。

参考資料・使用素材

  • 公式ドキュメント:ComfyUI Video Stabilizer|Comfyに使う ComfyUI

  • GitHubリポジトリ:nomadoor/ComfyUI-Video-Stabilizer(MIT License)

  • アップデート時期の確認:GitHub上のコミット履歴(2026年7月2日 PR #13 、7月3日 v1.3.0リリース準備コミット)

  • 本文中のワークフロー画像・デモ動画は、いずれも上記公式ドキュメントに掲載されている一次情報です。

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